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未来の建設業を考える:建設論評「デジタル時代の「人」の役割」(2022年3月4日)

人はいらなくなるとの予測

 コロナでリモート会議が普及し、テレワークやワーケーションなど、会社に行かなくても仕事ができる環境が急速に整った。当然ながら、ヤフーや富士通といったIT企業を中心に、会社という「箱」、「ビル」である実物不動産の利用を減らす企業も出てきた。さらに、ITやAIの活用、事務作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)なども普及し、コンピューターが多くの仕事をするようになり、人はいらなくなるとの予測も多い。

映画「マトリックス」

 しかし、本当だろうか?
 映画「マトリックス」をご存知だろうか。そこでは、「近未来の設定で、自分が暮らしていた世界が、実はコンピューターが作り出した仮想現実の世界と知った主人公「ネオ」が、コンピューターが支配する世界から人類を救うために、バーチャル世界とリアル世界を行き来して、戦うという映画だ。」まさに、ITが進み過ぎた結果、人はいらなくなり、コンピューターが人類を支配するようになった世界だ。そこでは、人と人の関わりは、すべてバーチャルな世界だ。

本来のデジタル活用

 本来、デジタル活用は、デジタルに使われるのではなく、あくまで現在の課題を効率的に解決する「ツール」であるはず。だれもが使えて、すぐに修正しながら人が利用しやすいようにするものだ。
 オードリー・タン(台湾デジタル担当大臣)氏も、デジタル化により専門家を作るのではなく、若者も高齢者も、あらゆる人が使えるデジタル化が、本当のデジタル化であること、政府と国民の信頼関係があったからこそ、ITツールが有効活用できた、と指摘している。
 ところが、ITだけ入れて、魂が入っていないのが、今の日本ではないだろうか。

リアルタイム・コミュニケーション

 3回目のコロナワクチン接種でも、接種券がないので「予約できない」事例が多発した。最初から「マイナンバー」で対応すれば、わざわざ紙で配布する必要もないし、手間もかからないはず。マイナンバーの活用にもつながったはず。国民の側に立った要望に沿ったIT活用ができていない。
 さらに、ITだけでは解決できないことを、本来、コールセンターやビデオ会議といった「リアルタイム・コミュニケーション」で、高齢者も含めたあらゆる人を助ける仕組みが必要だが、これも電話がまったくつながらないなど、人のコミュニケーションを軽視した結果だ。
 こうなると、日本も「マトリックス」化する日も近いのかもしれない。
 ITは、本来ICT(Information Communication Technology:情報通信技術)だ。IT+Cの「C」が重要で、コミュニケーションが加わって初めて、本来のIT活用になるはず。

人と人のコミュニケーション

 まさに、人と人のコミュニケーションが、デジタル社会だからこそ、必要不可欠だ。
 リアルな現場を持つ建設業は、情報だけではモノができない。人と情報を結びつけることで、モノができ、構造物が完成する。まさに、人間が働くリアルな現場をデジタルで効率的にしながらも、技術と魂を入れた、ホンモノの施設をみんなで作ろうではないか。

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