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技術書籍執筆のコツ8選

先日、共著執筆させていただきました拙著「Next.js実践本」こと「TypeScriptとReact/Next.jsでつくる実践Webアプリケーション開発」が出版されました!そして、、技術評論社さんからも想像を上回る売れ行きということで、早いペースで第2刷が決まり現在書店で紙版の在庫に入りました。

実はこの本は書き初めから出版まで一年半かかってしまいました。その経験を通じて理解した技術書執筆のポイントをこの記事ではまとめてみます。

[宣伝] Next実践本の売りは「教科書ではなく実践」

冒頭だけ少しこの本の宣伝です。個人的なこの書籍の売りは「教科書ではなく実践」という点です。個々の技術要素を学べる本は他にもあると思いますが、本書では開発の時に考えなくてはならない、開発の思考プロセスに力を入れています。なぜ、このアーキテクチャを取るのか、どのようにコンポーネントを分割するのか、どのように開発すると生産性が高まるのか、など実際の開発現場の経験を通じて得られたプロセスを書籍化しました。

その他、この書籍の売りに関しては、共著者たまにゃんさんの記事に書かれています。この本を書いた経緯や苦労談などに関しても書かれており興味のある方は是非以下の記事をご覧ください。

私のnoteでは特に書籍の内容にはあまり触れず「技術書を書く方法」について記述します。

執筆の大まかな流れ

執筆活動どのように初めて、どのように進むのか、ステップを簡潔にまとめると以下のようになります。

1. 準備フェーズ

1-1. 共著者と技術書になりそうなネタを考える
技術書のトピックとなる技術を検討します。

1-2. 出版社に執筆ネタを打診する
自分達の考えた技術トピックを出版社に打診してOKをもらいます。

1-3. 目次と執筆箇所の担当を決める
どの目次項目を誰が担当するのか、アサインを確定します。

2. 執筆フェーズ

2-1. 執筆をする
定めた目次に沿って、本書の内容をドラフトしていきます。

2-2. 共著者同士のレビュー
本書の内容に関して、各担当の間で認識の相違がないかを確認するために、他者レビューの前に著者同士でのレビューを行います。

3. 校正フェーズ

3-1. レビュワーに査読してもらう
レビュワーを選定して、決めた期間に本書ドラフトを読んでいただきフィードバックをもらいます。

3-2. 出版社担当者による校正
出版社の観点で問題ないか、日本語の訂正含めた校正が行われます。

3-3. 表紙デザインが決まる
出版社主導でいくつかの表紙デザインが作成されます。最終的に一つに選定されます。

3-4. 最終チェック
入稿後は後戻りできません。最終チェックを出版社の担当者・共著者で行います。

4. 出版フェーズ

4-1. 出版する
予定していた日に発売します。いくつかの書店では先行販売も行われます。

4-2. 読者からの指摘事項への対応
出版後に問題が見つかれば、正誤表などを更新し、次の増刷に向けて修正を行っていきます。

以上、この1-4の一連のステップを通常1年間前後かけて行います。
以下では、いくつかこのような一連の執筆の流れにおけるポイントを少しご紹介します。

技術書籍執筆のコツ1: [準備フェーズ] 執筆ネタ持ち込み時には出版社側のメリットを考える

執筆ネタを持ち込んで提案をするだけではありますが、なんでも書けるわけではありません。実際にネタを持ち込んだ際のGoサインの判断軸としては参考までに以下のような点があります。

  • 読者が強く興味を惹くトピックか

  • 競合の書籍がないか

  • 長い期間読者が付きそうか

上記のような観点で、技術的に面白いとか好きであるという観点でなく、出版社としてしっかりリターンを得られる可能性があるのかという点を考えて持ち込みましょう。

技術書籍執筆のコツ2: [準備フェーズ] 目次は最初に作り込む

出版社の担当者にネタとして良さそうだねという判断をいただいたら、次に行うことは目次をしっかり作り込むことです。目次は読者が本を購入する際にかなり重要なポイントとなります。また、出版社・著者同士も目次をしっかり書いておくことで本書が完成した際の認識のずれを無くすことができます。目次は後からもちろん変更も可能ですが、この時点で出版時とほぼ同等の目次が完成している状態になっているのが理想です。

技術書籍執筆のコツ3: [執筆フェーズ] 構成を決める→調査→言語化の繰り返しを意識する

特定分野に精通している筆者陣でも、何も参考情報なしに空で執筆が進むわけではありません。作業自体は「構成を決める→調査する→理解する→言語化する」という泥臭い作業の繰り返しで進みます。いくらその技術を深く使いこなしていたとしても、言語としてまとめていくには(世の中に間違った情報を提供しないためにも)、それなりの調査と理解がまず初めに必要となります。この進め方のフェーズを意識しながら執筆を行うとより効率的です。

技術書籍執筆のコツ4: [執筆フェーズ] 共著者同士で定期もくもく時間を入れて執筆モチベーションを長期間高める

執筆だけだったら数ヶ月くらいで終わるのでは(特に共著の場合)?と思うかもしれないですが、前述の流れにあるように著者が執筆を完了してからレビューの期間が多くかかります。大抵のケースで執筆にかかる期間は著者の想定よりも長くなります。

執筆活動は予想しているよりも泥臭く、生産性は著者のモチベーションに大きく左右されます。共著のメンバーは皆リアルな現場での開発経験は豊富ですが、執筆活動自体を長期間続けるには、それなりのパッションも必要です。パッションの維持のために、共著者同士で毎週決めた時間にオンラインで集まり執筆を作業するもくもく時間を設定するのが比較的容易にモチベーションを維持できるためオススメです。

技術書籍執筆のコツ5: [執筆フェーズ] 執筆作業を効率的にするツールを導入する

今回お世話になった技術評論社さんだからかもしれませんが、執筆を非常に生産性高く進めるためのツール・仕組みが既に存在していました。

  • マークダウンで執筆する

  • Gitを活用して変更履歴を管理する

  • GithubのIssueを活用してタスクの担当を明確にして進める

  • GithubのPR/issueを活用して進める

  • text-lintを活用する

  • CIを利用してビルドしてリリースの管理をする

上記のようなツールを利用して、効率的に執筆を進めることができます。

技術書籍執筆のコツ6: [校正フェーズ] レビュワーの選定にこだわる

より効果的にフィードバックをもらえるように、レビュワーがどんな方なのかを事前に分類して、それぞれの分類に対して募集を募るのがおすすめです。例えば、以下のように3つのグループに分けてより多くの観点で指摘をもらうことが可能になります。

  • プログラミング初学者レベルの方

  • 実務経験はあり、これから該当技術を学びたいと考えている方

  • 専門的にこの技術に精通している上級者の方

Next実践本に関しては、Next.js本体の開発に携わっているような専門的なナレッジを持った方が身近にいなかったため、TwitterのDMでお声をかけさせていただきました。(本書籍レビュワーの皆様、お忙しい中ご協力いただき本当にありがとうございました)

技術書籍執筆のコツ7: [校正フェーズ] トレンドな技術を書籍化する際には書き直しを覚悟する

たまにゃんさんのブログに書かれておりますが、トレンドな技術を書籍化する際の覚悟が必要です。
特に本書で扱っているReactやNext.jsは執筆期間中にも何度もバージョンアップが行われ、その都度執筆済み内容の修正を行っていきました。書籍としてはできる限り最新の情報を届けることが重要になるため、できる限り新しい情報で出版する必要があります。したがって、特に人気のライブラリなどを書籍で扱う場合は、何度か書き直しが発生する覚悟しましょう。

技術書籍執筆のコツ8: [出版フェーズ] 読者レビューを真摯に受け止めてしっかり修正を行う

著者は初版が発売した時点で燃え尽きがちです。プロダクトと同じように本が世の中に出たら多くの指摘事項やフィードバックをいただきます。

より長く・多く読者の方に読まれるように、きちんと指摘事項に向き合って更新対応していく必要があります。Githubのissueなどタスク管理のツールを使って、担当者をアサインし期日を決めて取り組むのがおすすめです。


以上、書き初めから出版まで全体を通じて執筆のコツまとめでした。

技術書執筆大変。それでも技術書執筆そのものをオススメしたい理由

技術執筆から出版まで完了するまで、いろいろと大変なこともあります。私はそれでも書くことはオススメします。理由は、自分の良かったと思える開発体験世の中にシェアすることができるからです。より多くの方に知ってもらいたい共感してもらいたい、そのようにまだ知らない方に対して自分の経験を還元するのに、書籍はとても良い媒体です。

共著者・出版社に感謝

本書はじめにのセクションにも記述しましたが、特に、技術評論社の野田さん ( https://twitter.com/nodawep )には感謝しています。野田さんが先日発売記念のTwitter Spaceでお話しされていたことで印象的だったのは「執筆者ら技術者は技術のプロであって、書籍を書くプロではない。そこを担当するのが我々の仕事なんです」とおっしゃっていたことです。

また、共著者のたまにゃんさん( https://twitter.com/tamanyan55 ),  Kourinさん ( https://twitter.com/Kourin1996 ) 一緒に企画から出版まで本業が忙しい中進めてくださりありがとうございました。

最後に

本を出版した経験のある1エンジニアとして今後技術書籍を執筆して見たい方に参考になれば幸いです。

最後に、弊社GAOGAOは積極的にReactやNext.jsが得意なエンジニアを採用中です!興味のある方は是非求人情報 ( https://wantedly.com/companies/gaogao/projects ) をご覧ください。

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