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  • ひとを騙すときしか嘘をつかない主義~つれづれ夜話~

    大昔に民俗学とか国文学とか現代民話とか虚実の狭間ををふらふらしていた、いろんな意味で境界線上のひと。 リハビリ代わりにポチポチと更新しようと思っております。

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ひとを騙すときしか嘘をつかない主義~つれづれ夜話~⑥

第六話 被る わりとたくさんな人に関わるお仕事でごはんをいただくようになって、けっこうな年月になる。 人と関わるお仕事なので、当然いろんな人と会うわけだが。 ……まあ、「縁起の悪い」人ってぇのはわりといるとこにはいるもんで。 ほんっとうに、そんなことに割く労力が余ってるなら、なんか他のことにまわしてよ、と思う。 たぶん、世界が救えるぞそれで。 私は人間ができていないので、そう考えているのがはみ出たりたれてたりしていて、それも縁起の悪い方々のお気にさわるんだろう。

    • つれづれ夜話 拾遺 ①

      ~「父の知人」のこと~ 「つかれる」中で私をいきなり叱っては延命十句観音経を唱えさせたり、アクセサリーをふんじばったりしている「父の知人」。 この人とも相当長いお付き合いになるのだが、ああいう書き方をすると、どう考えても私が 「怪しい拝み屋のオッサンを出入りさせているヤベー家のヤベー女(洗脳済み)」 にしか見えなくなるなと読み返して思った。 やだほんと文章って難しい。 実家がある意味「ヤベー家」なのはもうしょうがないにしても、「知人」については確かに怪しいオッサンで

      • ひとを騙すときしか嘘をつかない主義~つれづれ夜話~⑤

        第5話 つかれる  霊感というより「零感」のはずなのだが、奇妙な経験をすることがなんだかよくあるもので、今までに何度か、ほんとうに納得いかない目に遭っている。  学生時代、北陸某地方の大学に進学した友人を訪ねた。夏休みの後半のことだ。  数日アパートに泊まっていたのだが、帰宅後、昼夜が逆転してしまった。自覚はなかったのだが、その他の言動もなんだかおかしかったらしい。  そんな状態が1週間くらい続いた。  そんな折、父の知人にいきなり怒鳴られた。 「おまえ一体、どん

        • ひとを騙すときしか嘘をつかない主義~つれづれ夜話~④

          第四話 続 呼ばれる 「七つまでは神の内」という言葉があって、どうやら昔はそれくらいまでの子供は、いとも簡単にあの世に帰っていってしまう──つまり、あの世に近しい存在だったらしい。  七五三を済ませてようやく人間になる、と聞いたことがある。  あれは、そういう意味で神様にお伺いを立てて、許しを得る儀式なんだそうだ。  これは私の七五三より前の話になる。  父方の曽祖父は実子に恵まれず、妹に婿を取って夫婦養子にして家業を継がせ、また養女を迎えてそこにも婿を取った。家業

        ひとを騙すときしか嘘をつかない主義~つれづれ夜話~⑥

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        • ひとを騙すときしか嘘をつかない主義~つれづれ夜話~
          7本

        記事

          ひとを騙すときしか嘘をつかない主義~つれづれ夜話~③

          第3話 変わる 今から十数年前。 父が亡くなって一周忌を迎える頃のこと。 父との思い出をまとめてみようかと思い立ち、暇を見つけてはパソコンに向かっていた。葬儀に参列してくださった方々に小冊子にして配ったら、父を偲ぶよすがにしていただけるのではないか、などと殊勝なことを考えた……ということにしておこう。 職業人としてはかなり多忙で、家をあけることも多かったが、わりと子煩悩なところはあったかもしれない。思い返せば、なかなかにいい話なんじゃないのかな、ということもぽろぽろ

          ひとを騙すときしか嘘をつかない主義~つれづれ夜話~③

          ひとを騙すときしか嘘をつかない主義~つれづれ夜話~②

          第2話 忘れる ずいぶん前のこと。 少しだけ民俗学の緣っこを歩いていた時期がある。 都市伝説とか、現代民話だとか言われる領域だった。 そこでほんの少しの間、語り部のようなことをしていた。その時の話だ。 いちばんのめり込んでいた時期には「ひとり百物語」ができると豪語していたくらいには、話のストックがあった。しかし、メディアや記録媒体に残っているのはほんのわずかだ。 自分の持ちネタをワープロでまとめていたら、さる方々から 「そういうのは語りでないと」 と言われて、そこから私

          ひとを騙すときしか嘘をつかない主義~つれづれ夜話~②

          ひとを騙すときしか嘘をつかない主義~つれづれ夜話~①

          というわけで、リハビリ代わりに、思い出した「嘘つけこの嘘つき野郎」的な話を、書いていってみようと思う。 お付き合いいただければもっけの幸い。 第1話 呼ばれる おまえは夜泣きのひどい子だったと母は未だにぼやく。 「あっちだ、あっちだって指差して。寝付いたかと思ってそっと回れ右するとすぐ起きて、また『あっち』って泣く」 一歳ちょっとくらいの夏の頃だと言う。それがしばらく続いたらしい。重くて往生したそうだ。 実はその記憶がある。 白い寝間着の母の背で、泣きながら暗い並木の

          ひとを騙すときしか嘘をつかない主義~つれづれ夜話~①