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事業フェーズの特徴とデジタルプロダクトデザイナー

最近デジタルプロダクト領域のデザイナーのスキル習得やキャリアについて相談を受けることが多くなったので、デジタル領域のプロダクトデザイナーとして15年、私自身の今までのキャリアで得たスキルや経験を元に、デザイナーのキャリアについて、事業の立ち上げ期と成長期で求められるスキル・スタンスや得られる経験をテーマに持論を書きたいと思います。

UIデザイナーやデジタルプロダクトの企画職のキャリア検討のヒントになったら幸いです。

これまでのキャリア

簡単に私の経歴について触れておくと以下です。

  • 1社目:インダストリアルデザイン事務所、従業員5人程度、受託のGUIデザイナー

  • 2社目:SIer、従業員200人前後、受託のUIデザイナー

  • 3社目:金融系スタートアップ、私の在籍期間では従業員20〜80人程度まで成長、toCサービスのプロダクトデザイナー、その後プロダクトマネージャー

  • 4社目:メディア系事業会社、従業員1万人以上、toBサービスのデザインディレクター(副業で事業立ち上げ期のスタートアップにも関わっています)

15年間UIやサービス設計に携わっていますが、企業規模や事業タイプ、フェーズがそれぞれ違う4社を経験してきました。

事業フェーズの特徴とデジタルプロダクトデザイナー

表題のテーマを軸に私の経験を振り返ると、2社目と3社目が立ち上げ期、1社目と4社目が成長期の事業に携わり、それぞれの事業フェーズで受託会社、事業会社両方の経験があります。

立ち上げ期の事業とデザイナー

立ち上げ期の事業・サービスでは、定性データやフレームワークが事業の中核の意思決定を得るのに重要になります。

特に市場の要求事項を炙り出す、ユーザ調査の設計・実施・分析や、要求事項をプロダクトの機能に転換する際のユーザ体験や情報の構造化スキルを持ったデザイナーは、抽象を具体化し、実施に移し検証を回すまでを推進できるため重宝されます。

また、このフェーズでは市場や顧客など外からの要求をプロダクトに転換するデザイナーだけでなく、内にある創り手としての想いを言語・視覚化し、事業認識を深め、プロダクトやマーケティング活動に転換するデザイナーの必要性も高い印象です。

総じて組織もプロダクトも土台造りのフェーズであり、各職種がそれぞれのKPIに具体的に取り組めるほど噛み砕けていない事象が多いため、不確かさを伴いつつもプロダクト創りの土台形成・要求と要件を構造化できるデザイナーは活躍できると思います。

  • スキルやスタンスは横の広がりが求められる

  • 要求調査・分析や体験設計など定性データを取りまとめ、未来を描く力があると活躍しやすい

  • 事業創りの根幹(事業思想や方針)に関われる

成長期の事業とデザイナー

成長期の事業・サービスでは各職種での役割分掌が進み、プロダクト創りの構造化も進んでいるため、全体方針の下、各領域で追うKPI向上・定量結果を得る活動が主になり、デザイナーの守備範囲も具体的な施策を実行する役割が多くなります。

デザイナーとしては意思決定と専門性に距離ができる分、いかにビジネス職との関係性を築けるか、協働の仕方や議論の際の突破力が求められると思います。

また、デザイナーの中でも役割分掌が進み、他職種とデザインチームを接続するディレクターや、チームや組織を管理するリーダーやマネージャーなど、手を動かすデザイナーから他の役割へのキャリアチェンジの選択肢も増える印象です。

成長期の事業ではデザイナーとは言え定量結果へのコミットが立ち上げ期以上に求められる分、定性データだけでなく定量データの収集・分析スキル、ABテストなど検証設計が出来るデザイナーは重宝されると思います。

  • スキルやスタンスは縦の掘り下げが求められる

  • 定量データの抽出・分析、施策化を推進できる力があると活躍しやすい

  • ディレクターやマネージャーなどデザイナーからのキャリアパスの選択肢が豊富

まとめ

立ち上げ期の方が定性データを手掛かりに未来を想像することが求められ、大局観でプロダクトをリードする役割をデザイナー自身が担いやすい印象です。

一方で事業方針が個別のKPIに分解された成長期は、定量データを用いた意思決定や具体施策のPDCAを数多く回すため、よりビジネスに近いプロダクトマネージャーやマーケターなどの職種がプロダクトをリードしてデザイナーは施策の実行側を担うことが求められる印象です。

デザイナーのキャリアパスとしては、立ち上げ期の方が幅広いスキルセットや経験を積むことが出来ると思いますが、どんな事業も立ち上げ期がずっと続く訳では無いので、事業の成長と共に定量データの抽出・分析スキルや開発の知見も蓄え、プロダクトマネージャーやディレクター職へのキャリアチェンジも視野に入れると可能性が広がると思います。

また、立ち上げ期を経験したいデザイナーは、スタートアップなどの事業会社だけでなく、発注元の事業方針から携われる受託会社に所属するのも良い選択だと思います。

一方で、成長期は役割分掌が細分化され人数も多くなる分、マネージャー職も専任で必要になり、管理職にキャリアを進めたい人には専門性や経験を身に付ける機会が豊富にあると思います。

たまに立ち上げ期の方が管理職のポジションを得やすいと言う理由でスタートアップへの転職を考える方にお会いしますが、管理職の専門性は成長期の事業の方が、管理対象が増えることと責任が明確になることで圧倒的に得られると思います。

最後に

以上、私自身のキャリアで得たスキルや経験を振り返りつつ、デジタルプロダクトデザイナーのキャリアについての考察を述べました。

それぞれの事業フェーズによって求められるもの、得られるものは違うものの、立ち上げ期の経験が成長期で活かされたり、逆に成長期の経験が立ち上げ期で活かされることもあると思います。

立ち上げ期に抽象度が高く、広い領域に携わった経験は、デザイン部署の価値を高めていきたい成長期の組織で重宝されたり、逆に、成長期にチームを率いた経験は、立ち上げ期の人数が少なく、役割分担も曖昧なデザイナーの啓蒙活動やチーム作りを推進できる人材として重宝されます。

立ち上げ期も成長期もフェーズが違うだけで繋がっているので、その時々で得たい経験や価値の発揮領域を見極め、長い目で見てどちらも経験することで、スキルやマインドの柔軟性が増し、市場価値が上がると思います。

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