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【読書記録】「燃えよ剣」司馬遼太郎

日本人の土方歳三好きの原因とまで言われる本書だが、これは好きになる。士道という極端に抽象的な概念のもとに数百人を結集させるべく、極端に具体的な鉄の掟を極端に忠実に徹底した。局長近藤に崇敬を集めさせ、自分は嫌われ役に徹した。こういうキャラに弱いよな。

これを機に新撰組屯所のあった壬生寺へ行ってみた。

勤王浪士の巣窟だった長州藩邸や土佐藩邸は河原町、木屋町通沿いにあったが、四条大宮をさらに西へ行ったこの場所から徒歩で30分は下らないだろう。新撰組を前に立ち塞がるものがなく、我が物顔で往来を闊歩できたとしても、河原町から急報が届いて現地へ駆けつけたとして、1時間弱を見積もっても過大評価にはならないのではないか。いかに監察、諜報の役割がものをいうかが窺える。

作中では、歳三は喧嘩士ではあるものの地の利を丹念に観察し、事前に情報を細かく集める様子が描かれる。京都市中の見回りは会敵即戦闘だったとして、池田屋のような計画性のある仕事ができた背景には、司馬遼太郎が散々に嫌う諜報活動があってこそだったのだろう。

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