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東洋思想はサステナビリティを越えて

滴水之恩、湧泉相報

東洋思想では「恩返し」の教育を重視します。「滴水之恩、湧泉相報(一滴の水の恩に、涌き出る泉のような大きさで報いる)」という言葉があります。恩返しは、いただいた分を返すだけではありません、数倍返しなのです。

皆さんは最近どんな恩返しをしましたか?私(車)も以前に「あれだけ手伝ったのに、その後どうなったかの報告すらない!」と怒られたことがあります(怒っていただきありがとうございます…)恩返しどころか報告すらしていないですもんね。今でも覚えているほど、当時のことを恥ずかしく思います。

人に対してだけでなく、地球や自然に対しても同じです。普段、水や電気を節約したり、ごみを減らすことを心がけたり、地球を大事に自然に優しくという考えはあっても、地球や自然に恩返し、などと考えることはなかなかありません。特に近代の人間は「資源は我がためにある」と言わんばかりに乱用し、自然破壊し…恩を仇で返すとはまさにこのことです。ここで考えたいと思いました。

サステナビリティ、これだけで足りるでしょうか?

SDGsに関して、実はこれまでピンとこない部分がありました。169のターゲットを見ていくと経済的な要素がたくさんあります。現代社会は「経済発展」を大前提にあらゆることが運行していて、それはSDGsキャンペーンも同じなのでは?と。つまり「持続可能」とは「人類の持続的繁栄こそ目指すべきもの」と主張しているように感じるのです。人間は主役、自然は脇役。人間を自然の一部ではなく、切り離して考えているのではないでしょうか。

これは簡単な問いではありません。私たちの研修では下記の動画をよく取り上げています(動画を見た感想などぜひお聞かせください♪)

自分たちの日々の生活もままならないのに、自然や地球のことなんて考えられないと思うかもしれません。逆です。大自然のことを考えてからでないと、私たちは道を間違えるのです。

心の動きは大自然の法則と連動しています。大自然を理解することで、人間とはどんな生きものなのかを理解することができます。私たちの心が大きく動くときは、素晴らしい物事や光景に出くわした時です。英語でも「感動した」を “I’m moved”と表現することがあります。大自然の流れに反することに心の奥底を動かされることはないのです。

どんな恩返しをするべきか?

東洋思想の地球や宇宙への恩返しの考えかたは「道徳」という字に込められています。

道:宇宙万物の法則
徳:見えない「道」を見出そうと日々意識し、行動すること

『リーダーとして論語のように生きるには』車文宜・手計仁志

私たちの日々の関心ごとは、豊かな生活や幸せの追求。そのために、仕事、家庭、趣味やこだわりの持ち物などを少しでもアップグレードしようとがんばります。東洋思想ではこれらを「外境」と呼びます。つまり外的要素という位置づけです。一方で東洋思想で重んじるのは「内境」です。外的要素ではなく内面の心をアップグレードすることが学びの目的です。

私たちの記事でも何度か紹介した四書五経の『大学』は、徳育の実践と学びの順番を示すため一番最初に読むべき書とされています。そして、心(内境)をアップグレードする方法が『大学』の八条目の最初の4つである「格物、致知、誠意、正心」に記されています(詳しくは「弟子規研究所は子育てを頑張るパパを全力で支援します!①②」を参照ください)

天生萬物以養人 人无一德以報天
天は万物を生み人を養う、人は天に報恩する徳がない。

張獻忠“聖諭碑”

ここに、天(=古代東洋思想では天地、地球、宇宙までの概念を表す)と人の関係を表す言葉を紹介します。天が万物を携える大きな存在であることに対して、人はとても無力で小さな存在であることを示しています。ただし、後半の「人は天に報恩する徳がない」をポジティブに読み替えれば、徳を積めればそれで恩返し成立なのです♪

心をアップグレードしていくと、より自然体でいられるようになります。東洋思想において「聖人賢者」とは自然と共生している人のことであり、故に道徳があるとされます。佛教にも「入道」という言葉があります。これは悟りを得るという意味ですが、徳が最高地に達すると「徳=道」となる(道に入っていく)という状態を指します。ここからも分かるように、佛になるための悟りの修行も、道徳の修行といえます。

今回、地球や大自然への恩返しとして徳を積むことの大切さについて書きました。次回は「そもそもなぜ徳なの?」について書いてみたいと思います。さらには「徳はわかったから、どうやって積むのか早く教えてよ!」という具体的なHow toについても触れていきたいと思います。つまり、弟子規への入門です。

車文宜・手計仁志

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