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【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」3(旅館編)

登場人物

灰かぶりの猫
久しぶりに小説を書き始めた、岩手県出身の30代。現在、新作を執筆中。
(詳しくはプロフィールの通り)

黄昏たそがれ新聞の夏目 
新米記者。アニメ好き。最近の推しは『呪術廻戦』の五条悟。先月、五条悟の死を知り、3日間寝込む。一方、その時に夢に見た、乙骨おっこつ憂太が気になり始める。

(以下、灰かぶりの猫=猫、夏目=夏目と表記)

※固有名詞にリンクを追加。


これまでのあらすじ

舞台は変わらず、本来の目的地の修善寺しゅぜんじではなく、間違えて訪れた猫の近所の温泉旅館。猫が新作の執筆に取り組む中、夏目はひとり、館内の湯へ向かう。

※今回は短編小説『空中散歩』のネタバレを含みます。


――すー、ぱたん(部屋の引き戸を開け、夏目が戻ってくる)

夏目 「(軽くほほを上気させながら)ふぅ、とっても良いお湯でした」

猫  「ずいぶんと長風呂だったね。6日くらいは湯船に浸かっていたんじゃないか」

夏目 「やだなぁ。わたしたちが生きているのは、現実とは違う時間軸ですよ。ドラゴンボールの『精神と時の部屋』みたいなものです」

猫  「なるほど」

夏目 「あ、何観てるんですか(横から猫のパソコンを覗き込む)」

猫  「『ゆびさきと恋々』」

夏目 「わたしも観てます!(声を弾ませる) 雪ちゃん可愛いですよね。って、あれ、そう言えば、新作の方はどうしたんですか。まさか、書けなくて筆を投げ出したんじゃ……」

猫  「もう出来たよ。環境のせいか、さくさくと筆が進んでね。タイトルは『空中散歩』。読むかい?」

夏目 「もちろんです」

――三十分後。

夏目 「この間、話していた昔話と言うのは、『竹取物語』のことだったんですね」

猫  「樫村かしむらがうらやましいよ。僕も会えるなら、一度くらいは彼女に会ってみたい」

夏目 「猫さんて思ったより、ロマンチストなんですね。――あ、そうそう、今の話で思い出したんですけれど、実はさっき廊下で、片平なぎささんと船越英一郎さんを見かけたんです。何かあったんですかね?」

猫  「ドラマの撮影かな?」

夏目 「何か、本当にあったって感じでした。まさか、この旅館で殺人事件とか」

猫  「ドラマの観過ぎだよ。そもそも二人は、プライベートで泊まりに来ただけかもしれないじゃないか」

夏目 「でも二人、別の名前で呼び合っていたような」

猫  「なら、ドラマじゃないか」

――ギャー!(突然、旅館内に悲鳴が響き渡る。二人とも、きゅうりを前にした猫のように飛び上がる)

夏目 「(平静を装い)び、びっくりしましたね。やっぱり何か起きているんじゃ。物は提案ですが、猫さん、現場に行ってみませんか」

猫  「おいおい、待ってくれ。僕は三毛猫ホームズでも、浅見光彦シリーズでもないんだぞ」

夏目 「EVAエヴァシリーズみたいに言わないでください」

猫  「(パソコンをそっと閉じ)やれやれ。面倒ごとは本当に御免被ごめんこうむりたいんだが、物語上仕方ないな。これも何かの運命かもしれない」

夏目 「『運命のルーレット廻して』ですね」
                               つづく

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