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「南北朝時代の東寺」(東寺宝物館)

子どもの「弘法市に行きたい」というリクエストに応え、しかも「親は邪魔だからちょっとあっち行っていて」というわがままなリクエストにも応える一方で、自分の主目的は当時の仏様たち参拝(定期的に参拝したくなる)と宝物館で開催中の「南北朝時代の東寺」に行ってきました。

宝物館の拝観料は大人500円ですが、宝物館だけではなく、金堂・講堂と観智院の三か所を訪れることができる共通券は大人1000円でした。もともと金堂・講堂の仏様のところにも行く予定だったので共通券を購入。

京都に来るまでの特急の中で、室井康成『増補版 首塚・胴塚・千人塚 日本の戦死塚』(角川ソフィア文庫)を読んでいて、足利、新田、楠木といった武将が登場していたこともあって、南北朝時代における東寺に関する企画展はどんぴしゃりでした。狙ってその本を読んでいたわけではないのですが、そういう縁ってありますよね。

企画展は
1.南北朝時代の修理と再建‐「仏宝」(1階)
2.南北朝時代の法会と祈祷‐「法宝」(2階)
3.南北朝時代の僧侶と荘園‐「僧宝」(2階)
から構成されており、東寺が光厳上皇の御所になったり、足利尊氏たちの陣所となるなど、政治や戦争に巻き込まれる一方で、時の権力者によって境内の修復や財源確保への協力がなされていたことがわかる資料が展示されていました。

そして、宝物館といえば2階ホールの仏様たちで、
千手観音立像(平安朝)、兜跋毘沙門天立像(唐)、愛染明王坐像(南北朝)たちがいらっしゃいます。弘法市で境内がにぎわっていても宝物館まで来る人はあまりいないこともあって、こちらの仏様たちは自分の時間が許す限りほぼほぼ貸し切り状態で参拝できることも多く、これだけで宝物館に入館した甲斐があります。兜跋毘沙門天は全体的にちょっと硬めな印象を受け、そこがとても魅力的です。

次に向かったのは観智院です。こちらは初めて訪問しました。
建物の中は写真撮影不可ですが、庭園は撮影可能ですという説明を受けた後、書院造の素敵な建物の中を探訪します。

宮本武蔵筆の「鷲の図」と「竹林の図」がある部屋には案内の人がいて適宜説明をしてくれます。父方が熊本なので宮本武蔵さんは割と親しみがあるため、吉岡一門の決闘の話は「また時代劇の話が始まったよ」という感じで晩酌に付き合っていた時などに父から聞いたりしていました。そうか、その後に身を隠していたのがこちらだったのかと、父の話と歴史と場所が一致した瞬間でした。ただ、血なまぐさい話は不得手なので、道場破りとか決闘の話はあまり好きではありません。

本尊の五大虚空蔵菩薩たちも参拝できました。獅子、象、馬、孔雀、迦楼羅といった鳥獣に乗っている菩薩さまで、こちらも兜跋毘沙門天立像同様に硬質な感じが素敵でした。その隣の部屋には江戸時代の愛染明王がいらっしゃって、力業で煩悩をねじ伏せてくれそうな印象を受けました。

また、こちらは茶室(楓泉観)も素敵で、こじんまりした茶室らしい茶室から新緑を眺めることができました。こういった茶室で行われるお茶会に出席される人たちはお寺関係とか軽く百年以上は京都に所縁がある人なのだろうと思ったり、そういう時のお菓子は何が選ばれるのだろうかなどと思ったりしました。

始めて訪れましたが、素敵なところでした。

共通券で最後に金堂・講堂へ行きました。
こちらはライトアップなどで年に数回は訪れています。
仏像が少しでも好きな人だったら東寺の金堂の立体曼荼羅は好きじゃない人はいないのではないかと思います。仏教に関する知識が無かったとしても素晴らしい仏像に圧倒されると思います。

私はこちらの多聞天、梵天、帝釈天がどうしようもなく好きで、また、東寺は参拝客が多い割には思う存分その場に立って仏像たちと向き合うことが可能なので、本当に有難いです。

4月21日の東寺は、八重桜、牡丹、そしてつつじと若葉が素敵でした。タクシーの運転手さんとともに東寺に来たらしい修学旅行生(中学生?)が、「バラ? きれい。」と言っていたのは多分牡丹ですが、バラと同じくらい華やかでした。