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本屋さんをめぐる断章

1月14日(月)

最寄り駅に併設された商業施設内の書店を訪れる。

小説コーナーの近くにあるエッセイやノンフィクションを並べたコーナーにいると、高校生と思しき数人組の男性がワイワイ言いながらやってきた。聞くともなしに聞いていると、1冊の漫画本を皆でお金を出し合って買う相談をしているようで、「俺、100円しか持っていないよ!」などという声が聞こえてくる。

そんな中、そのうちの1人がすぐ横にある小説コーナーに陳列されていた1冊の単行本を手に取った。表紙をじっと眺め、パラパラとめくるその姿は、本好きそのもの。
「本が売れない」という嘆きが様々な形で耳に入ってきてしまう日々だが、若い世代にも、きちんと本を手に取る方はいる。それを身をもって知ることができて、少し嬉しくなったのである。

1月22日(火)

国分寺駅で黒田龍之助先生と待ち合わせをし、こもれびへとご案内する最中のこと。再開発が進む駅前を歩きながら、「このあたりもすっかり変わってしまったんですよ」というテンプレートのようなセリフを思わず口にしてしまう。

「ここも、以前は本屋さんだったのですが、久しぶりに訪れたらご覧の通りドラッグストアになっていました」と、1軒の店舗を指し示す私。
先生は「ああ、やはりどうしてもそうなってしまうんですね」と呟かれた後、「ところで、どこの本屋が入っていたか、覚えていらっしゃいますか?」とお尋ねになった。

その時私は、とっさに答えることができず、「ええと、チェーン店ではなくて、地元の書店だったと記憶しています」と曖昧なことしか言えなった。国分寺を離れてから7年ほど経っているし、その書店に足を運ぶ機会もあまりなかったから…などと理由をあげつらおうと思えばいくらでもできるのだが、そんなことは言い訳にしかならない。

「再開発で街の様子が変わり、本屋もなくなった」という、通り一遍の言葉を軽々しく発したことをやんわりと諌められているような気がして、とても恥ずかしくなった。軽々しい言葉には、軽々しい気持ちしか乗らない。

家に帰ってから思い出そうとしても、

・店名の始めに「三」が付くこと
・国分寺以外では見たことがない店であること

ということしか思い出せず。そのビルの住所を調べてそこから検索してみると、「三成堂」さん(「三省堂」ではない)であったことが判明した。そしてどうやら、八王子にもう1店舗があることも。

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