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夢の国。それは人の幸せを感じられる場所。

まだ少し肌寒さが残る3月のことだ。私はとある用事から千葉県を訪れ、帰りの夜行バスをディズニーランド外のバス停近くのベンチに座りながら待っていた。(ちなみに私は、バスの乗車のために立ち寄っただけでディズニーランドには行っていない。)

22時のバスだったが、そのとある用事で失敗をしてしまい、すっかり疲れ果て、意気消沈してしまっていたため、16時30分頃からゆっくり本を読むふりをしつつ、心の中で自分へ反省を行ないながら待つことにした。

小雨が降り出し、あたりが暗く夜に近づいていくうち、ディズニーランドからバスで帰路につく人たちがだんだん集まってくる。

20時30分頃には、バスに乗る人たちが大勢集まってきていた。それと同時に雨脚も強くなり、屋根のある場所を求めて人が移動してくる。幸い私は屋根の下にあるベンチに座っていたため、移動する必要なく過ごすことができた。

そんな中、親子4人組の方たちが私の座るベンチの前に移動してきた。私は隣に置いていた荷物を移動し、自分の膝の上に置き直した。お母さんとみられる方が。「ありがとうございます。」とお礼を言う。私もぎこちない笑顔を浮かべながら頭を下げて答える。(私は突然の出来事にとっさに反応することが苦手である。そのため、とっさに声を出すことができなかった。私だって、笑顔で「いえいえ、おかまいなく。」とか言ってみたい。)

だがしかし、そのベンチは大人3人が座るのが精一杯である。そのため、お母さんと子供たち2人はそのベンチに座り、お父さんはベンチの横にスーツケースを倒して置き、その上に腰かける形となった。

「なんだか悪いことしちゃったな。私がいなければ家族みんなでベンチに座れたのにな。」と、ほんの少しの罪悪感を抱きつつ、また本に目を戻す。

本に目を落としていると、そのお母さんお父さんと子供達の話し声が聞こえてきた。「楽しかったね、また来ようね」「うんまた来ようね」。お父さんが買ってきた夕飯をみんなで食べている際も「これ美味しい!」「そう?あっ、ほんとだ、おいしい」というような声も聞こえてくる。ほんとうに他愛ない、家族間のおしゃべりだ。だが、なんだかそれが、その時の私にとってはとても心地良かった。

そこで、ふと周りを見渡してみる。すると、周りにいる高校生たちや家族づれ、友人同士、カップルの人たちみんなが、それぞれ楽しそうに幸せそうにおしゃべりをしていた。


私は人混みが苦手だ。いろんな人の様々な感情が入り混じり、会話が聞こえてくる空間で気持ちが悪くなってしまうのである。

だが、バスを待っていたそこでは、不思議と気持ちが悪くならなかった。それどころか逆に、とても心地よい気持ちになったのだ。きっとそれは、人びとから負の感情を感じることがなかったからだろうと思う。

多くの人がディズニーランドで、大切な人たちと幸せな時間を過ごす。

その幸せをまとったまま、人々は帰路につく。

大粒の雨が降りしきり空気が冷え込んでいく中、その場所だけが、温かく幸せな空気に満ち溢れていた。

わたしの落ち込んでいた気持ちも、いつの間にか、なんだか温かく幸せな気持ちへと変わっていた。


夢の国、それは人の幸せを感じられる場所。

たとえ気持ちが沈んでいたとしても、そこの人々の空気に触れるだけで心が温かく幸せな気持ちになる。

気分が落ち込んだらまた行こう。

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