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『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』:1966、イタリア&スペイン&西ドイツ

 お尋ね者のトゥーコは賞金稼ぎたちに命を狙われるが、馬で逃亡した。悪玉のエンジェル・アイズは、食事中の男を訪ねた。エンジェル・アイズは黙って向かいに座り、男を凝視しながら食事を始める。
 男は「知ってることはベイカーに話した。金貨のことはホントに何も知らない。知ってるのは北軍の誰かがネタババしたことだけだ。帰ってベイカーにそう言いな」と釈明した。

 エンジェル・アイズは「ジャクソンが来たらしいな。奴は今、どういう名前を使ってる?」と問い掛ける。脅しを受けた男は、「ビル・カーソンだ」と白状した。男は有り金の千ドルで見逃すよう頼むが、エンジェル・アイズは「受けた仕事はやりぬくのが俺の主義だ」と言って射殺し、やって来た男の息子も始末して不敵に笑った。
 ブロンディーはトゥーコを捕まえ、保安官に突き出して賞金を受け取る。しかしトゥーコが絞首刑にされる瞬間、ブロンディーは離れた場所から首吊りロープを撃ち抜いた。

 トゥーコは乗せられた馬で逃亡し、ブロンディーと合流した。2人はグルになって賞金詐欺を繰り返しているのだ。彼らは賞金を山分けにした。トゥーコは笑いながら、「こっちは命懸けだ、今度からは半分以上よこしな」と言う。
 するとブロンディーは軽い口調で、「ロープを切るのは俺だ。分け前が減ったら狙いが外れるかもしれんぞ」と言い返す。トゥーコは「俺を裏切ったような奴は、二度とおてんと様を拝めなくなるんだ」と、やはり笑みを浮かべながら告げた。

 また賞金詐欺を働いた2人だが、ブロンディーの狙撃が外れたため、馬だけが逃げ出してしまう。トゥーコは走って逃亡し、ブロンディーに文句を言う。ブロンディーはトゥーコとのコンビを解消し、砂漠に置き去りにして立ち去った。
 トゥーコは手下を雇い、ブロンディーが泊まる宿に現れた。手下3人組が部屋に乗り込むが、ブロンディーに射殺された。窓から乗り込んだトゥーコは銃を構え、ブロンディーを部屋で首吊りさせようとする。しかし南軍の大砲攻撃で部屋が破壊され、その間にブロンディーは逃亡した。

 カーソンの絞首刑が執行されようとしている様子を、ブロンディーは物陰から銃を構えて狙っていた。トゥーコが現れて銃を突き付け、ブロンディーに砂漠を歩かせた。ブロンディーが倒れたところで、トゥーコは射殺しようとする。
 その時、向こうから御者のいない馬車が暴走してきた。トゥーコが馬車を止めると、複数の南軍兵士の死体が乗っていた。トゥーコは死体を漁って金目の物を盗んだ。

 死体の中には、まだ瀕死の状態で生き延びている男がいた。それはビル・カーソンだった。カーソンはトゥーコに、「金貨で20万ドルをお前にやる。第三騎兵隊のベイカーは何も知らない。俺がサッドヒルの墓地に隠した」と言う。
 トゥーコは墓碑銘を聞き出そうとするが、カーソンが水を求めるので取りに行く。その間にブロンディーが墓碑名を聞き出し。トゥーコが戻るとビルは死んでいた。トゥーコは金を手に入れるため、瀕死のブロンディーを助けて再びコンビを組むことにした。

 トゥーコはビルの着ていた南軍の軍服と眼帯を着用し、ブロンディーにも南軍の軍服を着せた。トゥーコはブロンディーを、神父である兄ペドロの病院に担ぎ込んだ。
 回復したブロンディーとトゥーコは、南軍の馬車で出発した。だが、北軍に捕まってしまい、捕虜収容所に送られる。そこには軍曹として、エンジェル・アイズが紛れ込んでいた。手下のウォラスが捕虜を呼ぶ中、ビル・カーソンという名前にエンジェル・アイズは反応する。トゥーコはカーソンの服を着ていたため、その名前で呼ばれたのだ。

 エンジェル・アイズはトゥーコを部屋に呼び、ウォラスに拷問させて金貨のありかを聞き出そうとする。目を潰されそうになったトゥーコは、サッドヒルの墓地に埋められていること、墓碑銘はブロンディーが知っていることを教える。
 エンジェル・アイはブロンディーと6名の手下を連れて、金貨探しに出発する。トゥーコは列車で別の収容所へ移送されるが、ウォラスを撲殺して脱走した。

 トゥーコは汽車に飛び乗り、エンジェル・アイズたちが休息している焼け落ちた町に辿り着いた。ブロンディーはトゥーコが来たことに気付き、「風呂でも探してくる」と言ってエンジェル・アイズたちと離れる。エンジェル・アイズは手下に尾行させるが、それを察知したブロンディーが射殺した。
 ブロンディーはトゥーコの元に現れた。まだ彼が墓碑銘を話していないと知ると、トゥーコは嬉しそうに「持つべきものは心の友よ。奴を殺してくるから、待ってろ」と言う。ブロンディーは「相手は5人だぞ」と教えた。

 ブロンディーとトゥーコは、エンジェル・アイズの手下を全て撃ち殺した。だが、エンジェル・アイズは「すぐ会おう、マヌケ」というメモを残して逃亡していた。ブロンディーとトゥーコは、南北両軍が橋を挟んで戦っている現場の近くにやって来た。
 トゥーコは北軍に捕まると、とっさに志願兵を装った。トゥーコは戦況を見ながら、「金は川の向こうにある。だけど南軍がいる限り、橋は渡れない」と漏らす。するとブロンディーは「どうかな。誰かが橋を吹っ飛ばしたら?」と口にした。

 橋が無くなれば、どちらの軍も別の場所に移動する。ブロンディーとトゥーコは橋にダイナマイトを仕掛け、爆破することにした。爆破の準備をしながら、トゥーコは「ここで互いに秘密を言い合おう」と提案した。
 ブロンディーは、トゥーコが先に墓地の場所を明かすよう要求した。トゥーコがサッドヒルだと口にすると、ブロンディーは「墓碑銘はアーチ・スタントンだ」と告げた。

 2人は橋を爆破し、両軍が去った後で川を渡った。南軍側の陣地には、幾つもの死体が転がっていた。トゥーコは隙を突いて、馬で1人だけ墓地へ行こうとする。ブロンディーは大砲の導火線に火を付け、トゥーコを狙った。
 爆風で落馬したトゥーコは、何とか墓地に到着した。アーチ・スタントンの墓石を発見したトゥーコが素手で掘っていると、ブロンディーが現れてシャベルを渡し、それで掘るよう要求する。そこへ銃を構えたエンジェル・アイズが現れ、ブロンディーにも掘るよう要求した…。

 監督はセルジオ・レオーネ、原案はルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ&セルジオ・レオーネ、脚本はアジェ(アジェノーレ・インクロッチ)&スカルペッリ(フリオ・スカルペッリ)&ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ&セルジオ・レオーネ、製作はアルベルト・グリマルディー、撮影はトニーノ・デリ・コリ、編集はニノ・バラグリ&ユージニオ・アラビソ、装置&衣装はカルロ・シミ、音楽はエンニオ・モリコーネ。

 主演はクリント・イーストウッド、共演はリー・ヴァン・クリーフ、イーライ・ウォラック、マリオ・ブレガ、アルド・ジュッフレ、ルイジ・ピスティッリ、ラダ・ラシモフ、エンツォ・ペティート、クラウディオ・スカルチッリ、ジョン・バルソ、リヴィオ・ロレンゾン、アントニオ・カサール、サンドロ・スカルチッリ、ベニト・ステファネッリ、アンジェロ・サンブレル、アル・ムロック、セルジオ・メンディザバル、モリーノ・ロホ、ロレンツォ・ロブレド他。

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 『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』に続くセルジオ・レオーネ監督の「the Dollars Trilogy」3部作の第3作。ただし、話の繋がりは全く無い。ブロンディーをクリント・イーストウッド、エンジェル・アイズをリー・ヴァン・クリーフ、トゥーコをイーライ・ウォラック、ウォラスをマリオ・ブレガ、アル中の北軍隊長をアルド・ジュッフレが演じている。
 ビデオ化される際、サブタイトルが外れて『続・夕陽のガンマン』という邦題に変更されている。なお、劇中に夕陽は出て来ない。

 3部作の主役は全てクリント・イーストウッドだが、同一人物かどうかは明確にされていない。ちなみに本作品の主人公はブロンディーと呼ばれているが、それはトゥーコが付けた呼び名である。3作品とも、主人公は名無しの設定となっている。
 今作の終盤でブロンディーが着用するポンチョは前2作でも主人公が使用した物であり、時系列では3部作の最初に当たると解釈する評論家もいる。

 原題は日本語に訳すと「善玉、悪玉、卑劣漢」という意味になる。善玉がブロンディー、悪玉がエンジェル・アイズ、卑劣漢がトゥーコという役割分担だ。
 序盤、トゥーコ、エンジェル・アイズ、ブロンディーが順番に登場し、その紹介シーンのラストに「卑劣漢」「悪玉」「善玉」というスーパーインポーズが出る。まあ「ブロンディーのどこが善玉だよ」というツッコミは、当然出て来るだろう。

 時代は1862年、南北戦争中のニューメキシコが舞台となっている。そして、南北戦争という要素が、かなり表に強く押し出されている。橋を爆破した後、ブロンディーが瀕死の兵士に歩み寄り、葉巻をくわえさせてやろうとするシーンがあったりする。
 だけど、そういう戦争の悲劇性みたいなものは、この映画に必要な要素だとは思えない。反戦メッセージ的なモノを入れたかったのかもしれないが、ちょっと欲張りすぎているんじゃないかな。あと、橋を爆破したのに、どうやってブロンディーたちは向こう岸に渡ったんだろう。

 まず冒頭、口笛や砲声の入る有名なテーマ曲で気分が高揚するが、これは、たぶん曲が素晴らしいということもあるんだろうが、それより刷り込みによるところが大きいのだと思われる。
 そして映画が始まるが、10分間は全くセリフが無い。その後も、トゥーコは饒舌に喋るが、ブロンディーとエンジェル・アイズの口数は少ない。たとえばエンジェル・アイズが男の元に現れても、いきなり尋問するわけではなく、無言のまま凝視して食事を口に運ぶだけ。まず男の方に喋らせる。

 ブロンディーとエンジェル・アイズが寡黙ということもあって、トゥーコが物語を牽引している。一度はブロンディーを砂漠で殺そうとするが、墓碑銘を聞いた彼が死にそうになると慌てて「親友じゃねえか。死ぬなよ」と声を掛ける。
 トゥーコは卑劣漢と言うより、小悪党といった様相だ。ビビビのネズミ男の強化版みたいな感じかな。向こうから来るのが南軍だと思い込んで「南軍、万歳」と叫んでいたら、埃で青い服が汚れていただけで実は北軍だったというマヌケなところもあり、憎めない卑劣漢になっている。出番としてもブロンディーよりトゥーコの方が多いし、トゥーコを動かすことで物語を転がしている。

 セルジオ・レオーネ監督はクローズ・アップ、特に登場人物の顔のアップを多用している。日本だと、テレビ畑の人が映画界に進出した際、クローズアップを多用して、映画そのものがテレビサイズになってしまうという傾向が見られる。しかしレオーネのクローズ・アップは、映画的手法として効果的に作用している。
 それは、クローズだけでなく、場面に応じてロング・ショットも使い分けており、その対比によって映像的な面白さを生み出しているからだ。

 ブロンディーの宿にトゥーコが現れると、手下3人が静かに廊下を歩く様子、拳銃を組み立てているブロンディー、町を行進している北軍がカットバックで描かれる。そしてブロンディーの顔のクローズアップを挟みながら、緊迫感を盛り上げ、手下たちが慎重にドアを開ける。
 直前に弾丸の装填を終えたブロンディーが、素早く3人を狙撃する。まさに演出の手本のようなシーンである。

 北軍の収容所でエンジェル・アイズが軍曹として登場するのは、かなり唐突で強引だ。そのエンジェル・アイズはトゥーコを部屋に呼び、最初は飯を食わせて穏やかに振る舞っていたが、やがてウォレスに暴行させる。
 この時、外では隊長が捕虜たちに静かな曲の演奏&歌唱をやらせており、室内の拷問とカットバックで描かれる。演奏者は、その間に室内で拷問が行われていることを知っている。だから悲しげな表情を浮かべている。

 焼け落ちた町でブロンディーと合流した後、トゥーコは1人で銃を構え、エンジェル・アイズたちの元へ向かおうとする。人の気配にビクッとなって銃を向けると、ブロンディーが眺めている。彼は軽い口調で「一人で死ぬ気か?」と声を掛け、顎をしゃくって一緒に行く。ここに曲が流れてくる。カッコいいねえ。
 こういうカッコ付けたシーンが目白押し。お互いに命を奪おうとまでしたぐらいなのに、それでも阿吽の呼吸のコンビネーションを発揮するという、この2人の関係は魅力的だ。

 終盤、アーチ・スタントンの墓を掘り起こしても、そこに金貨は無い。ブロンディーがトゥーコを騙していたのだ。彼は「ここに墓碑銘を書く」と石を見せ、エンジェル・アイズたちから距離を取って、それを地面に置く。そして、3人での決闘を持ち掛ける。
 彼が石を置いてから発砲までに、5分ぐらいを費やしている。まずエンジェル・アイズとトゥーコが距離を取り、戦う相手を目で確認する。ここで三角形が作られ、それをロング・ショットで見せる。

 そこから、3人の拳銃と顔のクローズアップが何度も重ねられ、ついにエンジェル・アイズ、続いてトゥーコが拳銃を抜く。だが、先に発砲するのはブロンディーだ。そして彼は、エンジェル・アイズを撃つ。事前にトゥーコの銃からは弾丸を抜いておいたのでそっちを撃つ必要は無いからだ。
 このクライマックス、溜めすぎじゃないかと思うぐらい溜めてから、発砲で一気に放出するという演出の盛り上げ方も素晴らしい。そして、撃たれて死んだエンジェル・アイズが墓穴に滑り落ちるという計算も見事。ラスト、トゥーコに首吊りを強要しておいて、離れた場所からブロンディーがロープを撃ち抜くというのもニヤリとさせる。

(観賞日:2011年3月14日)

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