「黄金の国」ショートショート
人類の進化。それは同時多発的に起きた。
今までの、人間がヒトとして誕生した時も、そうだったのだろうか。今までにない新しい人間が、世界各地に生まれ始めたのである。
人々は進化というと、頭脳や運動能力、または体の一部に通常の人よりも優れた部分がでるものだと思っていたが、進化とはそういう目立つものではなかった。
なぜならその進化は、服さえ着てしまえば隠れてしまう部分の進化だったからである。
そのため、進化した人と従来の人の区別は、服を脱がなければ出来ず、日常に大きな変化もなく、その進化は浸透していった。
その進化は、排泄部にあった。
確かに人が生きていくためには、排泄はなくてはならない誰もが持っている器官である。
進化はそういう、必ず人が使う部分から始まるのだろうと、多くの人が納得した。
排泄の方法は、従来の排尿と排便である。
だが、新しい人間の排泄は、違った。
新しい人間の排泄は、「玉」が股の間にある肛門に似た穴から排出されるのだ。
尿とも便とも言えない、排泄玉。
それも排泄玉は綺麗な球体なのであった。
どうやら、その人が食べたものや水分が、玉の色に直結しているらしく、野菜食が主の人は緑色の玉、肉を主として食べている人は赤い玉がでるらしい。もちろん、野菜も肉も食べる人がほとんどのため、緑と赤の美しく混ざり合ったクリスマスカラーの排泄玉が多く存在した。
そんな排泄玉であるが、通常は普通にトイレで流して良いものとして社会に溶け込んでいるが、どうやらそれを好む人たちがいるらしい。
そのため、排泄玉はダークウェブで高値で取引されていた。
排泄玉を出した人間に価値を見出す人、排泄玉の美しさに魅了された人、買う人は様々らしい。
人々の生活に、排泄の進化が浸透していった。
数年経ったのち、ダークウェブ上で話題になった国がある。
それは「黄金の国」と呼ばれた。
ダークウェブ上を見るに、
「良質な黄金の玉を所持している国」
という事らしい。
その国は、日本だった。
かつて、「黄金の国ジパング」と呼ばれた国は、「黄金の玉の国ジャパン」として、密かに国際問題に発展していくのだった。
どうやら、排泄の進化した人に無理やり金や、金箔を食べさせ続けると、黄金の玉が排泄されるらしい。
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