巨匠と、デニムの履き方について思うこと。
何日か前にあげた「革靴とスニーカーの話」という文章に、名古屋のセレクトショップの方が「いいね」を下さったこともあり、そちらのお店様のnoteの記事を何本か拝見したのですが、今は後述のアークテリクスなど、高機能アウトドアウェアをミックス、または主体としてコーデを組み立てることを、今は「街テック」と呼ぶのですね。
数年前に、「アーバンアウトドア」と呼ばれていた概念の、現在地を指すものでしょうか。もしかしたら、お店様の造語かもしれませんが。
洋服は昔から好きなのですが、ちまたのカジュアルウェアにおける最先端の流行に詳しいかと言われれば、全くそんなことはないだけに、よりソリッドになっていく街テックに、「こういう若い子、いるよねー。いいよねー。」という、ちょっとした嬉しさ覚えました。
アウトドアブランドのウェアを街着に落とし込むこと自体は、それこそ自分が生まれる前からありましたが、先に述べた街テックと呼ばれるほどにハイテクなアウトドアギアを、カジュアルに融合させるようになったのは、90年代の前半、中頃くらいからではないかと思います。つまり、自分たち世代(と、その少し上。)。
当時で言うならチノパンや濃紺のデニム、レッドウィングのアイリッシュセッター、コンバースのチャックテイラーといった、100年は定番と呼べるものに、パタゴニアのスーパーアルパインジャケットやダスパーカーを合わせる、みたいな感じですね。
そんなコーデも、今の価値基準に照らせば、さすがに重たいというか、こってりとし過ぎだし、そんな人を見掛けることもありませんが、とはいえ今の最先端の街テックを40過ぎの自分がすると、それはそれでコスプレ感が拭えず、なのは、ちょっと寂しいところです。
服はピカピカでも、肌はシナシナですからネ。
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街テックではないですけど、外へ着ていく頻度では、おそらくアークテリクスのアルファSVが一番のはずです。冬場に自転車で出掛ける時は、ほぼ必ず着ています。
ゴアテックスプロを採用している、アークテリクスのハードシェルの、フラグシップモデルですね。
ちなみに私が↑で着ているのは2016年製のものですが、今のアルファSV、びっくりするほど高いですね。たぶん当時の倍ぐらいの価格になってるし、次は買えないかも知れません。
アークテリクス自体、あまりおっさんの着てるイメージがないし。
何にせよ、さすが街着ハイテクギアの王様です。
でも、聞くところによれば、アルファSVもカナダ製ではなくなっちゃったみたいですね。残念。
だいぶ、ボロボロになってきてしまいました。
本当、何度着ただろうか。あと何回、付き合ってくれるのだろうか。そんなことを考えては、寂しくなったりします。
まあ、修理してもらえるんですけどね。
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「ジーパンは、腰で履くものだよ。」と、我々や、我々の少し上の世代の人は、教わったのではないでしょうか。
ここでいう腰は、ウエストではなくて、腰骨ですね。
ウエストまでぴっちり上げて履くのは「ギュン履き」というみたいですね。
「ギュン履き」という言葉のセンスにやられてしまいましたが、「ギュン履き」という言葉自体は相当昔からあるみたいですね。知らなかった。
語感が素敵過ぎるやろ、「ギュン履き」。
70年代のパンクスや、80年代のアメリカ人ハードロッカー(マレットっぽい髪型にバンダナ、そして革ジャンみたいなコテコテの人たち)は、細身のデニムを「ギュン履き」してる。日本でも、ケミカルウォッシュとか履いてた、ちょっとアレな時期には、「ギュン履き」のムーブメントが来ていましたね。
ただまあ、日本では「ギュン履き」は定着しませんでした。単純に、足が短くて似合わなかったのだろうと想像します。
ビンテージやレプリカを通った世代であれば、ある程度サイズを上げて腰で履く、というのが、ある種ジャパニーズ・デニムスタイルの正調でしょう。
他方で、ドゥニームを立ち上げ、現在はリゾルトを率いる日本デニムの巨匠・林芳亨さんは、ギュン履き、細身、ほぼくるぶしというくらいの短丈というデニムの「林履き」を一部界隈に定着させました。
「林履き」自体は、私はやろうとも思わないですが(絶対に似合わないから。)、デニムにオールデンやパラブーツ、ウェストン、トップスにはインディビのシャツにスメドレー等の色鮮やかで品の良いニットを持ってくるという「林コーデ」は実に素敵です。
「日本人の大人、カジュアル過ぎる問題」については時々自分も考えることがあって、私の場合は、40歳を目処にちょっとスニーカーから距離を置こうか、と考えましたが、結局また戻ってきてしまいました。
私自身、まだ枯れ方が足りないのか、品の良いニットを革靴で締めると「気張り」が出ちゃいます。それは私には少し気っ恥ずかしくて、どこか力感を抜こうとすると、スニーカーに手が伸びてしまうのです。
まぁ年齢的にはそう遠くもないのですが、こんな渋みのあるおじいちゃんになりたいですねぇ。
なお、そもそも林さんとはどちらさん?リゾルトってなに?というビギナーの方には、これが一番理解が捗るインタビューかと。
御本人のお写真を見ると、10年くらいは経っていそうですが、林さんの理念とか情熱みたいなものが一番伝わると思います。
ちなみにリゾルト10周年記念の711ホワイトは、そんな林さんの情熱をガン無視して、36レングスのものをずいぶん丈詰めしましたが、とても良い感じです。
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