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星のなみだ 【刺繍缶バッジ#037】

 ナターシャのなぐさめは、ベッドからながめるみずうみのようすでした。おおきなお屋敷の二階の部屋からは、ひろびろとしたみずうみぜんたいを見わたせます。
 秋から冬へと季節がかわろうとするころ、ナターシャは病気の療養のためにみずうみのほとりにたつこのお屋敷にやってきました。みずうみには毎日のように北の国からわたり鳥がやってきます。旅のとちゅうでからだを休めにおりてきては、ほんのなん日かをすごすと冬のすみかのある南の国へと飛びたってゆきます。そのようすはナターシャのお家のあるおおきな街のいそがしい飛行場を見ているようでたいくつしませんでした。
 夕がた、ナターシャはいつものようにじっとみずうみを見つめていました。そのとき目のはしをなにかがざあっと、よこぎるのが見えました。ひとみをむけると、まっ白いつばさをもったおおきな鳥たちが、みずうみにおりたつところでした。
「もう白鳥のむれがやってきたんですねえ」
 ナターシャのあたまのうしろから声がかかります。ナターシャのかんごや身の回りの手伝いをしてくれるカテリーナです。お屋敷は両親とナターシャ三人きりですごすにはひろすぎたので、地元に住むカテリーナをお手伝いさんとしてやとったのです。
「あのむれのなかにはきっと星のなみだという名の白鳥がおりますよ。星がこぼしたなみだのように美しいのでそうよばれているのです。二、三日はここにいるでしょうから、お嬢さまのおかげんがよろしければ、あすにでもみずうみのほとりで餌づけをしましょう」
 ナターシャはだまってうなずくと、ゆっくりとおよぐ白鳥のむれをくいいるように見つめました。カーテンをとじる時間でしたが、カテリーナは外のようすが見えるようにと、すこしだけあけたままにしてくれました。
……

童話「ナターシャと星のなみだ」から星のなみだ。
有料マガジン「それと、すてきななにもかも」に収録される童話「ナターシャと星のなみだ」の表紙を飾る刺繍缶バッジです。
文章はこの童話の冒頭部分です。
ナターシャは、美しい白鳥が星のなみだと呼ばれる本当の理由を知ることができるでしょうか。
「ナターシャと星のなみだ」は2018年12月に配信予定です。

バッグに合わせるとこのような感じになります。

表面

裏面

[サイズ]:φ54mm
[素 材]:刺繍糸、布、ブリキ、鉄

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