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#エンタメ小説
Unlocker! 美女の扉と少年の鍵
バーの照明が消えたのかと思った。
「貴方がミカルね」
油臭い水を啜っていた少年……ミカルは、遥か頭上から降る低い声で初めて、自分を呼びつけた女性によって灯りが遮られているのだと気付く。
女性という前置き無しに、巨きい。2mはある。加えて羽織ったロングコートの乾いた煙の香に、無意識に少年は緊張していた。
新聖暦333年。階層都市【アリアドネ・ヘプタゴン】。最下層。
11月だが、そこは地獄のように
バングズ・サイレンサーズ
オフィス街の外れ。週末。夜。
事前の規制・誘導が奏功し、自動車と人々の音は遠い。今やこの通りは、対象と我々しかいない状況に整えられていた。
猫背気味の姿勢を不意に正し、不自然な周りの様子にようやく気付いたらしい対象は、我々を振り返る。
「遠山カナトさんですね。厚生省、消音課の王村です。こちらは同じく沼藤。ご同行を願います」
「なっ、サイレンサーズ……本当に存在していたのか」
「ええ、噂を聞いてい
バーン・ザ・ユナイテッド 第一話 アバンタイトル
「はっはぁ! 逃げろ逃げろぉ!」
様々なゴミと空調の室外機の排気で煙るほど臭気の漂う路地裏。OL風の女性が必死で逃げ、それを異形の男がわざとゆっくり追いかけていた。
「まずは足をもらう。今テコテコ走ってるその裸足の足を指から一個ずつもいでいく! 次は肩から千切って、それでお前を縛ってやろうか。痛みで気絶するかなぁ、起きるかなぁ」
がなるような、言い聞かせるような様子で、その異形は楽しげに言う。7腕