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四季の彩り:タイと日本、二つの世界で感じた季節の価値

かつてタイのアユタヤという古都で、私は365日という時間を過ごした。一年という期間は一見短く思えるかもしれないが、その中で経験した様々なこと、思い描いた多くの風景が私の心に深いインパクトを与えた。そしてその中でも特に印象的だったのは、日本の四季の存在の価値についての新たな認識だった。

タイでの一年間の旅は、4月の炎天下のような灼熱の夏から幕を開け、湿度が高く長期間にわたる雨季を経験し、その後は一服の清涼感を与える乾季へと移行した。どの季節も25℃を下回る日はほとんど無く、体感温度は常に高かった。そしてその年の終わりに迎えたタイの新年、ソンクランの頃には、身体全体が強烈な熱気を浴びる体験をし、その違和感や不快感は今でも鮮明に覚えている。

この違和感の原因は、寒さが厳しい冬を乗り越えて暖かい春を迎え、若葉が芽吹き、生命力に満ち溢れた新緑を楽しみ、その後ジメジメとした梅雨を耐え忍び、さらには厳しいが何とも心地よい夏の暑さを体験し、美しい紅葉と共に日が短くなり、再び寒さが身を包む冬へと移り変わる、そんな一年を通じた四季の移り変わりに、私の身体や心は自然と順応していたからだ。

日本で生まれ育ち、3ヶ月ごとに気候が変わるこの土地で生活を送ってきた私にとって、四季の変化は、南国の常夏の天国のようなところよりも、むしろ人間の心や身体を育て、鍛え上げる上で恵まれた環境であると新たに気づかされた。それぞれの季節が独自の風情と共に運んでくる感情や体験は、私たちの人生をより豊かで多彩なものにしてくれるのだから。

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