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街灯の流星群

瞬く間に移り変わる車窓風景は夜になると一層魅力的になる。

暗がりの中、人の営みが煌めく。

それは少し君の表情に似ているとふと思った。

少しうつろな君が時々見せる笑顔は僕の目には輝いて見える。

そんな僕にきょとんとして目を逸らす、その一連の動作が愛おしい。

ひょろっとしていて今にも消えてしまいそうな君。

手を掴んで引き寄せてしまいたい、

そんな思いは夏風に乗せて、

できるだけ君と長く過ごせるように、

そんな願いを星一つ見えない退屈な都会の夜空へと昇華させる。

列車はずんずんと進んでいく。

身震いするくらいの冷房に君の体温を恋しく思ってしまう。

君のいる場所からものすごい速さで離れていってしまうのに、

君を想う気持ちが強くなっていく気がするのは気のせいだろうか。

止められない、加速するこんな気持ち、

知らない駅のホームに置いてってしまいたい。

けれど僕からこの感情がまるっと消えてしまうとしたら、

僕は、僕という存在は一緒にふわりと消えてしまう、

そんな思いがよぎってしまうから、

幸せになれないと分かっていてもこの恋を手放せない。

そうやって考え込んでいるうちに馴染のある町が目に映る。

カップルが手を取り合って駅のホームを歩いている。

君の手を掴むのは僕ではない誰かだろう、

それだけはなぜか直感で感じられる。

それがお互いにとって幸せなんだと思う。

君のそばで君の話を聞いているだけでこの上なく幸せだ。

もしもそれ以上の幸せが僕に降りかかってしまえば、

幸せすぎて死んでしまう。

だから少しの間、もう少し大人になるまでは、

君の隣でただいい人で居たい。

だから何も知らずに僕の隣でいてほしい。

想い褪せないある夏の記録。

キラキラした街の明かりが心を照らす。

君は僕の月明かり。








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