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#137 透明な紙

 展示会で面白いものに出会いました。「透明な紙」です。
大阪大学の能木雅也研究室のブースで紹介していました。

実際の紙を見せてもらったのですが、見た目は透明な薄いシートで言われなければ「紙」とは思えないものでした。


これを見たときに、そもそも「紙」とは何なのか、という疑問が頭の中に浮かんできました。
日本工業規格(JIS)によると、紙とは「植物その他の繊維を膠着させて製造したもの」とのこと。

この「透明な紙」は、セルロースナノファイバーと呼ばれる全ての植物に含まれる天然の細かい繊維でできています。
天然の繊維であるナノファイバーを漉きあげ乾かしてできたものなので、工業規格の定義によると、「透明な紙」は立派な紙です。


「透明な紙」が登場することで、どんな変化があるのでしょうか。

・本の紙に「透明な紙」を使ってみると…
裏の文字が見えて読みにくそうです。
・ノートの紙に「透明な紙」を使ってみると…
これも裏の文字が見えて読みにくそうです。
・名刺の紙に「透明な紙」を使ってみると…
インパクトがありいいかもしれません。しかも、環境にも優しいので好感度アップを狙えるかもしれません。

ただ、「透明な紙」は表面がツルツルしていて鉛筆では文字が書けず、サインペン等を使う必要があるようです。「白い紙⇒透明な紙」という構造の変化はあまりなさそうです。


次に「透明な紙」には、水を吸収して膨らむものから水を弾くものまで様々な特徴があるようです。その特徴から考えてみると、

・食品のプラスチック包装に「透明な紙」を使ってみると…
プラスチック包装と同じように使えそうです。
・中身を見せたい商品の包装に「透明な紙」を使ってみると…
強度もあるので商品の保護にも使えそうです。

透明で水に強い人工のプラスチック包装は、自然の中に放置されても生分解されず、海洋中のマイクロプラスチックのように後々大きな問題を引き起こす可能性があります。一方で「透明な紙」は天然の繊維でできているので、自然の中に放置されても生分解されていきます。

こう考えると「透明のプラスチック⇒透明の紙」という構造変化はありそうで、これから必要とされる変化かもしれません。

実際、展示会のブースでは、電子回路基板に「透明な紙」を使用して、自然に還る優しいデバイスとして紹介されていました。天然の繊維でできて、丈夫で、水を弾くという特徴を活かしていました。

ただ、現時点では商業的な製造体制は確立するまでには至っておらず、共同研究・製造の道を探っているようです。


以前読んだ「解像度を上げる」という本の中に、引っかかった文章がありました。

「私たちの今の判断が、未来の子孫たちの視座での審判に耐えうるかどうか」を考えることは、未来を深く考えるための一つの方法です。

馬場隆明(著)「解像度を上げる」

仕事や生活で下す判断が、この基準を満たすものか疑問を抱きましたが、この「透明な紙」を使えるようにすることは、未来の人たちに「あの時代の人たちが○○をしてくれたから今がある」と言ってもらえそうな気がしています。


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