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薬局経営の財務戦略とM&Aの手法

起業家兼薬局経営者の海老沼です。

前回、MBAで学んだことを
薬局経営にどう活かしたか?
を記載しました。

財務に関しては一部省略していたため
今回は財務と薬局のM&Aの考え方について
まとめていきたいと思います。

※独学なので、間違えていたらすみません。
 あくまで一般論なので
 もっと個別最適な方法もあるかと思います。

前半では薬局の財務の考え方
後半ではM&Aという流れです。


1.財務の考え方

薬局の財務の考え方を
簡単にまとめると
下記のようになります。

変数が多いと数式が複雑になるため
前提条件として、市販薬は考えず
『処方せん医薬品』の枠内で整理しています。


1-1.調剤薬局の売上とは?

売上は
処方箋単価✖️患者数になります。

単価を上げるには
後発品加算や地域支援体制加算などを
算定することです。

短冊の内容を参考に国の方向性を見ながら
各種加算を算定していく必要があります。

患者さんによって単価のバラツキが多いため
薬局業界では
技術料】で評価する傾向があります。

患者数に関しては
近隣医療機関や立地に影響され
薬剤師でコントロールすることが難しいので
処方箋1枚がどれだけ重要か?
という視点を持つことが現場では大事ですね。

1-2.薬局運営でかかってくる費用は?

費用の部分は
薬剤費の割合が大きいです。

コストインパクトが大きい分
薬価差益を取ることも重要ですし
不良不動在庫を如何にして出さないか?
ということも重要です。


人件費は
薬剤師、調剤事務が主になると思います。

薬剤師の人件費は地域によって異なり
薬剤師が不足している地域では
薬剤師の単価が高い印象です。


地代家賃も重要な固定費になります。

都心か?地方か?車両を持つか?
で地代家賃(駐車場代)も変わってきますね。


その他経費は下記費用項目が想定されます。

システム代
消耗品費
通信費
水道光熱費
接待交際費 
燃料費
減価償却費 など

売上から費用を引いた部分が
営業利益になります。

営業利益を出すために
闇雲にコストを下げることが
経営にとって良いとは限りません。

例えば、薬剤の原価(仕入れ)を下げるため
薬価差益の大きい薬に変更していくと
薬を変えたくない患者さんもいるので
現場薬剤師の対応が大変になります。

また、人件費を抑えることで利益が増える一方で
一人当たりの業務量が増えることになり
社員のモチベーションが下がり
離職率が増えます。

経営者は現場目線で
コストコントロールすべきだと思います。

また、成長が見える人材や
適切なポジションを担える人材には
どんどんお金を投資した方が良い
と思います。

1-3.財務まとめ

数字の部分はマスキングしますが
冒頭であげた図の売上/費用の部分を
下記のように月次でまとめています。

上記項目以外に
初期に投資したお金や銀行からの借入金
銀行へ返済するお金もあるので
下部にキャッシュフローの動きを
連動させていきます。

この数式を立てることで
どのくらいお金が必要なのか?
キャッシュの流れを予測することができます。

財務視点を持ちながら
現場で働いている薬剤師こそが
経営者目線で考えられている
良い薬剤師だと思います。

2.薬局のM&A

財務状況を参考に
薬局の事業価値
を評価していきます。

2-1.ファイナンスの考え方

そもそもファイナンスには
一般的に3種類の手法があります。

純資産法:残っている資産の価値
DCF法:将来どのくらいキャッシュを生み出すか?
類似会社比準法:他の薬局との比較

薬局の仲介業者の方とは
主にDCF法ベースで話し合うことが多いです。

DCF法はDiscount Cash Flowの略で
将来に渡って事業がどのくらい現金を生み出すか?
を計算します。

厳密に算出することは難しく
簡易的な計算としては
営業利益✖️〇〇年分+非事業用資産
という計算になります。

ただ、自然災害で薬局を運営できないことや
近隣のクリニックの医師が引退されて
薬局を運営できなくなるリスクを考えると
将来、確実に現金が入ってくるわけではないです。

将来的なリスクを考え
一定の割引率が設定されます。
※薬局業界では10%の設定が多い気がします。

【DCF法の計算式】
事業価値=(1年目のFCF)/(1+割引率)+(2年目のFCF)/(1+割引率)²+(3年目のFCF)/(1+割引率)³+...

FCF:フリーキャッシュフロー

2-2.抑えるべき論点は?

よくご質問頂くのがM &Aの部分です。

ヌケモレなく抑えているわけではありませんが
下記事項を抑えることが大事かなと思います。

・いくらで事業譲渡するのか?
・人を引き継ぐのか?
・不動産の契約は?
・医師が何年くらい診療を継続する予定なのか?
・ステークホルダーとの関係性

最初に事業譲渡金額がどのくらいか?
M&Aの仲介に払う手数料はいくらか?

また、従業員を引き継ぐのか?
人件費がそのまま固定された場合
事業の運営が継続できるのか?

家賃はどのくらいかかって
どのような賃貸借契約書の内容か?

近隣の医師があと何年診療を継続するのか?
それによって、将来に渡って入ってくる
収入が変わってきます。

上記はお金の論点だけですが
実際には人の問題が多く
人とお金をセットで考える必要があると思います。

良い人材は残したいですよね。

3.考察

薬局の財務の考え方から
薬局の事業評価方法を
ざっくりとまとめていきました。

財務でロジカルに考え過ぎても
やらない理由ばかりでてきてしまうので

財務はあくまで
こうやったら会社は死ぬよね?
というリスクヘッジ程度で良くて

最後は経営者の想いで
エイヤーでやるのが良いと思います。

実際には財務では予測できなかった
たくさんの出来事が起こりますから。
本当、会社経営って難しいなと思います。

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