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取り留めもないワニの話

最近、ストレス緩和の一環として、YouTubeの動物関連の動画を幾つか視聴しているのだが、その中でワニの捕食に関する動画が複数上がっているのを良く見かける。 

ワニは御存知獰猛な肉食動物である。 
肉であれば生き死にに拘りは無く、また種類を問わず何でも平らげる。 
映像にはシマウマやガゼル等の大型植物食動物を捕食するモノから、ドブネズミや魚等の小形動物を食べる映像、変わったところではカメを食べる映像や、ロードキル(交通事故で死んだ動物の屍体)の処理にワニの食欲を利用しているモノまであった。
カメを食べる時は、あの強力な顎にモノを言わせて堅牢な甲羅ごとバリバリと噛み砕く豪快さである。ガノイン鱗と言う、極端な話【金属質】な鱗を持つアリゲーターガーでさえ、ワニの顎の前には無力だ。 

ワニは昔からその頑丈な皮革に利用価値が高く、海外では古くから養殖が盛んである。
しかも肉は食用になる。鶏肉に似た味わいでコラーゲンを豊富に含むと言われる。 
その上、人間が出すゴミの内動物性蛋白質系の生ゴミは殆どがワニの餌として利用可能な為、東南アジアではワニ養殖場そのものが【生ゴミ処分場】としての側面も持っている。 

ワニが生ゴミを食べても食中毒にならないのは、ワニの消化液が極めて強い事と、ワニの細胞に想像を絶する免疫力がある為である。何でもワニの細胞に含まれる免疫力は、抗生物質による消毒が効かなくなった毒性の強いサルモネラやビブリオは言うに及ばず、難病中の難病である後天性免疫不全症候群の病原菌でさえ苦も無く分解してしまう程の強力さだとか。 
この為、最近では皮革や肉だけではなく、難病治療の研究にもワニが利用される可能性も示唆されている。 

何でもビジネスになってしまう最近の日本の事だ。 
近い将来、日本でも温暖な地域や温泉の豊富な地域でワニ養殖が事業として成立してしまう…かも知れない。ハードルは高いと思われるが(因みにワニは日本に於いては学術的理由が無い限り飼育出来ない【特定動物】に指定されている)。
嘗ては日本各地にあるワニ園がその役割を果たしていたようだが、現在これらの施設の主旨は寧ろワニと言う動物の保護活動へとシフトしつつある。 

若し日本でワニ養殖が可能になったら、日本には生ゴミの他にもワニの餌に使えそうな資源がある。 ブラックバスやブルーギルなどの魚類、ミドリガメ、ウシガエル等の外来生物である。 

日本に棲息する大半の外来生物は元々、愛玩用や食用として日本に持ち込まれたモノが多い。その一方で、これらの外来生物は原産国でワニの食卓における多彩なメニューの一角を為している。 
ブラックバスやブルーギルについては、動物園で魚食性の鳥の餌として利用が試みられたが巧くいかなかったと言う経緯があるのを聞いた事がある。特にブルーギルは骨が多く、鳥に与えても小骨を嫌がってあまり食べなかったらしい。
だがワニならば、強力な顎と強力な消化液の力で小骨程度なら苦もなく消化してしまう筈だ。 

現在、これらの外来生物は駆除として捕獲されても殆ど利用価値が無いまま殺処分されているようだが、若しも日本でワニ養殖が本格化したら、外来生物の活用法として極めて有効な手段の一つとなるかも知れない。

附記

何と、現代の日本でワニ養殖に果敢に挑んだ人物、或いはこれから挑まんとする人物が存在する事を知った。 

一例を挙げる。静岡県西部・湖西市には使われなくなったウナギ養殖池を改修し、ワニ養殖場を作ってしまった御仁がいる。既に肉を一部店舗に出荷しているそうである。 
湖西市は割と温暖な地域なので、恐らく外気から隔絶された温室程度の施設で十分ワニが飼える筈である(勿論脱走しないよう堅牢に作る必要はあるが)。良い場所に目をつけたものだ。その慧眼には感服するしかない。 

しかもワニは温度管理と安全さえ考慮すれば、飼育自体は割と容易なのである。 唯一の難点は、成長するのにかなり時間がかかる事位か。 
餌は主に廃鶏を仕入れてミンチにして与えているようである。
この御仁がワニ養殖を思い至ったそもそもの切っ掛けが、業者に高い料金を支払って廃鶏の処分をする養鶏農家を見て「勿体無い」と思ったからなのだとか。 

こうした成功例を受け、日本各地でワニの養殖を夢見る人々が増えているようだ。前述した通りハードルは高いが、実現に至った際の利益は莫大な筈だ。
もしかしたら、近い将来日本のマーケットの肉売り場にワニの肉がパック詰めされて並んだり、ワニの免疫細胞を活用した難病治療薬が認可される日も来るのかも知れない。

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