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冷めたコーヒーを

今日の用事を済ませ、コーヒーのお店へ向かう。
前から行きたいと思っていた。別店舗に伺ったことがあったが、ここは川沿いで景色がとても良いのだ。

メニューはほぼコーヒー。
クッキーが数枚、ガラスドームに閉じ込められている。

「アメリカーノを1shotでお願いします」
「ホットでよろしいですか」
「はい、温かいもので」

やたらと声の大きい人がいる。
かたや近所のおばさま方の女子会。
窓際の席に座ることにした。

エスプレッソが落とされ、声をかけられる。

「アメリカーノできております」
「あっ、はい」
「お湯の割合はいかがいたしましょうか」
「ええと、どれぐらいが」
「あ、6割程度がふつうぐらいですかね」
「あ、では、それで、お願いします」
「もし、濃いようでしたら薄めることもできますので」
「はい、ありがとうございます」

こぼさないようにと両手で席まで運ぶ。
フルーティーな香りがして、口に運ぶと更に香る。

なんか、イベントの企画系の仕事かしら
大きい声で仕事の話ができる人は、仕事ができるかはわからないが人脈すごそうだし稼いでそう。完全に偏見。

彼らが店を出るとゆったりとした時間が流れ、エスプレッソマシーンのスチーム音が聞こえてきた。大きな窓からは土手を散歩をする人、自転車で帰る人、トラック、電車。時間が流れていく様が急に見えてくる。

「そうそう、これ」

コーヒーは冷めてしまったが、求めていたものにやっと辿り着けたようだ。
冷めてもやはりフルーティーで、寧ろ甘味が増していて。実は冷めたコーヒーが美味しかったのは初めてだった。最後に美味しい時間が待っているなんて最高じゃないか。

そろそろ帰りましょうかと女子会もお開きのようだ。
もうすぐ日が暮れるから今日は帰らないと。今度は夕暮れ時に、オレンジと青との空を見に行こう。

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