見出し画像

ガハハ先生ー生態系サービスの見せる化#2/4

〇価値の「見せる化」の具体例は(#1からの続き)

デモネ:私は、ESG投資の会社で働いている先輩に、農業関連の資金調達で、どんな取組があるのかインタビューしました。20年前のコロナ禍の時代に、消費者が購買で直接農家を応援する共感消費の動きが注目されて以来、農業や農村活性化の取組を応援するクラウドファンディングが増え続けてますが、ビジネスとして裾野を広げる上で、データに基づく見せる化が大きく貢献して来てたんです。例えば、棚田のエリアで環境配慮の取組を進めて、虫や魚などの生物多様性を高めるとともに、水質浄化や洪水防止などの機能を高度化するプロジェクトを企画、クラウドファンディングで実践費用を募集するなんて話。クラウドファンディングの参加者には、プロジェクト側から、随時、動画やメッセージが送られて感性に訴えるフィードバックがあるだけでなく、電子地図上のデータ表示で進捗状況の検証と報告が行われているんです。また、ESG投資のなかでも、特に前向きに社会課題を解決するインパクト投資として、食品産業や観光産業など、農業や農村から重要な経営資源を得ている企業が、農業や農村の持続性を高める取組を支援していることを評価する例が増えています。支援対象がその企業の長期的な経営リスクを軽減するのに適当な内容か、支援がキチンと結果(アウトカム)に結びついているかなど、データで検証可能だからこそ、より多くの投資家を惹き付けることができているんです。

ガハハ:デモネさんの紹介してくれた資金調達は、昔は外部経済として、市場取引に反映出来ないとされていた価値を評価する新しいマーケットが創出されている事例として捉えることができるよね。要すれば、持続性に配慮した農家の取組に対してお金が支払われる仕組なんだが、なるほど君、お父さんから、補助金に関して似たような話を聞かなかったかい。

なるほど:はい、直接支払いと言って、日本だけでなく世界の多くの国で、生物多様性や炭素貯留、水質浄化などに配慮した農地の利用をする場合に、政府から補助金が支払われていると聞きました。昔は農家にとっても、自治体職員にとっても膨大な手続が求められて大変だったそうですが、今は、電子地図を使って、申請手続や取組の報告、役所の確認も簡単に行えるようになって劇的に楽になったと言ってましたよ。申請はタッチパネル方式で、取組対象の圃場を指定して、メニューを選ぶだけ。進捗の報告は携帯端末で画像を役所に送信し、受付サイドも電子地図上でそれを確認。ただ、衛星画像の診断で不正行為がばれると厳しいペナルティがあるそうです。

ガハハ:実は、デモネさんの報告してくれたようなビジネスが拡大したのには、この直接支払いを通じた見せる化が大きく関わっているんだ。直接支払いの補助金の対象となるメニューとして、持続性を高める取組に関するデータの入力項目が標準化され、多くの農家の間に普及したこと、さらに、実際の運用を通じて関係者にとって電子地図へのデータ入力へのハードルが下がったことで、見せる化のための情報基盤が一気に整ったんだ。

デモネ:直接支払いの制度設計や運用を通じて、電子地図を活用するための情報基盤が整備されたので、企業がビジネス展開しようとする際に、データ入力項目の標準化や農家の心理的負担軽減のための啓発などに投資をする必要がなく、低コストで参入しやすくなったんですね。

【#3に続く】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?