春はまだ続く

桜が散り始めても、季節はまだ変わらない。

私の春は、後悔の季節。

勝手に新しいものが始まって、馴染みあるものが終わっていく、寂しさと不安。やってきたこと、できなかったこと、しなかったことへの後悔。色々。
たった一日を境に、変化を求められるのが耐えられない。

卒業して何が変わるというのか、と歌ったシンガーソングライターがいたけれど、私は入学も同じだろうとずっと思っていた。
なにが節目だ、と。そんなものは暦の中にあるだけで、人間に大きな影響を与えるようなものではないだろうに。

周りから、世の中の空気から、変われ、変われと急かされるように感じる季節。
変化を求められるということは、過去の在り方を否定されているようにも感じられる。
今までの人生など未熟であり、そのままでは生きられはしない、と言われているようで。
積み上げてきた過去を崩されては、自信など生まれないというのに。

…だから、私の春は、不安と後悔の季節。
出会いや別れに感謝する歌は合わない。
ひっそりと静かに、包み込んで許してくれるような言葉に救われる。
周りについていけない自分を。過去に捨ててしまったものを。自分で傷つけてしまったものを。
そっと包んで、許して、風に溶かしてくれる詩。
すべてから離れて、夕暮れの空を眺めるような。
終わってしまった、始まってしまった、と焦ったり後悔したりする心から少し離れて、夜風に吹かれているような。

そっと空を見上げて、変わらないもの、必ずそこにあるものの存在を確かめる。変わらずに存在していて、ゆっくりと変化を続けるもの。自分もその一部なのだと感じて、すぐに変わることのできない自分も許されるように思う。

人間なんて、小さなもの。人生だって短い。
自分が生まれるより前からあって、今もそこに存在するものがたくさんある。
自分という人間も、時の流れの一部分なのだと思うと、後悔も焦りも、大きすぎる希望や期待も、軽く感じられる。

色々な人間と、場所と、それぞれの形で繋がっているけれど、結局はもっと大きなものの一部。
今、ここ、が人生のすべてではない。
もっと昔から繋がってきていて、今はその先に繋がっていくはず。
…そう思いながら、詩を読み、歌を聞き。
春も、冬と夏の間の一時だけ。無常の一部でしかないのだ、と自分に言い聞かせて。
この不安と後悔と緊張が和らぐように願う。





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