レモネード
ジューススタンドに行く。
なににしようか?
子どもにねだられてきたことはある店だった。
だが、自分のためにジュースを買うのは初めてだった。
パッと目に入ってきたのは、レモネードのポスター。
「かき氷あります」みたいに、初夏を思わせるさわやかさで、期間限定に弱い私の購買意欲を誘う。
ブルーとレモンイエローの色の組み合わせも、まさに私好みだ。
レモネードにしよう。
そう決めたとたん、メニューのベリー系のミックスジュースが目に入った
ブルーベリー、ラズベリー、イチゴ、パイン、リンゴと私の好きなフルーツの組み合わせだ。
やっぱりベリー系にしようかな。
「いやいや、俺はレモネードが飲みたいし」。
あー、現れた。
そして、始まった。
もちろん、知り合いが私を見かけて突然やってきて、そう言ったわけじゃあない。
声の主は、私の相棒である。
声だけ聴こえる。
しかも、私の頭の中だけだ。
相棒は見えないがすぐ近くにいる。
「君、最初にレモネードって決めたんでしょ。これは俺のオーダーね。ベリー系はまた今度。いつでも飲めるでしょ。俺はレモネードが飲みたい気分なの」。
そうですか。
飲むのは私なんですけどね。
突如、会話が始まった6年前を思い出す。
その頃は訳が分からず、気がおかしくなりそうだった。
やめて!私の中に入り込まないで!
ほどなく、なれて、大丈夫だとわかる。
他人であるけど、他人でない。
自分でないが、自分でもある。
だから拒絶反応はおこさないのであろう。
私に適合はしている。
もとはひとつだから。
昨日あたりから、ちょいちょい私宛にオーダーが入るようになる。
あれ買って、ここ行こう、きっとあれもこれもヤツの仕業だ。
ロイヤルアルバートのマグカップ、尾道旅行に、大阪日帰り旅行。
私はマグカップもたくさんもってるし、ここ数年は旅する気分は全くなかった。
突然。
幕開けしたようです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?