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スーパーの卵焼き

ラジオの彼は今日も平常運転の日常報告。
私といえば、昨日買った卵が3個ばかりパックの中で割れているのに気がついて、朝から卵焼きを焼いた。
普段は卵ふたつにだし汁で作っているのが今日は三つ。だし汁も気持ち増やしたけれど、いつもより少し硬めに出来た。
「半分は晩御飯で食べよう」
いつもの卵焼きとちょっと違う卵焼きは少し他人行儀な気がした。
「もう、ホント、影響受けすぎだわ」
小さなラジオに向かって文句を言ってみた。

「で、昨日の話なんだけど…」

珍しく早々に曲をかけたと思ったらNEWアルバムが出るとのこと。
ひと通り宣伝をしたら、語りのトーンがいつものそれに戻った。

「NEWアルバムもだけど、今までの歌でショートドラマを作る企画というのがあってその情報もね解禁が許されたんだけど、おかげでちょっと忙しくてね。夕飯が惣菜になることが続いているんです」
「で、昨日の話なんだけど…」
「いつも行くスーパーに閉店間際に入って惣菜コーナーに向かったんです。いつもと違う時間のせいか惣菜の種類が違ったんですよ」

「残り物とか言っちゃいけない」とスタッフに釘刺す。

「50%引きのシールがペタペタ貼られていて、この子たちは残ったらどうなるんだろう?と、何だかみんな買って帰りたくなった。で、その中に卵焼き、厚焼き卵があったんです。葱入りの。それは迷わず籠に入れて、あと、マカロニサラダと、きんぴらごぼう。これはね、たまに買うの。ひとり暮らしで作ると何日も食べなくちゃいけない量ができるし、一食分だけと考えるとお惣菜の方が断然安い」

聞きながら「うんうん」と頷いた。
ポテトサラダはじゃがいも一個をチンして作れるけど、案外マカロニサラダの一人分は難しい。

「あとね。サワラを焼いたものとノンアルの酎ハイっぽいのを買って帰った」
「今ね、いろいろ考えなくちゃならないことがあって、おいそれと飲んでられないんすよ」
「え?ショートドラマの件とは別に。うん。まぁ、新しいこと。いやいや、まだまだ情報解禁というわけにはいかない話」
「ともあれ、昨日はその惣菜の厚焼き卵でノンアル晩酌だったんですが」
「うん、そう。その卵焼き、少しレンチンして食べた。いつも焼きたて食べているから、やっぱりあったかいのがよくて。でね。そのお味が・・・普通だったんですよ」

あら?

「美味い不味いでいったら、美味しいんだけど、なんつーのかな?家庭の味?僕でも焼けそうな。でもね、やっぱり自分の焼く卵焼きとは違うの。すんごく違うというわけじゃない。少しね、僕のより柔らかいかな?うん。味もね、好みの味だけど、なんだろう?『うわっ!何これ、美味しい!』じゃないの。なんつーの?友だちンちの卵焼きって感じ?」

なんかわかるような気がする。
さっき自分で焼いたのもそんな感じ。
美味い不味いじゃなくて、なんかちょっといつもと違うな…って感じ。
まぁ、お惣菜じゃないけど。

「お値段分というか。あ、割引き前のお値段ね。卵焼きはどうしても卵買って作った方が安い。特に僕は特売卵だから」
「でも、この値段だったら卵焼き買ってもいいかな?という値段でそれがまた半額だったからね。うん。まぁ、また昨夜みたいに『今夜は焼く元気ないかも』な時は買って帰ってもいいかな?って感じ。でも、あそこで厚焼き卵見たの初めてだったんだよね。鮮魚コーナーの手巻き寿司用の卵焼きは見るけど。あっちは高いよね」

なんかまた細かいこと言ってるなぁ。
それにしても、いつもとちょっと分量を変えただけで卵焼きの食感が変わったり。同じような味でも違ってしまう卵焼きって、案外デリケートな料理なのかもしれないなぁ。