映画『夜明けのすべて』を見た日
「なんとなく、映画館を出てまだ明るくて
まだまだなんでもできる時間がいい気がする」
私は映画館を出て、もう日付が変わっていて、この余韻までも夜が包んでくれているのだという感覚が好きだ。そして夜型人間、夜更かし大好きなこともあり映画もドラマもラジオも夜に限ると思っている節がある。
けれども友人からこんな風にお勧めされたのであれば、できるだけ早い時間帯に観ようじゃないか。
昨日は天気が不安定で晴れていたと思ったら急に雨が降り出したり、地震があったり、そんな日だった。そのうえ、祝日だというのに家から出ずに過ごしてしまった。
「明日も休みだし、ここを逃したら劇場で観られないかも」
そう思って、公開前からずっと楽しみにしていたはずだが観れていなかった映画を見に行くことにした。
平日休みの今日は、仕事に行く日よりも早起きしてしまって最高に気持ちがいい。そして天気もいい。いつもなら食べられない朝ごはんもゆっくりたっぷり食べて、メイクも春らしく仕上げ、時間に余裕を持って家を出る。
席に着くとほぼ満席だった。
昨日チケットを買った時には半分も埋まっていなかったが、今日が終演日というのもあるのだろう。
11時45分からの120分間
『夜明けのすべて』
雨が、冷たくて。
彼女はベンチでずぶ濡れだった。
どうしようもなくコントロールできない感情が溢れていく。
私はこの感覚をよく知っていて、正直逃げ出したくなった。
ストレスから逃げて、自分を守らなくてはならなくて。
それでも私たちは働かなくてはいけない。
生きてゆくためには。
生きている人々の抱えているものが、言葉もなく描かれていく。それが本当に心地よくて。そして見えないものを想像するのだ。だからこそ解けていくようなことばが生まれて、溢れているのだろうか。
余白の多い映画は好きだ。
見ている途中に現実に戻る瞬間が好きだ。
本当に私は何をしているんだろうか。
どうして、何のために、あれ、世界がぐにゃりと見えてきた。私はただ、人に迷惑をかけたくなくて。
雨が、温かくて明るくて。
藤沢さんはやっぱり傘をささなかったな。
私はフィルムが好きだ。
私の目には世界が本当にこんな風に、フィルムを通したように見えているのだ。温かな光と、柔らかな風と、煌めく灯り、くすんだような闇が。この話はまた今度、私の使っているフィルムカメラのことと一緒に、ことばにしよう。
こんな私でも誰かのために何かできるかもしれなくて。
なんなら自分だけのために生きていくことの方が難しい。
とにかく、夜がいっそう好きになった。
朝がまた来ることが楽しみになった。
さて、まだまだ何だってできる時間だし。
やつどきに甘いものでも食べて、フィルムを片手に散歩でもしようか。
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