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1歳からの読解入門

東大生の多くは中学受験を通ってきている。
そこで有名私立中高一貫校を受験し、試験をパスして入学した経験を持つ子が多い。

ただ、実際に中学受験の問題を見たことがある人ならばわかってもらえるだろうが、問題の難易度が非常に高い
もちろん、問題の難易度も高いのだが、それ以上に問題文の読解が難しい。

例えば、次のような問題がある。

図のような直方体の形をした木片があります。この木片を①のように、そこに自然長が15cmのばねを固定した容器に入れて水を灌いだら、下から3cmまで水につかって水面にうきました。このとき、ばねと木片をつなぐ3cmの糸はたるんだままでした。次に、さらに水を加えて水の深さを26cmにしたところ、②のように木片が水面から下に4cmつかっていました。このとき、糸はぴんと張り、ばねは少しのびていました。次にさらに水を加えて、③のように水の深さを40cmにしました。これについてあとの問いに答えなさい。ただし、水1cm^3の重さは1gであるものとし、糸の重さや体積は考えないものとします。

Z会小学6年生理科のテキストより引用
https://www.zkai.co.jp/el/a/curriculum/science/?cd=MBG

問題設定だけで268文字にも及ぶ長編である。
理科や社会は問題文が長くなる傾向にあるとはいえ、これを読んで求められているところを理解して、問題の答えを考え、浮かんだ内容を言葉としてアウトプットしていくことが求められる。

断言するが、普通の小学生には到底無理
というか大人でも厳しい人がいるのではないか?
Z会のテキストは、小学生向けといえども、大人ですらてこずる難易度がある。

問題は、これらの問題をスラスラ解ける小学生と、解けない小学生がいるという事実である。
周りのライバルより1点でも多く差をつければ受かる受験の世界においては、難問に正解できる能力は必要ない。
「みんなが落とさない問題」を取りこぼさず、追加であと数問解ければ、十分に合格できるのだ。

できる小学生なら、それこそ開成に受かるような子なら、前述の問題は難なく解くだろう。
では、彼らの読解力はどのようにして身についたのか?

読解の秘密は読み聞かせにある

やはりというべきか、できる小学生たちは、自分から本を読む習慣があり、読書に抵抗がない。
何も言わなくてもどんどん本を手に取るし、読み漁る。

だからといって、子どもに読書を強制しても意味はない。
大人ですら読書の習慣がない人がいるのだ。
普通の子どもに「本を読め」と強制しても、効果が出ないことは簡単に予想できるだろう。

私も小学生のころはどんどん本を読んでいた。
当時はやっていた『デルトラクエスト』を筆頭に、『セブンスタワー』『ドリームバスター』『ブンダバー』『魔女の宅急便』『ハリーポッター』など、ファンタジーと付けばとにかく何でも読み漁っていた。

私はどのようにしてできたのか?
母は、私の読書好きを「自分が読み聞かせをしたから」だという。
多い時は一日に50回も絵本を読み聞かせていたらしい。

当時は貧乏であったから、図書館に大きなバッグを抱えていって、数十冊単位で借りる。
読んだら返して、新しい絵本を数十冊……。
これを1歳になる前くらいから、自分で本が読めるようになった5歳頃までずっと続けていたのだとか。

これは大変効果が出るだろう。
言葉の能力は、やはり言葉を通してでしか磨かれない。
そうした中で、読み聞かせは群を抜いて子どもに言語をインプットする。

例えば、一冊の絵本の文字量を1,000文字と仮定する。
これを50回読んだ場合には、50,000文字分の情報が伝えられることになる。
一般的な文庫本の文字分量が10万文字程度であることを考えると、その半分程度の情報を伝えていることになる。
つまり、2日で一冊の文庫本を与えているに等しい文字情報を伝えている。

これを1歳から5歳直前まで、4年間続けたとしよう、
一年あたりで、180冊程度の本と同じ文字分量を伝えているのだから、私の脳内には720冊もの分量の文字が伝えられたことになる。

国立国語研究所の研究によれば、人の一日の会話時間は6時間程度だという。
スピーチの場合、1分あたり300文字がちょうどいいといわれているが、2者もしくは3者で話すことを考えると、会話での文字分量は1分間に100文字~200文字程度だと仮定する。

間をとって150文字だとして、150文字×60分×6とすれば、54,000字。
ここまでの家庭が正しければ、50冊もの読み聞かせは、成人の一日の会話量すべてに匹敵するほどの言語情報を与えているとみることができるのではないだろうか?

さらに言えば、いくらわが子がかわいいからといって、6時間絶え間なく話し続ける親も稀だろう。
それを考えると、幼少期の私には、一般的な子どもたちとは比べ物にならないほどの言語情報がインプットされていたと考えられる。

研究結果があるわけではないが、これが私の国語能力に何か影響を及ぼしているのではないか?と考えている。
読み聞かせは、言葉の話せない赤子に、ストーリー仕立ての意味を伴った言語情報を大量に送り込むのに適した手段である。

これについては他の研究を待つしかないが、読み聞かせこそ子どもの言語運用能力に影響を与える可能性がある。
今から子育てを考えている方には、ぜひ毎日の読み聞かせを推奨したい。

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