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season2 1話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)

『オモテのウラを、見る目はあるか』


1.『キタカミの里』


※1時間スペシャルのイメージ

 冒頭、北條家。無事ついたかねえ、とか話してる。



 一方、ヨーコの乗った飛行機が空港到着。バスを乗り継ぎ、キタカミ到着!

「やっと着いたー!」
「飛行機とバス、座りっぱなしでお尻が痛いわ……」

 バス停にて背伸びする他のメンバー。

「ハハハ、長旅ご苦労様! 皆、揃っているかな?」
「はーい!」

 みんなでお返事。

「さて……、ここがキタカミの里! 今から始まる、林間学校の舞台だ! 私も来るのは初めてだけど、田園風景が輝いているね!」
「へえー、不思議な感じー」

 つぶやく女の子。

「その先はスイリョクタウン。私達の拠点となる村さ!」
「クスノキシティの山合に似とる……」

 ヨーコ、見回しながらしみじみ。

「ぼく初海外! なんだか匂いが違うね!」
 はしゃぐ眼鏡の少年。
 と、帽子の男の子が、
「あのう先生……、ちょっと気分が悪くて……」
「それは大変だ。乗り物酔いだろうね」

「大丈夫?」

 気遣うヨーコ。眼鏡の少年も同様。

「頭がコダック並みに痛い……」

 うめく男の子をさすってやりながら、女の子、

「バス、すっごい揺れたものね」

「しばらく田園を見ながら、皆でひと休みしよう!」
「はい」

 みんなでベンチでたむろしていると、

「ヨーコくん、ちょっといいかな?」
「はい」

 ヨーコ、ブライアに呼ばれる。

「私達の到着を、この先にあるスイリョクタウン公民館の管理人さんまで知らせてくれるかな?
 体調不良の生徒がいることも伝えてくれるとありがたい」
「わかりました。まかせてつかあさい!」

 ぴっかりさんも出てくる。

「ピカピカ!」
「ふたりとも頼もしいね! 私は彼のお世話をするのでよろしくお願いするよ」

 道をふたりで歩く。田園風景をながめ色んなポケモンを調べながらも小走りに歩く。
 看板のところまで行くと、公民館前に誰かいた。姉弟のようだ。
 ヨーコの姿を認める弟。

「ねーちゃん! あれ! あれ!」

 駆け寄ってくる姉弟。

「へ?」
「あんたがパルデア地方の……、アカデミーの生徒ってやつ? なーんかどっかで見た気がするわね……」
「かっこいい……」

 ねめつける姉、後ろから覗く弟。

「スグリ黙って。あたしはゼイユ。残念だけど、よそ者はスイリョクタウンに入れてあげないの」
「は?」「ピカ?」

 気色ばむヨーコとぴっかりさん。

「……どうしても入りたいなら、あたしと勝負しなきゃダメ」
「ね、ねーちゃん、戦いたいだけ、いじわる……」
「スグ、うるさい」

 慌てるゼイユ。

「弟は無視していいから」
「うぅぅ……」

 肩を落とす弟。

「それじゃ、位置につきなさい」
「──わかった」

 位置に着くヨーコ。

「たっぷり遊んであげる」

 ゼイユの一匹目、ポチエナ。

「ようこそキタカミへ。まずは土の味噛み締めなさい!」

 こちらは我らがぴっかりさん。たいあたり&かみつくをくらうが、アイアンテールを脳天にかまして瞬殺。

「土の味が、なんじゃて?」

 煽るヨーコ。
 ゼイユの次のポケモンはロコン。
 ぴっかりさんを下げわっぷるさんをだす。かなしばりでとめられでんこうせっかをうけるが、一瞬だけかなしばりが弱くなったのを見計らい、アクアカッターで瞬殺。

「ふ……、ふーん? タイプ相性知ってたんだ」

 最後チャデス。そのまま行ってみるヨーコ。

「ためしに、けたぐり!」

 効果なし。

「ゴーストタイプかね」
「からにもこもる」

 防御をあげられるも、めげずにアクアジェットで接近! しかしおどろかすでひるんだスキにメガドレインをくらってしまう。効果抜群。

「キタカミの洗礼、どうだった?」

 不敵に笑うゼイユ。

「あたしも心苦しいんだけどね」
「ほうかね……。じゃさっさと終わらすかね!」

 みずのはどうで目を眩まし、すかさず至近距離でエアカッター! 効果抜群で勝利。

「あんた……、何なのよ」
「ふっふっふっ、パルデアのポケモントレーナーなめたらいかんよ?」
「わやじゃ! ねーちゃんに勝っちまったー!」
「くやしい……。あたしが負けるなんてありえないのに!!」

 じだんだ踏むゼイユだが、すぐにケロッとしたように、

「……ま、ぎりぎり合格ってとこかな」
「はあ」

 切り返しの早いゼイユにうなずくしかないヨーコ。

「仕方ないね。あんたならあたしの舎弟として村に入ってもいいってことに……」
「こりゃー!! 勝手になにやっとる!!」

 後ろから声。公民館から人が走ってくる。

「チッ、めんどくさ。行くよスグ」

 去っていくゼイユ。

「えっと、えっと……」
「ピカア?」

 アワアワするスグリに、出てきてすごむぴっかりさん。

「! ねーちゃん待ってえ」

 スグリも行ってしまう。

「ありゃあ……、ぴっかりさんだめよ、いかくしちゃ」

 ヨーコがなだめていると

「いやー、どうもどうも。アカデミーの生徒さんですよね? あたしは村でいろんな施設を管理している管理人でして、皆さんのお世話をさせていただきます」

 管理人さんが挨拶に来てくれた。

「お世話になります」
「ピカチュウ」
「あんたさん、さっきあの姉弟から変なことされませんでしたか?」
「いや、まあ、勝負はふっかけられましたけど……」
「そうですか。いやー、あの子ら……、特にゼイユはどーうも昔から手がかかる子で、ご迷惑かけてたらすみませんなぁ」
「ああ、いえ……」

 ヨーコ、ハッとして、

「あ、ほうじゃブライア先生から伝言あるんじゃ! うちら無事着いたんじゃけど、バス停に体調不良の子がおるんです。みんなまだそこにおります」
「なんと! すぐにお薬持ってお迎えにいきますんで! あんたさんは先にそこの公民館で待っててください」
「ありがとうございます」
「それでは、どうも!」

 管理人さんと別れ、周りをぶらぶらするヨーコ。一周して戻ってきたところで、

「みなさん、こちらです」

 みんなも来た。

「ヨーコくん、ありがとう。彼の体調も良くなったよ」
「や、ヨーコ」

 手を振る男の子に、ヨーコ一安心。

「良かったあ」

 管理人さんが説明する。

「はい、えーこちらが公民館! これから皆さんが寝泊まりする施設です。予定では、ブルーベリー学園の生徒さんと合同で宿泊! ……のはずだったんですが! グレープアカデミーの生徒さんだけで使っていただくことになりました」
「あの子たちはこの村が故郷(ふるさと)だからね」
「それでは、ささ、中へどうぞ」

 みんなで入る(ヨーコはぴっかりさん戻す)。

「ささ! ずずずいっと入っていただいて。あ、土足で大丈夫ですよ。ドロ汚れがひどい時は入り口の水道で洗ってくださいね」
「はい」
「内装きれいでしょう! 新しい施設なので都会にも負けない設備がそろってますよ!」

 真新しい施設に驚くみんな。

「へー」
「わー」
「ここはフリースペースです。テレビを観たり雑談したり、自由に使って下さいね」

 管理人さん、あちこち指差し、

「えーと、食堂はあちらで(宴会スペース差す)、トイレはこちら。休むときはあちら、奥の部屋を使って下さい。個室はちゃんと人数分ありますからね。えーと、説明はこんなところ、ですかな……?
 何か困ったことがあれば、受付のスタッフに言ってくださいね」
「はーい」
「ご説明、感謝いたします。では、これからお世話になるスタッフの皆さんにご挨拶しましょうか!」
「よろしくお願いしまーす!」
「礼儀正しい子ばかりで、おじさんとっても安心です! 自分の家だと思ってくつろいでくださいね」
「今日は長距離の移動で疲れたでしょう。少し早いけど、ディナーにしましょうか!」
「いっぱい用意してるので、遠慮せずおかわりしてくださいね」
「はーい!」

 ということで、宴会スペースで夕食。わいわいと。
(椎茸煮付け(醤油系)、筍煮(醤油系)、こんにゃくと蓮根(醤油系)それぞれ大鉢に盛り付けて。あと助六寿司とかきんぴらとか山菜の天ぷら等々。特製ポケフーズも)

「お口に合いますかな?」
「ヘルシーなのにおいしい!」
「野菜がいっぱいなねえ。家やクレペとはまた違った風味……」
「優しい味ー!」
「ごちそうさまでしたー!」

 片付けしたところで、ブライアから、

「夜は自由行動ですが、林間学校本番は明日の朝から! 寝坊しないよう、早めに寝るようにね」
「はーい」
 宿泊スペースに向かいながら、
「林間学校ってどんなことするんだろ! ドキドキして寝られないかも!」

 それぞれの部屋に入って荷ほどきしたり。
 ヨーコ、少し休んで家に連絡していると、

「オレの部屋、むしポケモンが出た……」

 プチ騒動。静かに追い出し今度こそ休む。
 姉弟が気になりながらも眠るヨーコ。



 翌日。
 公民館前、ブルーベリー学園側とアカデミー側で向い合わせで並び挨拶。
「皆おはよう! よく眠れたかな?」
「おはようございまーす」
「はーい」

 ブライアに口々に答えるヨーコ達アカデミー組。

「本日から、ブルーベリー学園の生徒も一緒に行動させてもらうよ。自己紹介をお願い出来るかな?」

 言われ、ゼイユが、

「初めまして、ゼイユです! よそも……、アカデミーの皆さん、仲良くしてくださいね! うふふ!」

 チーン(えー、みたいな顔をしているヨーコ達)
 スグリ、ゼイユに顔を向けられ、

「スグリ……、です……」
「ふたりはこの村の出身なんで、何かあれば助けてもらってください」

 言いながら管理人さん、ゼイユ達を見て、

「ちゃんと助けてあげなさいよ」
「はぁい」
「あ……、え……」

 姉弟の反応それぞれ。

「えー、それでは、林間学校の課題を説明しますね。
 課題の内容はオリエンテーリング! 皆さんには二人一組になって、キタカミの里に設置されている3つの看板を見つけてもらいます。看板にはキタカミの昔話が書いてありますので、読んで歴史を知ってもらい、看板と一緒にふたりのツーショット写真をスマホやカメラで撮影していってください。
 3つの看板でツーショット写真を撮れたら、ミッションクリアです! いわばキタカミの歴史を探検するオリエンテーリングツアー! おじさんから長い話聞くより全然面白そうでしょ?」
「なんと! 趣向を凝らした課題ですね!」

 ほめるブライア。

「そうだ! みんなに贈り物があるんでした!」

 管理人さんからロトりぼうをもらう。

「ロトりぼう!」
「スマホロトムの乗ってくれる棒だー!」
「都会で流行ってると聞いたので、撮影の時にぜひ使って下さい! あたしが考えたナウい自撮りポーズも教えちゃいますね」
「ナ、ナウい……?」

 ブライア若干引き気味。教えてもらうヨーコ達。結構ノリノリ。少しして、

「林間学校は、学校間の交流も目的のひとつです。キタカミに詳しい人がいた方が有利な課題でもあるので、出来るだけ他の学校の生徒とペアを組んで交流するようにね」
「知らない人とペアは、ちょっと恥ずかしいな……」
「ゼイユって子、なーんか裏表ありそう」
 男の子と女の子、囁き合う。眼鏡少年は真面目に、
「アカデミーの生徒は4人、ブルーベリー学園はふたり。最低でも1組はアカデミーの生徒同士になるね」

 それぞれわいわい言う中、ヨーコ、姉弟に近づく。

「ゼイユさん」
「あんた、ヨーコって言うんでしょ?」
「はい。北條陽子です」
「へーえ、あたしらとこ・う・りゅ・う……、しにきてくれたんだ」
「まぁそういう話じゃし」
「自分から来るとは感心感心」

 ゼイユ、なんか嬉しそう。

「そうだ、昨日からスグが……、弟があんたに夢中なのよ」
「え?」

 キョトンなヨーコ。慌てるスグリ。

「ちょ!」
「家でもあんたのことばっか話してて本当うるさいったら……」
「バカ! ねーちゃん! なんで言うの!!」

 スグリ反論するも、

「誰がバカだ! 手ぇ出るよ!」
「うぅぅ……」

 ゼイユに脅され、がっくり肩を落とす。

「いっちょまえに恥ずかしがってる」
「はあ」
「この子口下手でさ、自分から言い出せないだろうし、あんた弟と勝負してやってよ」
「あ、ええですよ」

 ヨーコ、あっさり承諾。

「へーえ? あんたって意外と優しいんだ? 弟も喜ぶよ」

 ゼイユ、どことなく柔らかい笑み。スグリを見て、

「スグ! ヨーコ勝負してくれるって」
「え!?」

 持ち直すスグリ。

「わ、わやじゃ。……い、いいの!?」
「いいのいいの」
「うんうん」

 ヨーコもうなずく。

「それじゃ位置につきなよ。みんなも場所あけてやって」

 言いながら、ゼイユ離れる。

「おれ……、けっぱるね!」

 緊張しつつも嬉そうなスグリ。

「うん! うちもきばる!」

 ヨーコもうなずき位置につく。

 スグリ、オタチを出す。ヨーコ、ぴっかりさん!

「わぁー、夢みたい……! 嬉しい……、戦えんの!」

 スグリ、じーんとしながらも、

「オタチ、いくべ! シュバッとぶちあたってでんこうせっか!」

 でんこうせっか、加えてひっかく攻撃!

「ぴっかりさん、アイアンテール!」

 まるくなるでふせがれるが、競り勝ち瞬殺!

「すごい!」
「さすが!」

 ギャラリーから歓声が上がる。
 スグリの二番手、ヤンヤンマ。ヨーコはぴっかりさん続投

「けっぱれヤンヤンマ……、か、風を切って!」

 エアスラッシュをくらい、スピードスターをたたみかけられ、ぴっかりさんフラフラ。ヨーコ、ここでまんじゅうに交代。

「え、なにこれ、ヌオーに似てるけど」

 ゼイユ思わずツッコむ。

「ドオー出たー!」
「パルデアのウパーが進化した姿だよ!」

 ゼイユにギャラリーが解説する。

「パルデアのポケモン、わやじゃなぁ! けど!」

 ヤンヤンマでんこうせっか! しかしまんじゅう平気のへいざ。どくづき&ヘドロウェーブで至近距離までさそいこみ、

「がんせきふうじ!」

 効果抜群かつ急所に当ててで勝利!

「わやじゃ……」

 スグリ感嘆。みんな駆け寄ってくる。

「ナイスファイトー!」
「交流試合お疲れさま! 青春がストライクだね!」

 ブライアと共に、スグリもはしゃぎながらやってきて、

「にへへ、弱点さいっぱいつかれた。それにあんなとこさ当たるなんて……。……やっぱわやじゃ! 強い! ヨーコ強い!」
「スグはあたしの次くらいに強いのになかなかやるよね」
「……むぅ」

 ゼイユに言われてむくれるスグリ。
 ゼイユ、ヨーコを見る。

「オリエンテーリング……、だっけ? 二人組でやるやつ。あんたさ、あれ、スグとペア組んであげてよ」
「え!? ……ダ、ダメ!」

 またまた慌てるスグリ。ゼイユにらむ。

「なーにがダメよ! あたしら組んでも意味ないし、ヨーコ以外のよそ者とやんの?」
「それは……、うぅぅ……」

 再度肩を落とすスグリ。

「これ照れてるだけ。あたしはテキトーにやるから、弟のことお願いね」
「あ、はい……」

 管理人さん来る。

「スムーズにペアが決まったようですね! それではみなさんのスマホロトムに看板の場所を登録しましょう!」

 マップ登録。

「それでは、オリエンテーリング開始でーす! キズぐすりやモンスターボールなど、道具が入り用になった時はあちら、桃沢商店で買い物してくださいね!」
「はーい」

 みんなで返事すると、スグリ、ヨーコに恐る恐る、

「……あ、あの」
「ん?」

 振り向くヨーコ。

「看板さ……。村の西のりんご園の先、ともっこプラザから行くのがいい……よ! 近いし、順番通りでわかり……やすい」
「うん、ありがとう」
「おれ、迷惑さ……かけるし、離れて、ついていくから……」

 先に行くスグリ。

「いよいよ林間学校オリエンテーリングの始まりだ! せっかくのキタカミ旅行、存分に満喫しなくてはね」
「はーい」

 他のメンバーもペアを組む。

「ほっとけないし、ペア組みましょ」
「よーし、看板探しながら、見たこともないポケモン探すぞ!」

 女の子と帽子の男の子がペアに。

「それじゃよろしく、よそも……、フツーな男!」
「よろしく、ゼイユさん!」
 ゼイユは眼鏡少年と。

 ヨーコ、ぴっかりさんを出しスグリが行った先を目指す。



 リンゴ園の道、アップルヒルズを歩くヨーコとぴっかりさん。
 ついでに近くにいた娘さんに勝負を申し込まれる。

「あなたってパルデアの人ですよね?」
「はい、ほうですけど」
「しょ、勝負お願いします!」

 ぴっかりさんで瞬殺。

「これがパルデア流! 都会の人と戦えて嬉しいです! ありがとうございます!」

 ともっこプラザという広場へ。看板を見つけるヨーコ。すると、

「看板さ、1つめ……」

 横からスグリがやってくる。

「スグリさん」
「ピカチュ」
「ご、ごめんな、驚いた? い、言ったべ、おれ離れてついていくって……」
「あ、うん」
「看板さ読むんだっけ。あ、おれ、内容知ってるから……、ど、どうぞ」

 ヨーコ、看板の文字を追う。

「──『むかしむかし、キタカミの里に恐ろしい鬼がおったそうな。鬼は村の裏山を根城にし、山へ入った人を驚かしておった。
 ある日怒り狂った鬼が、山より下りて村の者は恐れたが、偶然そこに居合わせたイイネイヌさま、マシマシラさま、そしてキチキギスさま、3匹のポケモンたちが、命をかけて鬼を山へと追い返したそうな。
 勇気ある彼らを、村人は親しみを込めてともっこと呼び、亡骸を丁寧に埋葬しその上にともっこの像を建てた』……」
「……向こうの広場に、ともっこ像建ってんだ」
「ともっこ像……」
「それよりも、この伝説……、鬼さまがかっこいいべ?」
「え? うーん、ほ、ほうかねえ……」

 ヨーコ、思わず首をかしげてしまう。

「えー! だって鬼さまは仲間もいないのに、ひとりで複数の敵を相手にしたの、わや、かっこいいべ!」
「あー、なるほど、そがなことなら……」
「あ……、普通は怖いのか……? でも怖がらなくても平気。おれ、小さいころ何度もひとりで夜山さ入ったけど、全然鬼さま会えなかったもん。大人らにわや怒られただけ……」
「ありゃあ」
「えっと……、看板と写真撮んだっけ。おれスマホさ持ってねえから、……お願いしてもいい?」
「もちろん!」

 ふたりで看板前でパシャリ。

「きれいに撮れてる。写真、上手……」
「スグリさんも撮ってみる?」
「ご、ごめん、そんなつもりじゃなかった。けど……、今度……うん」

 スグリ、頬をかきながら、

「林間学校とか、こういうの本当はやりたくなかったけど、ちょっと楽しい……、かも。里の自然、歩けるし……、ヨーコになら……話せるし。
 よ、よかったら、ピクニックしてサンドウィッチとか……」
「アギャア!!」

 突然のミライドン。

「ミライドンさん!」
「ピッカ!」
「どひゃ!? な、何だ!? こ、これ……、怪獣!?」
「ああ、この子はミライドンさん。うちのライドポケモンさんじゃ」
「ミライドン? ライドポケモン? こんなポケモンっこ今まで見たことね……。サンドウィッチって言葉さ反応して出てきたって……?」
「アギャス」
「サンドウィッチ大好きなんよ。おにぎりも好きじゃけど」
「はー、こんなわやなポケモンっこさ、会えるなんてすごい」

 スグリ、ぽつりと、

「……ヨーコは特別なんだ。だから……、強いんだ」
「え……?」
「……次! 次の看板はキタカミセンターって施設の敷地内。キタカミセンターへは、こっから村に戻って、橋をわたって山登んだ」

 すぐに行くスグリ。

「また……離れてついていくから」
「アギャ……?」

 気にかかる様子のミライドン。

「うん……」
「ピカ……」

 スグリの後ろ姿を見送るヨーコとぴっかりさん。ともっこ像を見に行ってみる。

「なんかちょっと不気味なねえ」
「ピーカ」



 ひとまず村に戻り今度は反対側の舞出山道へ。すると脇の草原に見覚えのある人影が。

「ジニア先生!?」
「どおも! ヨーコさん! 林間学校楽しんでますかあ?」
「なしてここに!?」
「えへへ……、ヨーコさんの様子を見に来たんですよお! これでも担任ですからねえ。ついでにキタカミのポケモンも調査してましてえ……」

 ジニア先生、ハッとして、

「……わあ、すみませえん! 調査に集中するあまり、会いに行くのすっかり忘れてましたあ」
「ありゃあ」

 ずっこけるふたり。

「そうだ! おわびにピクニックをプレゼントですー。こんなこともあろうかと、クラベル先生からテーブルとか借りてたんですー」

 ということでのんびりピクニック。

「サンドウィッチもどうぞー、食べてくださあい」
「ええと……」

 キハダ先生サンドのトラウマがよみがえるヨーコ。ぴっかりさん達は普通に食べている。

「……形は変ですが、味は保証しますよお」
「いただきます」

 ヨーコ、食べてみる。

「あ、ホントじゃおいしい。ごちそうさまでした」
「普段あまり外に出ないので、フィールドワークは疲れますねえ。ヨーコさんのように宝探しで世界を駆け回ってるの、本当にすごくて尊敬しちゃいますー」

 と、ジニア先生のゴクリンがバスケットに向かって鳴く。

「……おや? バスケットに何か入ってる?」
「ありゃ、もしかして」
「じゃじゃじゃじゃあん! バスケットの中からポケモンのたまごが登場ですー! ゴクリンしかいないのに、タマゴが入っているなんて不思議だなあ」
「なして……? あ、もしかして先生入れました?」
「えへへ……、ヨーコさんにはバレバレでしたかあ。ぼくが持ってきたタマゴですー。
 ピクニックで見つかるポケモンのタマゴ! ポケモン使いさんが引き取れない場合はアカデミーに寄贈してもらってアカデミー内で育てていたんですが……、各地の優秀なトレーナーさんたちに育ててもらうのもいいなあと持ってきてたんですねえ。
 ……というわけで、ヨーコさん、どうぞ!」

 タマゴをたくされる。

「わぁ、タマゴ。あったかいですねえ」
「えへへ……。キタカミまで来てタマゴ渡すのも変ですが、ヨーコさんなら安心ですからねえ」
「なんか照れくさいです」

 と、さっそくぴしり。

「「ん?」」

 ポッチャマ誕生!

「わぁ、かわええ! わっぷるさんと同じ鳥のポケモンさんじゃあ!」
「いやあ、普段は歩いて孵化させるのに、突然誕生なんて、ヨーコさん達に会いたかったのかなあ?」
「えへへ……。よろしくね、ポッチャマさん」
「ポチャ」
「ひとまず、名前つけんとね。おとんぼ……、末っ子の、オトちゃん!」
「ポチャ!」

 うなずくオトちゃんをボールに入れる。

「ところで、ポケモン図鑑アプリ、こっちでも使ってくれてますかあ?」
「はい、もちろんです!」
「キタカミ図鑑はキタカミの里のポケモンを見つけると埋まっていきますー。僕はこのあたりでフィールドワークしてますので、ポケモンに出会ったらぜひ声をかけてくださいねえ」
「はーい!」

 オリエンテーリングの続きへ。
 山道を歩いていき、ピクニックしていた人に椅子を作ってもらったりしてキタカミセンターへ。

「クレペのお社に似とるねえ」
「ピーカ」

 お祭りの準備にわくわくしながら進み、看板を見つける。
 眺めているとスグリが。

「看板さ2つめ、ちょっとわかりづらいよな」
「ありゃスグリさん」
「ご、ごめん……。後ろつけてっから、お願いだから慣れてな……?」
「あ、うん、ごめん……」
「さっそく看板さ読むべ」

 ヨーコ、引き続き読む。

「──『鬼は不思議な4つのかがやく面を持っておった。かぶる面によって、鬼が振るう棒の力が変わったそうな。
 碧の面をかぶれば枯れた植物を生き返らせ、赤の面をかぶれば、ろうそくの火をごうごうと燃やし、青の仮面をかぶれば川の流れを塞き止め、灰の面をかぶれば、硬い岩もやすやすと砕いた。ともっこたちは倒れ際、三つの面を奪い、鬼の力をほとんど封じたとされる』……」
「ともっこたちが奪ったお面は、キタカミセンターに保管されてる。村のみんなは怖がってっけど、おれ、鬼さまのこと……、好きだ。
 強いし……、かっこいいし、人間から仲間外れにされてもへっちゃらーって感じで、小さい頃から憧れてて……」

 スグリ、少しうつむく。

「おれも、鬼さまみたいにかっこよくなりたい」

 ヨーコを見て、

「学園でも、おれのこと、ねーちゃんが全部なんとかしてくれるし……」

 キリリとした顔つきになる。

「ひとりでもがんばれるようになりたい……。おれ、ちゃんと一人前になって、鬼さまと、……友達になれたらいいな」

 優しく見守るヨーコとぴっかりさん。

「……スグリさん、かっこええね」
「ピーカチュウ」
「え……、あ、えっと……、そうだ! 写真撮らなきゃだべ! 今回もヨーコ、撮影お願いなぁ」

スグリ、照れて大慌て。

「うん、まかして」

 パシャリ。

「やっぱヨーコにまかせてれば安心だ。それじゃ次の看板は……」

 スグリ、ふと何か思い出したように山の方を見る。

「……そういえば、鬼さまが住むって言われてる鬼が山はあそこから登れんだ。ヨーコ、よかったら鬼さまの家、行ってみない? 恐れ穴って呼ばれてんだ」
「うん! 行ってみたい!」
「や、やった! ヨーコにも見て……、もらいたかった」
「スグリさんの話聞いとったら、鬼さんのこと気になってきたんよ」
「嬉しい……。ここ、ずっと登っていけば地獄谷。その前に標識があって、曲がれば恐れ穴行けっから。
 そ、それじゃ、先行ってる。気ぃつけて来てな」
「うん、ありがとう」

 ひたすら山道。登っていると看板が。それを参考に細道を歩いた先にスグリがいた。

「スグリさーん」
「ヨーコ! せまい道大丈夫だった?」
「うん、なんとか」
「あそこが恐れ穴。鬼さまが住んでるって言われてる。……何度来ても会えたことねえけど」
「ほー、ここが……」
「もしかすっと、強い鬼さまは勝負してると現れたりして……」

 スグリ思い付いたように、

「そ、そうだ……。あれからおれ、ちょっと強くなったし、よければ勝負さ……、したい」
「ええよ! しよう!」
「やった! まっ、負けないようけっぱる!」

 一体目、ニョロモ。ヨーコ、ぴっかりさん。

「こ、今度はちゃんといい勝負にする……!」

 アイアンテールをかますもかわされ黒いきり。もう一発やるがはずしてしまい、霧の中からマッドショット。はたくをくらったところをすかさずお返しにかみなりパンチ。効果抜群!

「どうじゃ必殺技!」
「一撃がでっかい! こんなに持ってかれんだ!?」

 2体目オオタチとわっぷるさん。みずのはどうを放って持っていくも、勢いであなをほるを使われ追撃不可能。くらう。すぐにアクアカッター。しかしでんこうせっか。
 掘ったあなに向かってみずのはどう。フラフラになってでてきたところをけたぐり! 見事に急所に当て勝つ。

「わっぷるさんお見事!」
「ひえ。今の攻撃、ヒュンッてなっちまった」

 3体目ヤンヤンマ、ヨーコ、まんじゅう。
 エアカッターをうけるが、

「切り返すで! まんじゅう、ヘドロウェーブ!」

 スピードスターとかち合い勝利。お互い回復させながら話す。

「うぅぅ、負けちまった。やっぱヨーコつえー。どうすれば勝てんだろ?」
「スグリさんも攻撃のキレ、ようなっとるよ」
「にへへ……。鬼さまもどっかで見てたら、あの子つえーって思ってるよ」
「ほうかね?」
「おれが通ってるブルーベリー学園ってな、ポケモンの勝負さ学ぶのに特化した学校なんだけど」

 スグリ、なんだがつぶやくように、

「ヨーコくらい強かったら、一番……、狙えるかも」
「え?」
「──さ、鬼さまの住んでる穴っこ入ってみんべ」
「あ、うん」

 穴に入るふたりを、岩の陰から何かが見ている。

「頭、気ぃつけて」

 穴蔵に入る。

「ここが……」
「暗いしせまいし、地面もゴツゴツ……。こんなとこでひとりで暮らしてたらかわいそう。鬼さまおれん家だったら、いつでも住まわせてあげんのに……」
「ふふ、スグリさんは優しいね」
「そ、そんなこと、ない……よ! おれ、鬼さま好きだから……。で、でも本当に鬼さまがうち来てくれたら、村中大騒ぎになりそう」

 外に出ると夕方。

「わやじゃ、もう日が暮れてる」
「本当、早いねえ」
「看板めぐり、残りは明日にしよ」
「うん」
「……そうだ! 今日からキタカミセンターでオモテ祭りさ始まんだ」
「ああ、準備しとりんさったねえ!」
「みんなお面かぶって参加するお祭り……。いやならいいけど……、よかったら……。行くと……、楽しい……」
「楽しいそうね。行きたい!」
「う、うん! 行こ……っか! お、おれ……、案内……、するよ! 本当に楽しみ……」
「お願いします!」
「オモテ祭り行く前に準備あっから、先、おれん家行こう。おれん家は村の北西……で、ええっと……、地図は……」
「はい、スマホロトム」

 ヨーコ、スマホロトムを出す。

「あ、スマホロトムって地図も見れんだよな。目的地ってのに登録……? するべ」
「お願いしまーす」

 ポチっとな。

「アプリで地図さ見れるの、わや便利じゃ……。おれもいつかスマホロトムさ買ってもらう! おれん家まで後ろついてくからお願いな」
「うん」
 顔を見合せ笑うふたり。
 それからふたりでペコリと頭を下げて穴を去る。
 その様子を、やはり何かが見ていた……。

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