素晴らしいデザインはデザイナーから生まれる - デザインのためのデザイン -

デザインは難しい。
素晴らしいデザインは、なおさら。
だからこそ、素晴らしいデザインは素晴らしいデザイナーから生まれる。

『デザインのためのデザイン』は、より良いデザインを生むための方法論を記した本。

ちょっと難解だったので、振り返りがしやすいよう、まとめました。

「あっ」と気づきがあると、うれしいです。

目次
素晴らしいデザインを生むには?

・素晴らしいデザインはデザイナーから生まれる
・プロダクトプロセスは阻害要因
・プロダクトプロセスが有効なケース
・素晴らしいデザインを生むために

素晴らしいデザイナーを育てるには?

・実習と批評を繰り返す
・早くから最前線に放り込む
・正規の教育を与える
・集中できる環境を与える
・自らで実践する

素晴らしいデザインを学ぶには?
・手本から学ぶ
・体系的に学ぶ
・デザインの根拠を学ぶ
・4 つのステップで学ぶ
・独創性と自尊心を捨てる

より良いデザインプロセスを構築するには?
・プロトタイプ重視のプロセス
・チームデザインの良し悪し
・制約とユーザーモデル
・デザインの軌跡と根拠
・デザインの分離
・熟練デザイナーの失敗

素晴らしいデザインを生むには?

素晴らしいデザインはデザイナーから生まれる
素晴らしいデザインは、素晴らしいデザイナーから生まれる。洗練されたプロダクトプロセスからではない。iPhone、Mac、UNIX など革新的な製品の多くは、一般的なプロダクトプロセスから外れたやり方で生まれている。

プロダクトプロセスは阻害要因
一般的なプロダクトプロセスは、「同意形成」の繰り返し。それは、「間違い」を探す拒否権指向のプロセス。そのため、誰も予想しない革新的デザインを生むには不向き。承認を得るプロセスは、素晴らしいデザイナーを窒息させる。

プロダクトプロセスが有効なケース
プロダクトプロセスは「似ているが少し異なる製品」を生み出すフレームワークとして有効。たとえば、いまあるもの改良する場合など。要件や制約を満たしているか、しっかりと確認できるからだ(これは革新的デザインの場合も不可欠)。
またプロダクトプロセスは、規律を課すことで、デザインの底上げも実現する。

素晴らしいデザインを生むために
プロダクトプロセスは必要不可欠なプロセス。しかし、素晴らしいデザイナーが窒息しないように注意する必要がある。素晴らしいデザインを求めるならば、プロジェクトマネージャーが、素晴らしいデザイナーに権限と責任を譲渡する。つまり、すべてまかせることが重要。なぜなら、素晴らしいデザインには「コンセプトの完全性」が必要であり、それは、ひとり、または「心をひとつ」にした少数のデザイナーから生まれるからだ。
プロジェクトマネージャーは絶対に必要な制約のみ提示し、あとは極力、口出しをしない。また、プロジェクト外の野次から素晴らしいデザイナーを守ることも忘れてはならない。

素晴らしいデザイナーを育てるには?

実習と批評を繰り返す
知識を学ぶだけでは不十分。実践と批評を繰り返すことで、スキルは磨かれる。指導者は豊富な知識と見識にもとづき、デザインをレビューする。スタイル的な矛盾、デザインと目的の関係性など、を観点に。

早くから最前線に放り込む
才能は早くから発見され、良い環境におかれるべき。たとえば、モーゼも暴君の王子として育てられたことが国家を率いる訓練となった。最前線で経験を積むことは重要だ。

正規の教育を与える
社内での教育は、ある価値観の影響を受けやすく偏りが生まれる。社外のプロの指導者による教育は、「公平さ」があり、知識の「深さ」と「広さ」をうまく伸ばしてくれる。

集中できる環境を与える
フロー状態を生み出す。それには、誰にも邪魔されない、デザインだけに集中できる環境が重要だ。また、マネージャーの一部には、自分より優秀な部下を不快に感じるものがいる。彼らはときに、部下の仕事を阻害する。より上位のマネージャーは、彼らの自己肯定感を高め、部下に悪影響を与えない環境を生み出すことが仕事だ。

自ら実践する
自ら毎日デザインをスケッチする。先人の例を模倣し、研究する。その際、先人たちは有能であった、と仮定する。悪いデザインがあった場合も「何がこれほどの賢明なデザイナーにそうさせたのか」と考える。通常、その答えは、そのデザイナーが直面していた目的と制約のなかに隠れている。それを見つけ出すことが新しい洞察をもたらす。

素晴らしいデザインを学ぶには?

手本から学ぶ
まったく新しいデザインは、ほとんどない。多くのデザインは、似たような目的のために作られた過去のデザインから派生している。手本は新しいデザインのための、安全なモデル、暗黙的なチェックリスト、過ちに対する警告、新しいデザインへの足がかりを提供してくれる。

体系的に学ぶ
アマチュアのデザイナーとプロのデザイナーでは手本の使い方が異なる。アマチュアは、自分の経験でたまたま出会った手本から学ぶ。対してプロは、ずっと広い範囲、すなわち、異なる時代、異なるスタイル、異なる流派のライブラリから学ぶ。最良のケースでは、指導者からその注目すべき特徴や差異の解説をうけている。

デザインの根拠を学ぶ
「何をデザインしたか」ではなく、「なぜ、そうデザインしたか」が重要。しかし、多くのデザインには「なぜ」の解説がなく、自分で導き出す必要がある。それは、マニュアルを読むだけでは、学べないものだ。

4 つのステップで学ぶ
手本の活用にはステップがある。

収集
体系化された手本を集める。

批評
個々の手本を公正に批評する。

分析
複数の手本を比較する。それぞれの目的の違いは、どのようなデザインの違いを生むのか、を考える。目的を満たすためのデザインとは、を探る。

統合
分析で得られた気づきを法則化する。ある目的を満たそうとするデザインには、うまく機能している例と機能していない例がある。それぞれの事例を深く分析し、共通の法則を導き出す。良い事例は、業界のデファクトスタンダードとなってることが多い。

独創性と自尊心を捨てる
独創性を目的にしてはいけない。素晴らしいデザインとは、機能的ニーズを満たし、堅牢で耐久性に優れ、ユーザーに喜びを与えるもの。独創性は必須ではない。独創性は、結果として、素晴らしいデザインに備わる。独創性の追求は、自尊心から生まれる。名声を得たいとする欲求、それは、多くのデザインを台無しにする。

より良いデザインプロセスを構築するには?

制約とユーザーモデル
まったくの自由よりも制約があるほうがいい。制約がなければ、デザインの範囲は広域となり、難易度があがるからだ。また、その制約が本当に必要なものか、を見極める。いくつかの制約は、単なる慣習でしかないことがある。
ユーザーモデルを明確にする。ユーザーモデルが曖昧な場合、デザイナーは、「自分」をユーザーとしてデザインしてしまう。しかし、デザイナーは、ユーザーではない場合がほとんどだ。また、制約が何もない状態の場合、まずはユーザーモデルを決めるといい。ユーザーモデルは、ユーザーが求めるもの 、つまり、制約を生み出すからだ。

プロトタイプ重視のプロセス
ほとんどの場合、デザイン対象の目的と解決手段はあいまいな状態で、はじまる。ウォーターフォール的なプロセスでは対応が難しい。デザイン過程において、新たな仕様や見落としていた要件が見つかることが多々あるからだ。そのため、プロトタイプを軸とした素早い検証プロセスが望ましい。

デザインの軌跡と根拠
何をデザインしたか、だけでなく、なぜそのデザインにしたか、を共有する。デザインは決断の連続。複数ある選択肢のなかから、なぜそのデザインが決断されたのか、を残す。ひとつの決断の後には、新しい決断が生まれる。デザインの一貫性を保つ上で、この「なぜ」は、ひとつの指針となる。

チームデザインの良し悪し
チームでの共同作業は必ずしも効率化をもたらす、とは限らない。チーム作業には、大きなマネジメントコストが発生するからだ。共同作業が向いているのは、アイデアの発散や複数視点のレビュー。単独作業が好ましいのは、ユーザーインターフェースの構築。素晴らしいデザインにはコンセプトの完全性が必要だが、複数人でのデザインで、スタイルの統一性を保つのは難しい。

デザインの分離
近年、デザインの専門性が上がり、デザインプロセスは分業化された。それによって、デザイナーは、ユーザーからも、実装者からも分離された。分離は、デザイナーから想像力を奪い、「実装しづらいデザイン」、「実際には使えないデザイン」が生まれやすい環境を生み出した。デザイナーは、まずこの環境に置かれていることを自覚する必要がある。

熟練デザイナーの間違い
熟練デザイナーは成功を何度も体験する。その過程で、自分とデザインスキルへの自信を大きく増していく。しかし、そのどちらも自信を持つべき対象ではない。重要なことは、デザイン対象と環境がアップデートされていないか、常に気を配ること。過去の仮定が、いまも適用できるか、常に検証することだ。

熟練デザイナーが間違うステップ
1. 最初は注意深く学ぶ
2. 新しいやり方を習得する
3. やり方を大胆に拡張し始める
4. 自意識過剰になり、大胆さが増す
5. 基礎となる仮定を忘れる
6. 間違ったデザインをつくる

おわりに

ざっくりまとめると、こんな感じです。

素晴らしいデザインを生むには?
素晴らしいデザイナーを信頼して、まかせよう。
彼らが窒息しないよう、無駄な承認プロセスは省略しよう。

素晴らしいデザイナーを育てるには?

早い段階から最前線で実践とレビューを繰り返そう。
彼らがデザインに集中できる環境を作ってあげよう。

素晴らしいデザインを学ぶには?

先人たちのデザインを手本にしよう。体系的に広く、深く学ぼう。
なぜそのデザインになっているのか、背景を考えよう。

より良いデザインプロセスを構築するには?

ユーザーモデルを決めて、プロトタイプを軸にした素早い検証プロセスを実行しよう。また、検証プロセスの過程は、指針となるのでドキュメントに残しておこう。チームで作るなら、担当領域を決めよう。また、熟練したデザイナーでも間違いを犯すことを知っておこう。

おわりのおわりに
「デザインのためのデザイン」はちょっと読みづらい(冗長な言い回し&事例が建築...!)ですが、たくさん学びがありました。

ちなみに、本記事は、超訳レベルでまとめてます。実際に読むと、ちょっと雰囲気が異なるので、購入検討される方、ご注意ください。

20180718 追記
この本、知人から借りたのですが、絶版らしいですね。。ひぇー。

***

Twitter でもよろしくどうぞ。良いものを作りたい

いただいたサポートは書籍や他の方の note に使います。 また記事の感想をシェアいただけるとシンプルにうれしいです。コツコツ良い記事を書きますのでどうぞよろしくお願いします〜!