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カラフルおじじ

おじじは、黄色い帽子にピンクのフレームの眼鏡をかけている。服装は上下ともジャージで蛍光色の緑だ。靴はシルバーのコンバース。何より電飾マントが派手に光る。薄暮は、とりわけファンタジー。不審者このうえないが、事情を知る町の人々は皆親切だ。今日もカラフルおじじは〝あの日〟と同じ時間・場所へ出向く。商店街を抜けた先、どこにでもある県道。ビカビカに光るマントが、ゆっくり横断歩道にゆれる。信号待ち。運転席のあいた窓から、微かに金木犀の香りがしたという。

「今年も君が丹精した金木犀が咲いたよ」。

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