ウメケン(梅澤広将)

竹屋流剣道具師の家に生まれる。大学卒業後、父の元で剣道具作りの道に入る。剣道具作りの観…

ウメケン(梅澤広将)

竹屋流剣道具師の家に生まれる。大学卒業後、父の元で剣道具作りの道に入る。剣道具作りの観点からの剣道を日々考える。剣道と剣道具のより良い関係を追い求める。

マガジン

  • 竹屋流剣道具師からみた剣道の疑問

    剣道具師の立場からみえてくる剣道 剣道具師が抱く剣道に対する疑問等を書き留めておきます #剣道具師の疑問

  • 竹屋流剣道具についてby梅澤

    竹屋流剣道具師 梅澤 が竹屋流の剣道具について、作ってきたことで気付いたこと等残していきます。剣道家や剣道具に興味のある方の参考になればと思います。

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剣道を文化として残すために

僕は竹屋流剣道具師の父のもとに生まれ、剣道と剣道具作りが身近にある環境の中で育ってきた。そして大学卒業後、父のあとを追い剣道具作りの道に入った。それももうすぐ25年になろうとしている。 僕にとって「剣道」とは、「人生を共に歩む価値のある素晴らしい文化」である。剣道が全てではないが、「剣道」「剣道具作り」を通じて学んだ事が、僕の人生に彩りを与え、僕の日本人としてのアイデンティティを形成する上で大きな要素であった。 僕にとってはかけがえのない文化である剣道であるが、時代の流れ

    • 剣道具の変化と剣道の変化〜竹屋流の甲手と現代の甲手〜其の3

      あくまで竹屋流剣道具師の立場からみた個人的考察です。 フィンガーグリップ型がもたらしたもの 1番わかりやすいのは「手首の可動域が広い」と思われている事だと思います。 他にも 指先で操作しやすい 上から握れる 手首が柔らかく使える といわれています。 上記のような特性により竹刀剣道における打突技術(有効打突をとる方法)が格段に進化したといわれています。 しかし 本当に打突技術(有効打突をとる方法)は進化したのか? 有効打突(いわゆる『一本』となる打突)は 充実

      • 剣道具の変化と剣道の変化〜竹屋流の甲手と現代の甲手〜其の2

        甲手の形が昭和のパームグリップ型から現代ではフィンガーグリップ型に変わってきました。それによって起こった剣道の変化についての個人的な考察です。 フィンガーグリップ型がなぜ好まれるのか? 1番の理由は手首の可動域が広いことと指先での操作がし易いことによる竹刀操作の違いのためだと思われます。 ゆるい手首と指先での竹刀操作によって、パームグリップ型ではできなかった軌道で打突部位を捉えることができる様になりフィンガーグリップの打突技術が研究されてきました。また最近のテクノロジーの

        • 剣道具の変化と剣道の変化〜竹屋流の甲手と現代の甲手〜其の1

          「昭和の甲手」と「現代(主流)の甲手」は大きく形が変わっています。気づいている人もいると思われますが、その変化が何を意味しているかの研究は進んでいない様に思われます。 「竹刀と手の内」の関係が変わったことをあらわしている⁉️ 自分たちが作っている竹屋流(昭和)の甲手はパームグリップを想定して作られています。 一方現代の甲手はフィンガーグリップを想定して作られている様に見えます。 パームグリップ型からフィンガーグリップ型への好みの変化は、竹刀の道具としての認識の変化により、

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        • 竹屋流剣道具師からみた剣道の疑問
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        • 竹屋流剣道具についてby梅澤
          4本

        記事

          甲手についてのつぶやき 〜二分五厘の甲手の質問を受けて〜

          二分五厘の甲手についての問い合わせをいただいて文章にまとめたので、上手く説明できませんが私心を述べさせていただきます。 うちで作っている甲手はサイズや材料は時代と共にかえていますが、構造はなるべく変えないよう心がけて製作しています。今までは昔ながらといっていましたが、最近では珍しくなりすぎて見たことのない甲手といわれることも増えてきました。 二分五厘は普段使いにしてもらえるような規格として設定しています。 うちの甲手としては幅広い年代の方に使っていただけるようにしています

          甲手についてのつぶやき 〜二分五厘の甲手の質問を受けて〜

          竹屋流梅澤派が目指す剣道具

          竹屋流梅澤派が目指す剣道具は 「剣道の理想」を実行するための剣道具である では梅澤の考える「剣道の理想」とは 日本刀・木刀・竹刀は違う 竹刀で斬ることはできない それを承知の上で 梅澤が考える剣道の理想は 竹刀で刀法を実現することが剣道の理想であると考える 竹屋流梅澤派が目指す剣道具は 必ずしも競技において有利ではないかもしれない 必ずしも競技者にうける剣道具ではないかもしれない それでも本来の剣道の理想を目指す、至高の一本を目指す為の剣道具にこだわり続けたい

          竹屋流梅澤派が目指す剣道具

          剣道は正しく学び正しく行うものである

          「正しい剣道」という言葉を聞くことがある 非常におかしな表現であると感じる 自分は「剣道そのものは正しいものであり、それを正しく学び正しく行う事が大事である」と言われ成程と思ったことがある いっぽう真面目に「正しい剣道とは何か?」と議論されていることがある そのこと自体が剣道が直面している課題を表していると思う 剣道を正しく学び正しく行なっていれば、段階における上手下手はあるにしてもそれは剣道であると思う では何故「正しい剣道」という言葉が聞こえてくるのか それは

          剣道は正しく学び正しく行うものである

          剣道具の不易を考える

          伝統としてある物事を後世に残していくためには、それ自体の本質を守りながら時代に合わせて変化していかなければならない 高野佐三郎先生が「剣道具は完成された」といってからもうすぐ100年になる。 また戦後剣道が再開されてから70年が過ぎた。 その間、剣道具は大なり小なり変化をしながら今に至る。最近では「古き良き剣道具」というフレーズも聞こえてくるほどである。 個人的には、時を経て少しずつ変化をしていくことは自然な事であり、その物事を伝承していく為には必要な事だと考える。 実

          剣道具の不易を考える

          竹屋流の甲手は「脱力を主体とした剣道」のための道具である

          2023年1月号の「剣道日本」にて、竹屋流剣道具師として興味深い新連載が始まった。 タイトルは「脱力剣道の魅力 物理学者が解き明かす筋力に頼らない真の剣道」である。 そこで語られている剣道は「脱力を主体とした剣道」であり、それは日本伝来の剣道に近いのではないかと書かれている。かなり共感できる文章である。 なぜなら自分が教わってきた本来の剣道具は「身を守りながら、身体に負荷をかけない」を前提に作られてきたからである。 特に高野佐三郎先生と共に作り上げられてきた竹屋流の甲

          竹屋流の甲手は「脱力を主体とした剣道」のための道具である

          剣道具について考える 「くの字オープン型甲手」の問題点

          剣道具師の視点から「くの字オープン型甲手」が剣道に及ぼす影響について考える。 今主流となっている親指がつかず、手首の反りをつけているものを「くの字オープン型」と分類する。 剣道家ではなく剣道具師の視点から「くの字オープン型甲手」には、主に以下の問題が発生する。 力みが取れない 構えた時の姿勢が前傾になりやすい 刃筋の通った打突が難しくなる 打つではなく当てるようになる 打突後腕が上がる 左足が跳ねる 肩・肘を痛めやすい 上記の大きな原因を考えると竹刀に対し

          剣道具について考える 「くの字オープン型甲手」の問題点

          剣道上達のヒント 剣道具師の視点から「力が入る」を考える 着装編

          剣道家の立場からのアドバイスは多々あるのですが、剣道具師の視点からのアドバイスはほとんど無いので、「力が入る」を克服するを考えてみます。 剣道は「心法」「身法」「刀法」の三法から成り立っていますが、その中で剣道用具(竹刀を含む)は「身法」「刀法」に関わっています。そして剣道用具は「力が入る」原因になりうる要素があります。 着装について考える 剣道は基本的に剣道衣・袴・剣道具を身につけて行います。そしてその着装も剣道の一部として考えられています。 では、なぜ着装が剣道の

          剣道上達のヒント 剣道具師の視点から「力が入る」を考える 着装編

          剣道上達のヒント 剣道具師の視点から「力が入る」を考える 竹刀編

          剣道家の立場からのアドバイスは多々あるのですが、剣道具師の視点からのアドバイスはほとんど無いので、「力が入る」を克服するを考えてみます。 剣道は「心法」「身法」「刀法」の三法から成り立っていますが、その中で剣道用具(竹刀を含む)は「身法」「刀法」に関わっています。そして剣道用具は「力が入る」原因になりうる要素があります。 竹刀について考える 竹刀は競技の公平性と安全性という名目で規定が決められています。その為多くの人が使用できる最長の物、その世代の規定に合った重さのもの

          剣道上達のヒント 剣道具師の視点から「力が入る」を考える 竹刀編

          竹屋流剣道具を考える 甲手編

          竹屋流剣道具の甲手は、「押し斬り」を前提として作られている。 剣道は竹刀を使っての刀法の修錬であり、刀法の手の使い方には大きく分けて「打ち手」「突き手」「受け手」の3種類がある。構えた時は右手はやや「受け手」に近い形、左手はやや「打ち手」に近い形となる。 そう考えると、甲手の形の基本は「打ち手」と「受け手」の中間、軽く拳を握った形となる。 ここで「押し斬り」の条件を考えてみる。 物打ちが振り下ろされること 押し引きの円運動がおこなわれること 打ち手の左手が前後せず

          竹屋流剣道具を考える 甲手編

          剣道具について考える 剣道具の役割の変化

          大雑把にいうと簡単な和装をして、竹刀を持って、面・甲手・胴・垂をつけてやるのが剣道である。つまり剣道に必要な物は、衣装・竹刀・剣道具(面・甲手・胴・垂)である。 ここで剣道具の成り立ちと役割について考えてみる。 剣道は剣術を源としている。竹刀や剣道具が発明される前は型稽古が中心であり、実際に技量を確認する方法はなかった。使われたのは刃引きや木刀であり一歩間違えば命に関わるからである。 そこで竹刀や剣道具が発明され、命を落とすことなく安全に技量を試す試合ができるようになっ

          剣道具について考える 剣道具の役割の変化

          剣道は難しい? 基本と試合と審査

          「剣道は難しいのじゃなくて、奥が深いのだよ。」20代の頃先生に言われて心に残った言葉である。 それからは剣道を難しく考えないようにしてきた、もちろん奥深さは追求しながら。 しかしながら剣道は時間と共に難しくなってしまった様に感じる。 もしかしたら何か理由があってわざわざ難しくしたのかもしれないが…。 初心のうちは 「大きく振りなさい」 「遠間で稽古をしなさい」 「素直に打ちなさい」 それが試合にでるようになると 「大きく振っているから勝てない、小さく打ちなさい」 「

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          剣道よ 刃筋は何処へいった?

          竹屋流剣道具師の家に生まれ剣道に関わってきた。父のあとを追い剣道具師の道に入った。竹屋流は高野佐三郎先生と共に剣道具を研究してきた流派である。 少年剣道はやったが、中学は陸上、高校は1年で剣道部からフェードアウト、大学はとりあえず剣道部に在籍、試合には縁がなく何度か出た試合でもほとんど勝てなかった。それでもなんとか五段までもらえた。 それは「俺は盆栽ではなく大木を育てたいんだ」という信念をもった少年剣道の先生が基本をしっかり教えてくれたお陰だと思っている。 大きく打ちなさ

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