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ふりかけ

ワタクシが子供の頃、良く【三角食べ】と言う事が言われていた。味噌汁・ご飯・おかず…と言うような順番で、ひと口ずつ口に入れよ…と言う事である(これの繰り返しが三角型を為すので【三角食べ】)。
これを守らずにおかずばかり食べたり(逆も然り)それが祟ってご飯を残そうものなら、親からきつくカミナリを落とされたものだ。

ところで、これは人にも寄ろうが、実はこの三角食べと言う食べ方は健康にとって甚だ宜しくないらしい。
汁物・おかず・ご飯を均一の間隔で胃の腑に落とすと、それだけご飯に由来する炭水化物と結びついた栄養素…糖分の吸収が早まり、血糖値に悪影響を与えてしまうと言う訳だ。
近頃ではこうした傾向を啓蒙する為に【ベジファースト】と言う概念が提唱されている。
先ずは野菜を食べ、次に動物性蛋白質を胃の腑に落とし、ご飯は最後に食べる…と言う食べ方である。
野菜は食物繊維が豊富だ。そして食物繊維には糖の吸収を緩和する働きがある。ベジファーストを実践する事で血糖値上昇を少しでも抑制しようと言う訳である。
因みにご飯を白米から麦ご飯や雑穀米に変えると更に効果があるが、多少予算が嵩む。

それはともかく、ワタクシは子供の頃からこの三角食べと言う食べ方が苦手だった。しばしばおかずばかりバクバク食べては親に叱られたものだ。そうして残ったご飯を片づける為に、ワタクシは良くふりかけの世話になった。メーカーに拘りはなく、特に好きなふりかけは鮭味とたらこ味だった。こうした、ご飯に合わせる添えものとしては他にも海苔の佃煮やお新香なんかが挙げられるが、ワタクシは俄然ふりかけ派だった。

そんな【ふりかけ好き】が高じて、ひとり暮らしを始めて何年かの間、オリジナルのふりかけを作るのにハマっていた時期がある。
市販のふりかけ数種を購入してブレンドするだけの事もあれば、塩鮭やちりめんじゃこをカラカラになるまで炒って混ぜる事もあった(因みに塩鮭から作るふりかけは、今は亡き母方の祖母直伝である)。白胡麻と削り節でおかかふりかけを作ったりもした。
ところがある日、ワタクシがふりかけ作りにハマっている事を知った当時の友人が、穢らわしいものでも見るような顔つきでこう宣った。

「何だよ男の癖に手作りふりかけとか。気持ち悪い」


興醒めしてしまったワタクシは、それ以後ふりかけ作りをふっつりと辞めた。そしてそれ以降、随分長い間、ワタクシの食卓からふりかけは消える事となった。

今はその友人とも行き来が途絶えてしまい、祖母も御仏の許へ旅立って久しい。ワタクシは高血圧・高血糖を医師に指摘されるようになり、ベジファーストを心掛け、何なら普段の食事に麦ご飯やオートミールが顔を出す機会が増えている。
…前述の友人と関係が切れた事もあるのか、はたまたベジファーストでご飯を食事の最後に廻す機会が増えたからか、近頃は再びふりかけを恋しく思うようになった。
またあの頃を思い出し、オリジナルのふりかけを作ってみようか。少なくとも今現在、ワタクシがふりかけを作る事を否む奴は居なくなった訳だし。

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