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The Snuts “Glasgow” 、熱くて不器用な優しさ

先日、Summersonic2023の第一弾ラインナップが発表された。ケンドリック・ラマーのインパクト、ブラーとリアム・ギャラガーという集客アピールと20数年前の文化的歴史的価値に目配せした並び、英国注目株を抑えたFLOにGabriels。国内からは今まさに音楽的最高潮にあるジャパニーズ・ポップスの化身Official髭男dism…と通し券購入を即決せざるを得ない素晴らしいラインナップの中、最後に載っていたまるで2000年代始めに幾多活動していたUKロックバンドみたいな白黒写真が目に留まった。


キャンプで定番の、マシュマロを焼いてピーナッツ・バターと合わせてクラッカーと食べるデザートをバンド名に冠したThe Snuts。スコットランド中部ウェスト・ロージアン出身。中学時代の仲間4人でバンドを組むも当初はなかなか結果が出ず、メンバーはそれぞれ就職し働きながら活動を継続。地道な活動が身を結び大型フェスに出演、2019年頃から支持層を拡げ始めるもCovidによる活動中断…という幾多の困難を、諦めの悪さと不断の努力、メンバーの結びつきで乗り越えてきた、2020年代には古風なまでの物語を持った「UKインディロックバンド」だ。


LIVEにおいてひときわ盛り上がり、日本でも馴染み深いセルティックFCの街らしくスコットランド国旗が舞うなか大合唱がギターソロで巻き起こる代表曲、自国の首都をモチーフとした『Glasgow』はくるり『東京』、フジファブリック『茜色の夕日』、チャットモンチー『東京ハチミツオーケストラ』と共通する、街の風景と上京者である個人の心象を重ねた多くの人々が共鳴するだろうストーリーを描いている。


開放弦とコーラス・エフェクトを効かせたアルペジオが街の夜の灯りを浮かび上がらせ、やがて合流するバンドサウンドが鳴らすタフなビート、シンプルでキャッチーなコード・ワークがどんな困難でも前に進むことを止めようとしない決意、「君がこの街の名前を言うのを聞くのが好きなんだ」という叙情的かつ適度な距離感でスコットランド訛りとそのなかの地域訛りをセルフパロディするキラーラインへと向かっていく、ドメスティックかつオープンな、「3分間の短編映画」としてのポップソングの様式美に溢れた楽曲。スタイリッシュとはお世辞にも言えないMVすらエモーショナルに見せて、説得力を生むような強さが確かにある。

昨年9月にリリースした2ndアルバムは野太く痛快なビートが不敵なロックナンバーが並ぶ前半と、ジャンルを拡張するも散漫な印象の後半の出来にムラがあり、まだまだこれからのバンドであるのは間違いない。しかしだからこそ、バンド史上最も地元から離れた場所での公演になるSummersonicは見逃せないだろうし、THE 1975が初来日の思い出をずっと大切にしてくれているくらい盛り上がったように、多くの人がThe Snutsを拍手と合唱で迎え入れることを、いちUKロックファンとして願ってやまない。

“Glasgow”
The Snuts

And I will bite my tongue
And I won't be the one to tell you no
I promise you this
I'll always love the way that you say Glasgow
I promise you this
I'll always love the way you say

Will you hold your fire
When there comes a time to take your shot
Will you stand on stage
When they disengage from your song

When the big bad city won't call your name
And the clouds won't clear
The sun's to blame
Jump on my back
And I will take you home

When the roads stand still
And the birds won't fly
Roll your stone
To clear your mind
Jump on my back
And I will take you home
I'll always love the way that you say Glasgow

Will you hold your own
When there comes a call saying that they're gone
Will you fold your hand
When the sun and sand won't come your way

When the big bad city won't call your name
And the clouds won't clear
The sun's to blame
Jump on my back
And I will take you home

When the roads stand still
And the birds won't fly
Roll your stone
To clear your mind
Jump on my back
And I will take you home
I'll always love the way that you say Glasgow

And I will bite my tongue
And I won't be the one to tell you no
I promise you this
I'll always love the way that you say Glasgow

舌がもつれてしまうから
君みたいには言えないな
誓いを交わそう
君がこの街の名前を
言うのを聞くのが好きなんだ

一世一代のチャンスまで
心に明かりをともし続けるんだ
ステージに立つ君の歌を
観客が誰も知らなくたって

この悪意に満ちた街に
無視された気がして
暗い雲が君の空を満たして
希望が見えないときは
僕が背負うよ
家に帰ろう

進むべき道が見えなくて
いつかの鳥が飛べなくても
君の岩を転がせ
決して淀まないように
僕が背負って
家まで送るよ

君がこの街の名を
言うのを聞くのが好きなんだ

置いてけぼりを喰らっても
君は君であり続けて
深い闇が行く先を
覆ってしまったとしても

この悪意に満ちた街に無視された気がして
暗い雲が君の空を満たして
希望が見えないときは
僕が背負うよ
家に帰ろう

舌がもつれてしまうから
君みたいには言えないな
誓いを交わそう
君がこの街の名前を
言うのを聞くのが好きなんだ

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