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未来の建設業を考える:建設論評「建設業のマスカスタマイゼーション」(2018年11月14日)

「ゾゾスーツ」・「スピードファクトリー」

 ファッション通販で有名なZOZOTOWN。「ゾゾスーツ」と言うドットマーカーが添付された全身スーツをスマートフォンで計測するだけで、その人にあったカスタムメイドの服・背広ができる。服はひとりひとりにあったものであるべし、との原点を感じる。
 また、アディダスは、「スピードファクトリー」と称して、3Dプリンターと組み合わせて、ひとりひとりにあったスポーツシューズを低廉な価格で提供するシステムを構築している。

製造業:マスモデルからカスタムメイドへ

 製造業といえば、大量の原材料を安く手に入れ、同じ製品を大量に作り、顧客に大量に売ることで利益を得る、まさに規模の経済が働くことがモデルになっていた。いかに世界中で同じ品質のものを、一定の価格で提供していくかが、製造業におけるモノづくりの成功であったはず。
 ひとりひとりに合致した製品づくりは、一部の高級品でしかあり得なかった。そんな製造業がひとりひとりの顧客に合致したカスタムメイドの製品を提供するという、画期的なシステムを構築できたのは、昨今のIT、AIの進化によるところが大きい。

マスカスタマイゼーション

 考えてみれば、日頃使っているアマゾンや楽天などのネットショッピングも、購買行動から個別の特性を把握し、カスタマイズした商品紹介や広告を流すことで、マスカスタマイゼーションを取り入れている典型的な事例だ。
 桐生市のアパレルメーカーの「クレル」は、「お客様一人一人の心と身体にフィットした衣服を提案し、服を着ることの喜びと幸せを提供します」を社是に、桐生市内の織物工場や縫製工場、生地倉庫などをクラウド・コンピューティングで結び、地場の小規模向上をバーチャルにつなぎ合わせることで、1着からのカスタムオーダーに対応するシステムを構築している。まさにIoTとAIでマスカスタマイゼーションに成功した事例であろう。第4次産業革命への息吹を感じる。

建設業もマスカスタマイゼーションの時代に

 視点を変えれば、このアパレルメーカーの成功モデルは、建設業へも応用可能だと思う。
 もともと建設業は製造業と異なり一品生産であることに特徴があり、ロボット化やシステム化が難しいと言われていた。しかし、製造業が顧客ひとりひとりに応じた製品を生産するマスカスタマイゼーションへと移行する中で、建設業も変わる必要がある。
 建設業も大多数の業者が地方で活動する中、クレルの事例に学び、材料メーカー、専門工事業者、大工さん、職人など、それぞれの業種をネットワークで結ぶことで、より専門性の高いサービスを提供することができるはず。 
 あるいは、作業工程の調整なども、ネットワーク上で、よりタイムリーに行うことで、プロジェクト参加者の手待ちやムダが少なくなるはず。
 これまでもいくつかのチャレンジはなされてきたが、ここまでネットワーク社会が進んできた今だからこそ、地場建設業者や工務店を中心とした「建設業地域ネットワーク」を構築することが必要ではないか。
 AIやIoTが製造業に一品生産、マスカスタマイゼーションといった新しい革新をもたらしたように、建設業も顧客のニーズに応えるような次世代の産業構造の構築が今まさに求められている。

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