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「週末の家族読書」の思い出。


子供のころ、我が家には、とあるささやかな恒例行事がありました。週末の昼下がりになると、家族みんなで図書館に出かけて思い思いの本を借りてくる、というものです。そして、帰宅してから銘々リビングに寝転がって、借りてきた本たちを黙々と読むのです。

たいていは土曜日のお昼ごはんの後、少し休んでから。誰からともなく図書館用の大きな鞄と貸出カードを用意して、出かける支度をはじめます。(貸し出しは1人10冊まで、と決まっているのですが、たいていみんな上限ぎりぎりまで借りるので、大きくて丈夫な鞄でないといけませんでした。)

家から車で15分ほどの、比較的大きな図書館内を行ったり来たりすること、一時間弱。読書好きな母と私は文学小説やエッセイ、父は仕事に関する本やスポーツ雑誌のバックナンバー、まだ小さな妹と弟は絵本や児童書、伝記漫画なんかでそれぞれの鞄をいっぱいにして、静かに、それでいて意気揚々と、図書館をあとにします。

みんな必要以上に言葉を交わすわけでもなく、はたから見ればさほど楽しそうな様子でもなかったかと思うのですが、これから読めるお楽しみがいっぱいに詰まった鞄を抱えて車に乗り込む足取りは、どことなくうきうきと弾んでいたような気がします。

家に着いたら、早速読書タイム。まずお茶を淹れてひと息ついてから、という日もあれば、帰宅して早々に読み始める日もありました。とにかくその日の、みんなの気分次第。(たいてい帰宅する頃はちょうどおやつの時間だったので、お腹の減り具合次第、とも言えますが。)

私は、この時間がとても好きでした。みんな静かに、それぞれまったく違う本を読んでいるのに、「同じことをして楽しんでいる」一体感のようなものがその時たしかにそこにあって、なんだか落ち着く空気が流れているような気がしたからです。

そしてこの、予定を細部までかっちりと決めたりせず、「図書館で借りてきた本を読む」というメインの部分以外がふんわりフリーダムに恒例化されていたことが、私にとってはとても心地よかったのだと思います。

いつのまにやら始まって、子供たちの成長と共に自然となくなってしまったこの習慣。ステイホームでおうち時間が増えているいま、もう一度取り入れてみるのもいいかもしれないなあ、と考えているところです。

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