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不穏な空気

悪事を察する母の勘の話

不穏ってほどのことでもないけど異様な空気というのか。
目覚めて 早朝の物音にそれを感じた。
なぜこんな朝っぱらに。

いま 息子のタカは27歳、娘 ソラは25歳。
この子達がまだちびっこだった時のおはなし。

ただ起きてなにかしている音ではなくて
なんだか ずるーい音がする。
こっそりこそこそしている感じが漂っているのだ。
階段を降りて廊下をそーっと
カチャカチャ
カチャカチャっと聞こえてくる方へと向かう。
犯行現場はお風呂場だ。
もうなになになにしてるのー?
まったくなにこそこそしてるのー?
ちょっと苛立つが
「こらー!」なんて声は出さず私もこっそり忍び寄る。

親玉のタカ。
なんとなく これは悪いことなのだと感じつつも優しいボスからの誘いの言葉に乗ったソラ。
ふたりはバスタブ内で丸めた背中をこちらに向けてしゃがみこんでいた。
ご賞味中だ!

叱る気は失せる。
なんてかわいい。

これは悪いこと。
ってわかっててやってるもんだから
警戒もしつつ御堪能してたに違いないが
きっと背筋には悪寒が走りまくり振り返ったのだろう。
「お椀かい」
なんて怒るはずの母親に笑顔で言われたのだから
ビックリしたけどホッとしてニヤニヤしていた。

浴槽の中で
ブルガリアヨーグルト プレーン400gをお椀に分け合い仲良く食す姿。
トッピングなし。

ちゃんと器も持ってったんだねー
したけど お椀よりガラスの器の方が美味しそうな気がするけどそんなのなんでもいいよねー
それどころでないもねー
なんて思ったけど
もしかして厳選した結果のお椀だったのか。

あぁ。なんてかわいい悪事。
可笑しくてたまらなかった。
隠れてまで食べたかったのかなー?食べたいって言えなかったのかー…ちょっと切なくもなった。
こういった何かが起こる時
勘がはたらく時は空気が違う気がしている。
常に一緒にいる家族は特に 家の中の情調が乱れた感じ。
母親の勘、女の勘は ほぼ間違いない。
今度は女の勘の話もしようと思う。



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