見出し画像

18 コラム:響きと振動

これまでの記事一覧(トップページ)はこちら→


ホワイトノイズ

 音響学の先生の話。

「管楽器の発音の仕組みはとても複雑で、どうして鳴るのか、科学的にはよく解っていません。しかし、その仕組みは共振であるということだけは、はっきりしていて、パイプオルガンのように構造の単純なものは、だいたい解っています。」

 パイプオルガンのパイプ(共鳴筒)をはずしてみると、そこで鳴っているのは「ホワイトノイズ」です。ホワイトノイズ(白い雑音)とは、「サー」と聞こえる音です。すべての色の成分を含んだ光の色が白であることとの類比で、こう呼ばれるホワイトノイズは、すべての周波数の振動を含んでいます。

 そこにパイプがセットされると、その筒は、自分が共振する周波数の音(管の長さによって決まる)と寸分違わない音だけを正確に選び、響かせるのです。ここで注目すべきことは、振動をつくる吹き出し口の側に決定権があるのではなく、共振をするパイプのほうに音の決定権がある、という事実です。とても驚くべきことです。言い方を変えると、振動をつくる側が、管に固有の共振周波数と少しでも違った周波数の音を出したら、管は鳴ってくれないのです。

 管楽器において、「唇やリードが鳴るのではなく息が鳴る感覚が大切だ」と言われるのが的を射た表現であることが良く分かります。このイメージを持つことにより、楽器を吹くのがとても楽になります。

 昔からの、『息がツボに当たって音になる』という感覚がしっくりきます。

「響きの成分」と「振動の成分」

 管楽器の音色について考える時に、「響きの成分」と「振動の成分」を意識するとうまくいくと言われます。両者のバランスは、まさに演奏者の個性そのものです。同じことを、「ひびき」と「芯」と言う人もいます。豊かに広がる音の「ひびき」と、その核にある確固とした音の「芯」。これらの要素は、千変万化する音楽の表現にピッタリ合った音色をつくり出すことに直結しているのです。

 まず、「響きの成分」についてご説明しましょう。

 唇が振動しないフルートでは当たり前のことですが、他の管楽器でも、「唇やリードを振動させずに」楽器から音が出る感じを味わってみることができます。

 金管楽器の場合、透明のマウスピースを使って演奏中の唇の様子を観察することができます。中低音の弱音を吹いている時には、上下の唇の隙間が大きく開き、息がのびのびと通っているのにびっくりします。しかも、奏者には唇が振動している感覚がほとんどありません。リードの木管楽器でも中低音の弱音を豊かな音で響かせて吹いている時には、同じイメージで演奏できています。

 この時、楽器に吹き込まれている息の振動成分はホワイトノイズで、これこそが「響きの成分」なのです。ホワイトノイズの中から、楽器は管体の物理的特性に応じて共振可能な音を選び出し、共鳴します。それが、その楽器に特有の豊かな響きをもたらします。

 皆さんも楽器を手に取って、中低音の弱音を出す練習をしてみてください。これにより、「響きの成分」で楽器が鳴ることを実感できるようになります。


 さて次は、「振動の成分」についてご説明しましょう。

  「響きの成分」の練習に続けて、クレッシェンドしてf(フォルテ)に移行します。息の速度が早くなるのにつれて、上下の唇(リード)が引き寄せられ、隙間が狭くなります(ベルヌーイ効果)。結果として、唇(リード)の振動が意識されるようになります。これが「振動の成分」です。楽器に吹き込まれる息の振動の成分が増えるにしたがって、音色は安定した「芯」のある音へと変化します。

 このように、音を「響きの成分」と「振動の成分」に分けて捉えることで、音色をコントロールするテクニックの習得が容易になります。美しく響く柔和な音色、シッカリと芯のある安定した音、固く鋭いスタッカートやマルカート……。それらの間にある無限の音色を操れるようになるわけです。

 私が今、執筆を進めている書籍、シリーズ『管楽器を100倍楽しく吹く方法 ─ 呼吸法・発音法編』では、音色と呼吸法の関係について、「響きの成分」を「一の呼吸」、「振動の成分」を「二の呼吸」と捉えています。

*「響きの成分」は感情表現系:「一の呼吸」
*「振動の成分」は演奏安定系:「二の呼吸」
*レガート系・声楽系:「一の呼吸」
*スタッカート系・器楽系:「二の呼吸」

 「響きの成分」と「振動の成分」の意識が呼吸法のテクニックと一体になった時、管楽器奏者は自由自在な表現力を手にするのです。


→ 次回へ続く



コメント、お問い合わせはお気軽にどうぞ!

Q&Aはこちら

♪ 亀谷彰一 公式ウェブサイト
https://www.media-stage.net/tb/

トロンボーンを習うなら♪
音楽大学 / 自衛隊 / 中学・高校・大学吹奏楽部 / アマチュアオーケストラ/ プロトロンボーン奏者への指導実績が豊かな、亀谷彰一へ。
個人/団体レッスン喜んで承ります。
対面/オンライン指導、両方対応が可能です。
noteの練習法で悩んだ時も、ご相談はお気軽に!
お問い合わせは直接、下のフォームからお送りください。
📧 https://ws.formzu.net/fgen/S313329698/

♪ 出張コンサート喜んで承ります♪
日本全国、コンサートの企画・演奏はお任せを!
ご相談は直接、下のフォームからお送りください。
📧 https://ws.formzu.net/fgen/S313329698/

#管楽器 #演奏 #呼吸法 #肺活量UP
#吹奏楽  #音楽
#トロンボーン #トロンボーンレッスン #亀谷彰一

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?