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ガハハ先生ー人口減少と食料問題#4/5

(4)土地利用型農業と市場の失敗

ガハハ:「C型農業の後退」と「V型農業の健闘」という話を覚えてるかな。

なるほど:生源寺先生が、日本の農業を二つに類型化された話ですよね。付加価値型のV型農業は、施設園芸や施設型畜産に代表される集約的な農業。カロリー生産型のC型農業は、稲作に代表される土地利用型農業です。

ガハハ:この2つの農業を分けて考えないと、現状分析も課題の解釈も混乱してしまいがちなんだ。たぶん、デモネさんのモヤモヤの要因もそこじゃないかな。なるほど君が気にしている耕作放棄地の問題などは、専らC型農業に関する論点だと思うよ。

デモネ:確かにV型は、ビジネスとしての成長シナリオをイメージしやすいですね。政策介入としても、意欲的な農業者がマーケットの動向を見極めて創意工夫できるよう、健全な競争の環境を整えることがメインになるのではないでしょうか。V型も市場の失敗と無縁とは言えないですが、必要以上に政府が介入すると、マーケットのシグナルが伝わらず、かえって活性化を妨げるおそれすら感じます。

なるほど:開放系で営まれるC型には、気象、地形など様々な制約が伴うこととなります。また、生産される農産物の多くは、コモディティとして価格形成されています。だからこそ、国民を飢えさせない、食料安全保障という観点からは、C型をどう持続可能にするかが重要なんだと思います。

デモネ:確かにC型は、気候、水、土など市場取引されない投入財に多くを依存しているけれど、生産物の価格には、そのコストが反映されないし、水質悪化や土壌劣化などのコストも反映されてない。だからと言って、農産物の価格を下支えするような政策介入をして市場のシグナルを歪めてはいけないと思うわ。そもそも、納税者負担で価格を上げておいて、高い価格で消費者負担を強いるって、理屈から考えても問題よ。

なるほど:C型には、市場の失敗がついて回る宿命があるような気分になってきちゃったな。短期的には、儲からないから、耕作放棄にしておいて、中長期的に相対的な優位性が発揮されるようになったら、また、農地に戻して、生産すれば良いなんて、都合よい話はあり得ないもんな。

デモネ:そう簡単にはいかないわよね。農地を生産装置として機能させるには、かんがい用水路など、これまで膨大な年月と労力をかけて、築き、維持してきた施設も必要でしょう。いったん放棄したものを復活させるには、改めて膨大な投資が必要になるけれど、人口減少がさらに進んだ将来の日本にそんな体力があるのかしら。

ガハハ:モントゴメリーは、「土の文明史(2010)」で、「農業を単なるビジネスの一種として見ることはできない。土壌保全の利益は数十年管理を続けてやっと実を結ぶものであり、また土壌の誤用のコストは万人が負担するものだからだ。(pp.321)」と主張しているね。この主張は、土壌に限った話ではなく、開放系の農業生態系全般に当てはめ可能なんじゃないかな。人口が減少するなかでは、市場の機能を十分に発揮させながら、市場の失敗への対応を効果的に進め、C型の持続性を確保する対応が必要になっているんだ。
【#5に続く】

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