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五輪銀メダリストは最も後悔している!?

五輪メダリストたちの感情はもちろん結果によって違う。今回は金メダリストから銅メダリストの間で選手たちはどのような感情を抱いているのか。『後悔』に焦点を当てて紹介していきたい。

オリンピックでは、1位、2位、3位、の選手は表彰台に上り、それぞれ金、銀、銅の名誉あるメダルを授与される。アスリートたちは毎日の厳しい練習に耐え、少しでもよい成績であるほうが、より大きな喜びや幸福感、達成感などを得られる。各メダリストが感じている喜びや幸福感、達成感などは、金メダリストが最も大きく、次に銀メダリスト、最後が銅メダリストという順番になるはずである。
しかしながら実際は違う。喜びや幸福感、達成感、満足感などのポジティブな感情は金、銀、銅の順番ではなく、金、銅、銀の順となる。つまり順位がよいからといって、より大きな満足感が得られるとは限らないのである。

後悔を生かす心理学/上市秀雄

結果に応じて得られるモノは違う。しかも結果のままに選手たちの感情があるわけではない。なぜだろうか。

このようなことが起こる原因のひとつは、反実仮想的思考にある。
ここでオリンピックメダリストたちを対象とした研究を紹介する。

1992年に開催されたバルセロナ・オリンピックに関して、全米放送局の報道をすべて録画し、銀メダルおよび銅メダルが決まったときのアスリート(主にアメリカ人)の様子、および表彰式の様子をピックアップ(銀メダリスト23名、銅メダリスト18名)して、スポーツに興味がなく、競技結果を知らない大学生20名に、それらの映像を見せて各アスリートの感情を推測してもらった。その結果、大学生たちは、メダルが決まった瞬間と表彰式の両方の場面で、銅メダリストのほうが銀メダリストよりも幸福そうに見えると判断した。

次にメダル受賞者(銀メダリスト13名、洞メダリスト9名)へのインタビュー映像を見せて、メダリストたちの発言内容からどのような考え方をしてきるのかを、大学生10名に推測してもらった。その結果、①銀メダリストたちは銅メダリストよりも「私はほとんど××できなかった」という考え方をしている、②銀メダリストは優勝者と比較する言動をしている、その一方で、③洞メダリストは自分自身が達成したことについて言及している、と実験参加者たちは推測した。

※反実仮想的思考=すでに起こった人生の出来事に対して実際に起こったこととは反対のことについて起こりうる出来事を考え出す人間の傾向に関するものである。

後悔を生かす心理学/上市秀雄


さらに、オリンピック後にメダリストたちが参加するフォーラムに出席した115名のメダリストたちに質問したところ、銀メダリストたちに質問したところ、銀メダリストたちは銅メダリストよりも「私はほとんど××できなかった」という考え方をしていた。これらのことから、銀メダリストは、銅メダリストよりも、「金メダルを獲得できなかった」「勝つことができなかった」などのような「達成できなかったこと」に焦点を当てる傾向があるので、達成感が低いことがわかる。
それに対し、洞メダリストは「少なくともメダルを獲得できた」と考えることができるので、銀メダリストよりも幸福感や満足感を得やすい。それらのことが私たち観客にも伝わってくるため、銅メダリストのほうが銀メダリストよりも、満足感しているように見える、というわけである。

後悔を生かす心理学/上市秀雄


このように五輪のメダリストたちは金→銅→銀の順で幸福度、満足度が高い。さらに後悔している気持ちはこの順で低い。一番後悔しているのは銀メダリストだ。

(以下持論)
この原因には、競技ルールや大会の設定にもあるのではないかと考えた。
ひとつは、水泳や陸上などの競技。この競技では、「ぎりぎり3位、入賞した!」などといった結果になるため満足感や達成感が高くなるのではないだろうか。
ふたつ目は、サッカーや野球などの球技や武道。これらの競技はトーナメント形式で、ほとんどの大会が、3位決定戦がある。また、なくても同率3位といった結果になる。そのため、試合に勝ってその大会を終えるか、戦わずして終えるかである。しかし銀メダリストは決勝戦で負けての結果となる。そのため、銀メダリストは、幸福度や満足度より、悔しさ、後悔が残るのではないだろうかと考えた。


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