連載【短編小説】「わたしの『片腕』」最終話
携帯電話がなかった当時、顔を知らない相手と会うためには、待ち合わせ場所は文字通りピンポイントで、かつ、お互いのことが分かる目印を身に付けておくことが必須でした。言ってしまえば、誰もが忠犬ハチ公像だった時代です。
――さて、わたし史上、生まれて初めてといっても良い、異性とのツーショット。赤毛のアンのように垢抜けず、何かと晩稲だったわたしも、お洒落と言うものを頭の上からつま先まで意識し、お手本としてファッション誌を熟読しました。と言っても、ローマは一日にして成らず。一夜漬けで