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なぜ、気仙沼でサメの街として有名なのか?

結論:マグロのはえなわ漁でとれ、全国の8割のサメが気仙沼に集まる。サメは余すところなく全身が利用されている。


気仙沼といえば、サメ

気仙沼はサメの水揚げ量が日本一。日本の8割のサメが集まります。国内の半分のサメが集まる街と言っても過言ではありません。気仙沼で水揚げされるサメのうち、ヨシキリザメが80%、モウカザメが15%ほど水揚げされます。

ちなみに、サメは、関西でフカ、山陰でワニと呼ばれています。

今回は、なぜ、気仙沼はサメが有名なのか?という疑問を掘り下げます。

気仙沼でなぜサメが多くとれるのか?

三陸海岸にある気仙沼

気仙沼は三陸海岸にあります。三陸沖は黒潮と親潮がぶつかる潮目にあたります。さらに、山々が近く、川が山の栄養を海へ運びます。栄養を求めてプランクトンが集まり、さらにプランクトンを求めて小魚、小魚を求めて大きな海の生物が集まります。潮目には暖かい海にすむ魚、寒い海にすむ魚がやってきます。

マグロの延縄漁でとれる

元々、気仙沼はマグロのはえ縄漁が盛んでした。はえ縄漁は等一度に数百~千個もの針を垂らして釣ります。マグロだけではなく、メカジキやサメも一緒に釣れます。メカジキも気仙沼の名物です。日本全国の72%ものメカジキが気仙沼で水揚げされます。メカジキの背びれの付け根の部分は、見た目からハーモニカと呼ばれ、煮つけにして食べられています。

サメは全身ムダなく利用できる

サメは捨てるところがなく、全身を無駄なく活用できます。皮はワサビのおろし金など革製品、頭は骨や歯を工芸品として利用されます。肉はかまぼこ、はんぺん、ちくわなどの練り物で使われます。サメの肉は高タンパク、低脂質の食材として注目されています。ヒレは、フカヒレとして食べられ、肝は化粧品、骨はコンドロイチンという薬に使われます。心臓は市場に出回らず、気仙沼など漁港辺りでしか食べられない貴重な味覚です。

冬の味覚、フカヒレ

黄金色の透き通った糸がフカヒレです。フカヒレはコラーゲンのカタマリで、フカヒレ自体に味はありません。フカヒレはコリコリ、プルプルの食感を楽しむ食材。 気仙沼は日本一のフカヒレの産地でもあり、世界にも知られています。

フカヒレの歴史

フカヒレは中国南部の広州で明の時代から食べられていました。中国では、太陽を食べると体に良いという考えがあり、ツバメの巣に並ぶ高級食材でおもてなしで利用されていました。

胸ビレ、背びれ、尾ひれが食べられ、姿煮にすると美しいことから、尾ひれが人気です。

日本では、江戸時代から中国への輸出用として作られています。江戸時代、干しなまこ、干し鮑に並ぶ貴重な輸出品で、金銀銅と同じほど価値がありました。

フカヒレが食べられるようになるまで

三陸地方の冬は奥羽山脈、北上高地で季節風の湿気をとります。山を越えて乾燥した冷たい風が吹き、晴天の日が多いです。11月から作り始めて、1ヶ月以上、乾いた冷たい風と日差しを浴びてヒレを乾燥させます。

乾燥したフカヒレには、皮や骨がついています。一晩水につけてフカヒレを戻し、熱湯で煮て皮をはぎ、硬い繊維、筋や糸を取り出します。さらに、生姜、ネギを加えて、紹興酒と水で煮込みます。ヒレから出る脂、アンモニア臭をとるまで水を変えながら煮込みます。

サメをとってから1ヶ月以上の年月と手間ひまのかかる高級食材です。

気仙沼でサメを食べた

フカヒレ

フカヒレといえば、姿煮が一般的です。気仙沼市内では、姿煮だけではなく、寿司、ラーメンなど、さまざまなメニューで提供されます。あさひ寿司では、フカヒレ寿司が食べられます。姿造り、甘酢漬け、煮こごりの三種類。姿造り→煮こごり→甘酢漬けの順に味付けの薄い方から食べることをオススメされました。3種類とも優しい味わいで、フカヒレ自体は味がなく、コリコリ、プルプルの食感を楽しむ食材でした。

左から姿造り、甘酢漬け、煮こごり

サメ肉

気仙沼魚市場で、サメ肉を揚げたクリスピーシャークを食べました。あっさりした食感で噛みしめると、ジューシーな肉汁も感じられます。まるで鶏胸肉です。

心臓も刺身、煮つけなどにして食べられます。レバーのような濃厚さが口の中に広がります。

気仙沼シャークミュージアム

気仙沼魚市場内に気仙沼シャークミュージアムがあります。
美ら海水族館、アクアワールド大洗でもサメの展示はあります。しかし、日本でサメ専門の博物館は気仙沼シャークミュージアムのみです。

シャークミュージアムには、サメの生態、世界中に生息するサメの種類、生態を学ぶことができ、ヨシキリザメの模型、さまざまなサメの歯、アゴの骨は圧巻です。

サメより恐ろしい人間

500種類のうち、ホオジロザメ、イタチザメなど人を襲う可能性のあるサメは40種類程度に限られています。サメは、ヒトが好きだから襲うのではなく、食べ物だと判断したものは、なんでも襲います。海外で年に数回程度、サメによる死亡事故を聞きます。しかし、自動車事故や落雷に比べると、死者は出ていません。

一方、数百万匹のサメが1年で世界中でとられています。人間の方が恐ろしい生物であることを自覚しなければなりません。フカヒレを作るため、ヒレだけ取ってサメを捨てることが海外などでありました。必要な分だけとって残さず使い切るべきだと感じました。

シャークミュージアムでは、サメは怖くなく、人間より非常に弱い立場にあることを訴えていました。他の生物から見ると、人間がいかに恐ろしいか展示を通して理解しました。

参考文献

尾形希莉子、長谷川直子,(2018) ,地理女子が教える ご当地グルメの地理学, ベレ出版.

陸田幸枝,(2022),古くて新しい日本の伝統食品,柴田書店

松原 始 、伊勢 優史,(2020),じつは食べられるいきもの事典,宝島社

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