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スクープ・ストライプ

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女子高生がランジェリーブランドを立ち上げる! 三角冬夕と松下雪綺。ふたりの女子高生が、ブランド立ち上げやクラスメイトの抱える問題に真剣にぶつかりながら奔走する青春小説(全16回)。
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2021年9月の記事一覧

【小説】 スクープ・ストライプ  vol.13

【小説】 スクープ・ストライプ  vol.13

Ⅳ. Scoop Stripe!
「わたしが手芸部に入部したいと思ったのは、母にブラジャーを作ってあげたかったからです。
 わたしの母は乳がんを患っていて、左胸の乳房を全摘しています。
 それで医療用のブラをつけているのですが、ある時、こんな風にこぼしているのを聞きました。
『もうちょっとかわいくってもいいわよね。ボーダーのブラとか選べるようになったらいいのにな』
 わたしは、そんな母の願いをかな

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【小説】 スクープ・ストライプ  vol.14

【小説】 スクープ・ストライプ  vol.14

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「スプスプの文化祭大成功を祝して、」
「チアーズ!」
「チアーズ!」
 わたしたちは、展示の片付けもそこそこに行きつけのアイスクリーム屋『ムーン・コーンズ』にやって来ている。
 乾杯したのは、もちろんアイスクリームで。お互いレギュラーサイズのトリプルコーン。すごい贅沢してる〜!
「予約してくれた人、全員が買ってくれた」
「在庫、なくなったね」
「こんなに喜んでもらえて嬉しい。怖い気持ちも

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【小説】 スクープ・ストライプ  vol.15

【小説】 スクープ・ストライプ  vol.15

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 取材は翌週、家庭科室で行われた。冬夕とわたし、そして伊藤先生がインタビューを受ける。
 なぜ、医療用ブラを作るようになったのか。作り方や生地の選定も含めて、細かいところまで取材を受けた。また、この間の文化祭の展示についても質問責めにあった。
 展示内容は医療用のブラの変遷、と意気込んでいたけれど、歴史を辿れるほど特別な何かがあるわけではなかった。医療用のブラはやはり機能的であることが第

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【小説】 スクープ・ストライプ  vol.16

【小説】 スクープ・ストライプ  vol.16

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 今日は新作ブラの撮影会だ。もちろん撮影は高階、モデルはエミリー。
「メイちゃん、久しぶり。見学?」
 冬夕がメイに声をかける。休日の今日、わたしの家にやってきたメイは私服姿。ボーイッシュなのは意外ではないんだけれど、それが、すっと似合っていて、普段着でもヒロインめいている。パリの街角のカフェにいそうな雰囲気ある。
「谷メイはわたしが呼んだ。迷惑だったかな?」
「迷惑ってなんだよお! ウ

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