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『北北西に曇と往け』

心に爽やかな風が吹くマンガに出会った。『北北西に曇と往け』。

誰かからのおすすめではなく、棚の面出しで手に取った作品(三茶ツタヤの品揃えは本当に素晴らしい)。ロードマップにミステリーの要素を加えた旅マンガだ。

くもを「曇」と書くだけあって、清々しいアイルランドの風景をミステリーが時々曇らせながらストーリーが進んでいく。数少ない山登りの経験でピーカンじゃなくて曇りのほうが天気がめまぐるしく変化して楽しかったことを少し思い出しながら読んだ。

軽くあらすじを書くと、主人公は日本人の少年で、親戚が住むアイスランドで生活中。居候のため、探偵業で生活費を稼いでいる。音楽をかけられない(オンボロの)ジムニーで駆け回り、お腹が減ったらアイスランドの豊かな食べ物(主に肉)で英気を養い、雨や雪の日は家でコーヒーを飲みながら本を読む。ちょっと変わっているのが車や電化製品と話せること。

日本、特に東京では土に触れることも少ないし、先の大地震や台風を思い返しても自然災害は単なる「わざわい」でしかないと思うことが多いけど、アイスランドの自然を知ると、実は恵みの側面も大きいんだとリアルに気付かされる。自然のエネルギーを上手く利用している国だから。

最近はアウトドアや旅が生活と距離を縮め始めている(日本は若干強引に市場をひっつけようとしている感がある)けど、アイスランドはすぐそこが自然だから、生活の道具は必然的に実用性を求められる。物語の中でもアウトドアのアイテムが ”自然に” 生活で使われていて、アウトドアブランドの人間としては、ほう、と感心する。しかも主人公はどうやらカリマーのリュックサックを愛用してくれているという嬉しさたるや。

第2巻を中心にアイスランドの風土や文化が丁寧に紹介されていて、レビューでは「アイスランドに行きたくなる」との声が多かった。たしかにたしかに。そもそもアイスランドはプレート(大地)が生まれる場所で、プレートが沈み込む日本とはまったく違う世界だ。そこで主人公が話したこんな言葉がある。

「自然の力が強すぎて 生命が歓迎されてない」
「賢くないと 知恵で生命が許される隙間をこじ開けないと」

コンクリートとビルだらけの環境でもそう思う。いくら自分たちを守るためのものを作ったって自然には勝てないし、最後には己の知恵と判断力で生きるしかない。それを身につけるために、広めるために、私はアウトドアの世界の扉を叩いたんだ。

現在単行本は3巻まで販売中。2020年1月発売の続刊が待ち遠しいです。


本を買って、いろんな方に貸出もできればと思っています。