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路地裏散歩の先にあった不機嫌レストラン

数十年ぶりに以前働いていた職場近くに足をのばして、街はずれの路地をぶらぶらと散策しました
昔あった古本屋は健在。古着屋やセレクトショップが新しく並んでいる。
セキュリティー付きの門扉の奥は、細長い道の先に低層マンションのおしゃれなエントランスが見える。こんな場所に住めるっていいなと文句なしに羨望。

たしか、先日知り合いからランチの美味しい店があると聞いていたので
伝え聞いた通りの路地に入る

ラーメン屋さんの前には行列が出来てる
がしかし今日は理想のワンプレートランチを絶対に食べたい。

雑居ビルの細い階段の入り口にカフェでよく見かける黒板のメニュー表をみつける
店の名前もローマ字のおしゃれな感じ。
ワンプレートランチとパスタランチの二種類しかないのもグッド!
知り合いが言っていたのはここかなと階段をあがると
低い天井と細い廊下の先に古めかしいカフェの扉が見えた

とここで、違うかも……
扉は、布?で覆われて中の様子が見えない
違ったな…この感じ、おしゃれランチの店じゃないな…と迷いがうごめく…
が戻る勇気よりも怖いもの見たさの好奇心が勝ってしまった

恐る恐る扉を開けると狭い店内に3組の先客がいる
そして幸か不幸か、テーブル席が一席開いていた
1名空いてますか?と店主に声をかけると無言で残りの一席を指さされた

おや?無言かい?
絶対違ったな…が、そんな動揺をのぞかせまいと堂々と指さされた席に着く

先客の3組の内訳は、女性ひとり×2、中年おば様3人組×1で
女性ひとり組の2名は、常連さんなのか落ち着いた様子で黙々と食事をしている
おば様3人組はおしゃべりに夢中でまだ注文も決まってない様子
と無言店主が水をいれたコップを無造作におば様の会話を遮る様に間に置く
「なに?」と注文を取る
「パン、ごはん?」「飲み物は?」と言葉少なげに聞く
おば様があーでもないこーでもないとなんとか注文を終え
やっと私の番となる

「プレートランチ、パンで、コーヒーホットで」よどみなく注文をお願いする。

とここでメニュー表が出された。(笑)

使い捨てタイプのメモ帳に読みにくいクセ字手書きでプレートランチとパスタランチとだけ書かれていた。

うそだろう!!!

注文をフライイングしてしまった事と、メニュー表の斬新さに動揺を隠せず
不機嫌おやじ店主をマジマジと見てしまった。

怖っ
はい、間違って入ってしまいました決定!!!

後は、黙って出されたものを食し会計して帰るだけ

心が決まったので落ち着いて店内を眺める
雑多に置かれたアンティークな小物類、衣類らしきものも無造作に重ねられてとにかく物が多い。おしゃれなのか?雑然としてるだけか?
BGMはシャンソンっぽい…アールヌーボ風なパテストリー
フレンチなのか…そう言われれば不機嫌指差し店主はジャンレノ?風か

と観察を終えたころスープが置かれる
テーブルにガンっと音を立てて置かれる…

怖ぇ〜よ〜やさしく置いてくれよ

でもスープカップ、シンプルでソーサーとセットで可愛い

ジャガイモのポタージュスープ。美味しい…笑。

その後、メインのプレートと焼きたてパン。
カニクリームコロッケとチキンのホワイトソース。美味しい
うっすらトリュフの香り…美味しい
食後のコーヒーとデザートに自家製プリン…美味しい
コーヒーを飲んでる頃には他の客は全員食事を終え、皆、口々に美味しかったですと連呼して会計して出ていく

笑顔サービスをまったくやらない接客もありなんだなと感心する
お客さんの方が気を使ってくれる
美味しかった連呼を店主に浴びせて帰っていく

さて、どうする
不機嫌ジャンレノとふたりきりとなった店内は、私のコーヒーをすする音のバックでうっすらシャンソンが流れる…気まずいよ。
誰も入ってくる様子もない…

"素敵"なコーヒーカップに少し残ったコーヒーをイッキ飲みした私は
「ごちそうさまでした」とだけ余裕な顔で会釈し会計を終え店を出る

「ありがとうございました」と小さくつぶやくジャンレノの口元がうっすらゆがんだ気がした…あれが一番の笑顔なのか?

そうです、とっても美味しかったですよ。でもそれは、当たり前ですよね
味が自慢の店なんですよね。わかってますよ。
そしてまた来ます。(笑)

不機嫌レストランに大満足し、また少し足を伸ばすと大人女子が行列しているレストランを発見。ここだったのね。そりゃそうだよね。

がしかーし、隠れ家的不機嫌ジャンレノ、ワンオペ店主の味は格別でした。頑固オヤジの心意気を感じる不思議なレストランを発見したのでした。

後でネットで調べるとクレームの書き込み発見。食べずに帰ったとある。

勿体ない事したねーっと勝手に同情…

さて、思う。
満面笑顔の普通の料理とノーサービス仏頂面の美味しい料理。私なら後者に1票かな。


長文お付き合い頂きありがとうございました。

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