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科学的根拠について~エビデンスピラミッドを知っていますか?~~腸活ラボマガジンVol.5~

こんにちは、やまだです。昨今、色々な人が健康や美容について発信をされています。その際に大切なのはどれくらいその情報に確度があるかです。
今回は、その根拠について解説します。
主に医学や公衆衛生の分野では、エビデンスとよばれる科学的根拠があることが非常に大切になってきます。そして、そのエビデンスも特定の研究をさす場合もあれば、複数の研究をまとめたものをさす場合もあり、それぞれによって、エビデンスの強弱が違ってきます。
そこで、今回は、そのエビデンスの強弱を示す「エビデンスのピラミッド」について解説します。

図1 エビデンスのピラミッド

まず、基本になるのは、査読付きの学術雑誌に掲載された研究です。査読というのは、同じ分野の複数の研究者がこの研究がその雑誌に掲載するに値するかどうかの意見をのべて、何が足りていないかなどを改善する作業をさします。通常、雑誌の編集者が複数の教授に依頼して、ボランティアで引き受けた教授がその論文に対して、追加の実験が必要、書き方の修正が必要などのコメントを返します。それに対して筆者は丁寧に追加実験をしたり、表現を改めたりします。この繰り返しをして、最終的に査読者の教授たちからOKが出たら、ようやくその研究は雑誌に掲載されます。この研究者同士が査読を受け持つシステムをピアレビューシステムと呼びます。また、査読においては、研究のデザインや倫理的な観点など様々な点が見られます。
また、学術雑誌にもピンキリあり、研究のレベルも様々です。例えば、生命科学系で有名な三大雑誌、Nature, Cell, Scienceがあります。これらに載る研究は、とてもレベルが高くインパクトのある研究です。採択率は5%前後(100本の論文のうち5本しか載らない)と非常に狭き門です。少年誌でいうと、ジャンプ、マガジン、サンデーみたいなものです。それぞれの専門誌に対して、姉妹紙というものもあり、Nature Medicine, Cell metabolism, Science Immunologyなど様々な分野に特化したものがあります。これはヤンジャン、ヤンマガ、裏サンデーみたいな感じでしょうか。
そして、最近では、ハゲタカジャーナルというものが問題になっています。これは、査読システムがほぼ機能しておらず、お金さえ払えばその雑誌に掲載されてしまうようなものです。お金儲けのためだけに存在しているので、信頼で成り立っている学術研究に対して非常に危険な存在です。
話がそれましたが、根幹となる学術雑誌は、非常に多種多様にあり、そのレベルも様々です。そして、その質は、研究者たちの相互の査読システムであるピアレビューによって成り立っているということは覚えておいてください。
次は、各エビデンスレベルの概要を見ていきましょう。

専門家の意見・動物実験は、一番下

専門家の意見には、権威や政府・特定の機関の見解なども含まれます。一見、信頼に足りそうですが、「意見」である以上、エビデンスレベルはとても弱いです。同様にヒトでの実験ではない、動物実験もエビデンスレベルは低くなります。一方で、薬づくりなどでは動物実験のデータをもとにヒトでの実証をしていくこともありますのでこれらの情報も大切ではあります。

情報が限定している場合に役立つ事例報告

一つ上にあるのは、事例報告です。これは、少人数の事例の報告です。患者数の少ない希少疾患やデータが集めにくい疾患、初期の段階の感染症などにおいては、こういった事例報告が役立ちます。

事例を集めて量にして比較する調査データの分析

もう一つ上にあるのが、調査データの分析です。事例報告はデータが限られているのでそこから何かをいうのは難しいです。そこでデータを増やして問題を解決するのが調査でデータの分析です。実験の事前事後、異なるグループでの比較などがあります。しかし、ここで問題があります。異なるグループ間で比較した場合でも、もともとの参加者の偏りが否定できないことです。例えば、ある運動法の効果を調べるとして、①日ごろから健康に気を付けているグループと②全く気を付けていないグループに試してもらって、①のグループに効果があった場合、その運動法による差なのか、もともとグループに健康的な生活をしている人が多かったからかどうかわからないということです。

グループ間の違いによる差を解決するランダム化比較実験

グループ間での差をなくすためにどうすればいいか。これを解決するのがランダム化比較実験です。例えば、ある薬の効果を見るために、研究の参加者をランダムにグループ分けします。例えば、コインを投げて表が出た人は、新しい薬を飲むグループ、裏がでた人は、今市場で一番いい薬を飲むグループというような感じです。これでグループは、無作為に2つに分かれますし、もし偏りがでても、どれくらいで偏るか統計的に推定できます。
これが上から二番目にエビデンスレベルが高い方法です。

最もエビデンスレベルが高い系統的レビュー・メタアナリシス

これは、複数のランダム化比較実験を統合したものです。アナリシスに対するアナリシスなので、高次のという意味がついたメタアナリシスと呼ばれます。また、特定の基準を満たす研究を抽出し、これらの論文の傾向を開設した系統的レビューがあります。分野の傾向をつかめるので最もエビデンスレベルが高いといえます。
また、系統的レビューでは再現性が大切で、検索条件などの詳細な解説、検索した条件を可能な限り網羅することが必要です。

以上でエビデンスのピラミッドの解説を終わります。
色々な情報が飛び交う情報化社会ですが、その情報のエビデンスはどこなの?そしてその強さは?という疑問を常に抱いていただければと思います。
参考になればスキお願いします!

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