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【全日本実業団山口ハーフマラソン2021展望①・設楽悠太・佐藤悠基・塩尻和也・伊藤達彦ほか】

伊藤&設楽、10000mとマラソンの日本歴代2位選手がエントリー
佐藤らニューイヤー駅伝で快走した選手も多数出場

 全日本実業団ハーフマラソンが2月14日、山口市の維新百年記念公園陸上競技場を発着点とする21.0975kmのコースで行われる。男子には佐藤悠基(SGホールディングス・34)、設楽悠太(Honda・29)、塩尻和也(富士通・24)らの五輪代表経験選手が出場。そこに昨年日本人トップの古賀淳紫(安川電機・24)、10000m日本歴代2位の伊藤達彦(Honda・22)ら成長著しい若手選手が挑戦する。


 また、高久龍(ヤクルト・27)、川内優輝(あいおいニッセイ同和損害保険)、藤川拓也(中国電力・28)ら、2週間後のマラソン出場を予定している選手たちの走りも注目される。

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●優勝候補はオリンピアン3選手と伊藤

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10000mとマラソンの日本歴代2位記録を持つ2人が出場する。
 伊藤達彦は27分25秒73で12月の日本選手権10000mで2位。東京五輪の参加標準記録を突破した。同じレースに日本新で優勝した相澤晃(旭化成・23)が代表に決定している。伊藤も今年5月の日本選手権の結果次第で代表に入ることができる。
 伊藤の特徴はレベルの高い練習を当たり前のようにこなすこと。12月の取材では

ペース走なら10秒後から、インターバルなら5秒後からスタートします

と話していた。

 ニューイヤー駅伝はエース区間の4区(22.4km)で区間16位と不発に終わったが、昨年の箱根駅伝はエース区間の2区(23.1km)で、相澤とともに区間日本人最高を上回った。全日本実業団ハーフマラソンでもう一度、ロードでも強さを見せたい。
 マラソンに2時間06分11秒を持つ設楽悠太は昨年故障がちのシーズンを送り、ニューイヤー駅伝にも間に合わなかった。東京五輪代表を逃した時点で、その後は海外のマラソンを中心に走るプランだったが、コロナ禍で予定通りに行かなくなったことも逆風となっている。
 リオ五輪には10000mで出場した設楽。ニューイヤー駅伝4区では3回区間賞を取り、そのうち2回は区間新という韋駄天ぶりを発揮してきた。ハーフは得意とする距離だ。今大会で再起のきっかけをつかみたい。
 Hondaの2人に対抗する力を持つのが佐藤悠基と塩尻和也、2人のオリンピアンだ。
 佐藤も11年と12年にニューイヤー駅伝4区で区間賞と快走し、今年、9年ぶりに4区区間賞を取る快挙をやってのけた。12月の取材時には4区区間賞とともに、ハーフマラソンの59分台を目標に挙げていた。

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塩尻はニューイヤー駅伝5区(15.8km)で、区間3位ではあったが2位を引き離す好走で、富士通の優勝に大きく貢献した。専門種目はリオ五輪に出場した3000m障害だが、10000mも、ロードの20kmも走れるマルチランナーが特徴の選手。大学3年時(18年)に10000mで27分47秒87と当時の学生歴代4位のタイムをマークし、4年時の箱根駅伝では2区の区間日本人最高記録を更新した。
 だが一昨年9月に大ケガをしたためブランクが生じ、昨シーズンはまだ全開の走りではなかった。駅伝で復調を示して臨む今大会で、塩尻本来の走りが見られるのではないか。

●招待選手3人の特徴は?

 優勝争いを演じる候補は上記4選手だけではない。前回日本人トップの2位となった古賀淳紫もそのひとり。2年前のニューイヤー駅伝7区(15.5km)で区間賞をとって注目を集め、全日本実業団ハーフマラソンでさらに存在をアピールした。
 優勝したルンガル・ジェームズ(中央発條)には届かなかったが、アフリカ選手や格上の選手たちがいる第2集団から、20km手前で抜け出した。鳥栖工高(佐賀)から入社して5年目のシーズンでのブレイクだった。
 前回のタイムは1時間00分49秒。日本選手では大会歴代2位記録になる。今年はニューイヤー駅伝3区(13.6km)で区間3位と好走した。“2年連続”に挑む準備はできている。


 その古賀に前回1秒差と迫ったのが鈴木大貴(YKK・26)だった。東京国際大で箱根駅伝を走っているが、目立った成績はまったく残していない。しかし全日本実業団ハーフマラソン後には10000mでも28分15秒57まで記録を伸ばし、今年のニューイヤー駅伝1区(12.3km)でも区間7位と、徐々に実績を積み上げている。
 そして古賀、鈴木とともに今回招待選手になったのが、37歳の中村高洋(京セラ鹿児島)だ。名大出身でフルタイム勤務のランナー。とにかく全日本実業団ハーフマラソンに強い選手で、以下のような成績を残してきた。

17年13位(日本人9位)
19年9位(日本人6位)
20年8位(日本人6位)

 10000mやマラソンのシーズンベストでは100位前後のレベルだが、ハーフマラソンは20年日本人10番目である。
 古賀、鈴木、中村の招待選手3人の走りにも、大いに注目したい。

●注目のマラソンランナーたち

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 マラソン選手では、東京五輪代表候補選手(従来の補欠選手)の大塚祥平(九電工)が、MGCの成績は4位と最も良い。19年までは2時間10分12秒が自己記録で、スタミナ型のマラソンランナーだった。だが20年12月の福岡国際マラソンでは2時間07分38秒で2位。スピードも上がっているのは明らかで、ハーフマラソンでどんな記録を出すかが注目される。
 また今大会には、2週間後のびわ湖マラソンに出場を予定している選手が多数出場する。
 自己記録では高久龍が2時間06分45秒(日本歴代4位)で最も良い。だが、12月の福岡国際マラソンを故障で欠場し、びわ湖は試合感覚を取り戻すことをテーマにするという。
 藤川拓也と岡本直己(36)の中国電力コンビもびわ湖マラソンに出場する。昨年は3月の東京マラソンで、2人とも2時間8分台の自己新で走った。今は藤川が好調で、びわ湖で2時間6分台も期待できるという。


 二岡康平(中電工・27)は19年世界陸上ドーハ大会マラソン代表だった選手。ドーハ後は左脚の腸脛靱帯や大腿裏に痛みが出ることもあり、良い走りができていない。今大会とびわ湖できっかけをつかみ、再浮上したい。
 そして注目したいのが河合代二(トーエネック・29)である。12月の日本選手権10000mでマークした27分34秒86は日本歴代6位、マラソン選手としては日本人最速タイムである。
 上記選手たちが2週間後のマラソンに向けてどんな走りをするか。そこをチェックできるのはファンにとってはうれしい。
 五輪イヤー最初の個人種目で全国ナンバーワンが決まる大会になる。
 伊藤のように10000mで五輪代表を狙う選手もいれば、今大会をマラソンにどう結びつけていくかを考えて走る選手もいる。ニューイヤー駅伝で好走した勢いでタイムを狙う選手も、駅伝の失敗から再起を期す選手もいる。
 色々なポジションの選手が、それぞれの目的で21.0975kmを走る。

TEXT by 寺田辰朗 写真提供:フォート・キシモト


2月14日(日)午後2時 TBS系列


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