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season1 3話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)

3.『生意気男子、一人と一匹』


 灯台にいた人物がこちらに気付く。アカデミーの制服を着た青年だった。

「アイツは……」

 謎ポケモンに駆け寄る青年。

「何でいる!?」

 叫ぶ青年に、呆然とするヨーコとネモ、ぴっかりさんに、

「……オマエらに言ったんじゃないさ」

 ネモ、首をかしげて、

「きみ、確か、文系クラスのペパー……だっけ?
ポケモン博士……、フトゥー博士の息子さん」
「……父ちゃんは、関係ねえ」

 気色ばむペパー。ヨーコに向かって、

「それより、このポケモンがなんでいるんだよ? どうしてこの姿に!?」
「うちもようわからんのですけど、そこの崖の下で会うて、うちとぴっかりさん……、うちのピチューを助けてくれたんです」
「ピーチュ」

 ネモも説明してくれる。

「不思議な鳴き声を調べてたら、ヨーコが崖から落ちちゃって、そしたらこの子が助けてくれたの。形が変わる前は、ものすごく強かったんだよ!」
「……だろうな。この姿じゃ戦えねえさ。ミライドンの本当の姿は、戦ってるときのフォルムだからな」
「ミライドン……?」
「ミライドンって、この子の名前? 何で知ってんの?」

 ?を浮かべるヨーコとネモ。一方、ドアに向かって鳴くミライドン。

「アギャギャス!」
「研究所には入れねえよ、鍵かけたからな」
「研究所?」

 聞くヨーコ。ペパー、ヨーコに向き直り、

「オマエ、見かけない顔だけど、その制服は……、うちの学校の生徒かよ」
「今日転入します。北條陽子です。この子はうちの相棒ぴっかりさん」
「ピチュ!」

 ペパー、自分は名乗らないまま、

「……ミライドンは普通のトレーナーが扱えるポケモンじゃねえ」
「どういうポケモンなの?」

 少し黙り、ネモは無視して、フン! とヨーコに鼻を鳴らすペパー。

「ミライドンの世話が務まるか、オレが試してやろうか?」

 ちょっと戸惑いながらも、黙ってうなずくヨーコ。かすかに笑うペパー。

「へへっ、意外とやる気マンマンちゃんだな。
──モヤモヤ気分……、晴らさせてもらうぜ!」

 というわけで流れでポケモン勝負。ペパーはホシガリスを出す。

「ヤなヤツのこと思い出しちまった。……落とし前、つけさせてもらうぜ!」
「ようわからんけど、ぴっかりさんお願い!」
「ピーチュ!」

 でんきショックを浴びせるもなかなかガードの固いホシガリス。噛みつかれるが、そこをねらってなかよくする&とどめのでんきショック。

「……ちょっとはやるみたいだな」
「よう頑張った、ありがとうね」
「ピッチュー!」

 もらったキズぐすりで治してやるヨーコ。当然! な態度のぴっかりさん。

「ヨーコ、ぴっかりさん、ナイスファイト!」
「捕まえたばかりのポケモンじゃ、話にならねえか」

 肩を落とすペパーだが、すぐに、

「ミライドンつれていくなら、コレ持ってけ」

 ヨーコにボールを渡してくれた。

「アイツを制御するモンスターボールさ」

 ヨーコ、眺めてみるが、なんの変哲もない。

「だから、なんでそんなの持ってんの?」

 ネモの質問に一瞬黙り、やっぱり無視するペパー。

「やっとボール、手放せたぜ。……じゃあな」

 そして走り去っていく。

「ちょっと! シカトしすぎじゃない!?」

 怒るネモ。でも手を降って呼びかける。

「……学校、ちゃんと来なよー!」

 ヨーコに向き直り、

「おかしなヤツ」
「うーん……」

 と、見守っていたミライドンが駆け寄ってくる。

「あんたミライドンさん言うじゃね。うちはヨーコ。この子はぴっかりさん。これからよろしゅうね」
「ピチュ!」

 挨拶するヨーコとぴっかりさん。ミライドンも元気にお返事。

「アギャス!」

 ボールに戻るミライドン。腕を組むネモ。

「でも、なんか知ってそうだった。今度会ったら、勝負して問い詰めてやろうね!」
「そ、それは、うーん……(汗)
ひとまずお休みしようか!」
「そうだね灯台! 上から学校見ようよ」



 灯台に上ってみると、コサジとクレペが見える。

「初めて来たねえ」
「ピーチュ」
「ヨーコ、見て!」

 ネモのところに来ると、壁に囲まれた街が見える。

「あれがテーブルシティ!」
「すごい! 大けー……」
「でしょ? ヨーコと勉強できるの、今からすっごく楽しみ!」
「うちも!」
「いっぱい学んで、もっともっと勝負しようねっ!」
「あ、うん」(汗)
「灯台からの景色すっごいでしょー!
見渡す限りの山! 草むらに森! この自然の中、いろんな場所でたくさんのポケモンが暮らしてる」

 眼下に野生ポケモンがちまちま見える。

「……うん!」
「……さて! 見ての通り、まだまだ先は長いんだ。ひとまず道中のプラトタウンを目指しましょー!」

 ということで、眼下の小さな町プラトタウンへ。
 灯台を降りて橋を渡り、ポケモンセンターで回復させる。不思議なマシンがある。

「あれ、このマシンは?」
「わざマシンマシン! 最近出来たんだ」
「名前のまんまじゃね?」
「LPっていう、ポケモンリーグが発行してるポイントとポケモンの落とし物で作れるんだよ! LPはお金代わりにも使えるんだ。どっちもいっぱい持ってるから、分けてあげるね!」

 スマホロトムの通信再び。

「ありがと。そういえばLPとかマシンとかのこと、お父さんが言うとった」
「ヨーコのお父さま、リーグで働いてるの?」
「うん。法律のあれこれをやるとこにおりんさるん」
「法務部かー、かっこいいねー。勝負好きかな?」
「いや、それは苦手言うとった」
「残念!」



 プラトタウンをゆっくり歩き、門へとつながる坂道へ。

「あ、そうだ、クスノキ饅頭食べよ」

 ネモやぴっかりさん、わっぷるさんと食べながら歩く。

「色んな味が口の中に広がる~」
「クレペの名物のひとつよ。クスノキシティから来た人が多いけ、そん人達が作ったんじゃと」
「クスノキシティって、確か襲撃事件があった……」
「うん。うちとうちのお母さんのお父ちゃんお母ちゃんも、それで死んだ」
「あ、ごめん……。って、お母ちゃん?」
「ああ、お母さん達とうちは血がつながっとらんの。うち、元々クスノキシティの生まれなんじゃけど、事件でお父ちゃんとお母ちゃん死んで孤児になって……。その後、お母さん達と出会うてこっち来たんよ」
「ごめん、辛い話させて」
「ええよ。今とっても楽しいし!」
「ありがと。持つべきものは友達だね!
それなら改めて言わせて! ヨーコ、パルデアへようこそ!」
「ありがと、じゃお近づきの印にもうひとつ……」

 と饅頭を取り出すと腹ペコのウパーが飛び出してきて饅頭をとっていく。
 しかし少しとろいため、すぐに他のポケモンにとられる。
 ポケモンを追い払うヨーコ。

「それはそん子にあげたもんじゃ!」

 ヨーコ、ネモとうなずきあい、

「はい、どうぞ」
「うぱ?」
「ええよ、食べんさい。おいしい?」

 うなずくウパー。

「どろぼうはいけんよ、わかった?」
「ウパ」

 ウパーと別れてから、目をつけていたらしい野生のホシガリスやグルトン達に一斉攻撃を仕掛けられるヨーコ達。ネモも苦戦。
 しかしウパーが助太刀に来てくれる。その隙をついてネモがパモで攻撃。追い払う。
 どや顔しまんじゅうをねだるウパー。苦笑しながらも残りのひとつをあげる。

「うちらと来る?」
「ウパ」
「あんたまんじゅう好きじゃけ、まんじゅうって呼んでええ?」
「ウパ!」

 ヨーコが投げたボールへ。仲間がまた増え、ついにテーブルシティの門に。
 隣のポケモンセンターで回復し、ウパーを出すとすっかり元気に。

「仲間も増えたことだし、勝負して試してみようよ!」
「うん、ええよ」
「やったー! それじゃあヨーコ、実りある勝負をしよっ!」

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