灰かぶりの猫

久しぶりに小説を書き始めた、岩手県出身の三十代。読書は硬軟問わず。「猫」は動物の中でも…

灰かぶりの猫

久しぶりに小説を書き始めた、岩手県出身の三十代。読書は硬軟問わず。「猫」は動物の中でも特別。アニメ好き。好きな言葉は「どうで死ぬ身の一踊り」。その言葉通り、死ぬまでに一冊の著作を刊行することが目標。なお、投稿は不定期。

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  • 灰かぶりの猫の大あくび

    物書きの灰かぶりの猫と新聞記者の夏目が織りなす、荒唐無稽でネタ満載のメタフィクションパロディコントです。

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    ※みなもすなるしょふとしょふとといふものを、われもしてみむとてするなり。 『灰かぶりの猫日記』より

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    作品の背景などを、好き勝手に語り尽くします。ネタバレもあります。

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    何も考えていない? そんなことありません。これまでに書いた短編小説をまとめています。

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    あなたへ向けて、届けるつもりのない投壜通信を綴っています。

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【短編小説】「If I Can't Be Yours」あとがき

 皆さんどうも、灰かぶりの猫です。  今回の小説のタイトル「If I Can't Be Yours」は、正確には「Thanatos - If I Can't Be Yours」です。ご存じの方はご存じだと思いますが、これは『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』の主題歌です。一つの幕切れとして劇中で流れる際、スタッフロールが螺旋状にスクロールされるのがとても印象的ですよね。  今更、なぜエヴァ、それも旧劇場版なのかと思われるかもしれませんが、それは偶然に過

    • 【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#18【アイドル編~なんとかしてアイドルに!~】第四話

      前回のあらすじ 真っ暗闇の中で始まった、アイドル候補生たちによる「アイドルを哲学せよ!」の討論。夏目グループの5人は、それぞれが思うアイドルについて語り合った後、このオーディションに対する疑義を持ち出し、結果、オーディションを否定するという結論を導き出すのだった。  登場人物 夏目愛衣  黄昏新聞の新米記者。アニメ好き。『学校編』のエピローグで、モノリスが無断で義体を購入したため、急遽「100万円」を用意しなければならなくなり、アイドルの育成補助金目当てに、385プロダ

      • 【ショートショート】試作品4「三振の裏に」

         グラウンドの土で汚れたユニフォーム姿の翔太が、半べそを掻きながら、駄菓子屋の前を通り過ぎる。 ――おい、なんだ。また、三振して帰ってきたのか。  煙草を吸いながら、油を売っていた駄菓子屋の親父の声に、翔太が足を止める。 ――お前は知らないだろうが、あのミスターはな、初めての試合は4打席連続三振だったんだぞ。  翔太は、心ここにあらずと言った表情で、ぼんやりと足元を見つめていた。 ――良いか、翔太。お前が三振した代わりに、誰かがヒットを打ったと思え。お前がヒットを打

        • 連載【短編小説】「わたしの『片腕』」あとがき

           皆さんどうも、灰かぶりの猫です。  岩手も桜満開。一度、雨に打たれはしましたが、濡れた花びらも、また一興というものでしょう。散った桜の花筏に乗船すれば、知らず知らず、常世にでも流れ着きそうです。  さて今回は、川端康成の短編『片腕』を枕に、短編を認めてみました。実を言いますと『片腕』は、今までに一度しか読んだことがありませんでした。短編を書くにあたり、長い時を経て再読してみたのですが、語り手の私が、自分の腕と娘の片腕を付け替える場面があるなどと言うことは、まるっきり記憶

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        【短編小説】「If I Can't Be Yours」あとがき

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          連載【短編小説】「わたしの『片腕』」最終話

           携帯電話がなかった当時、顔を知らない相手と会うためには、待ち合わせ場所は文字通りピンポイントで、かつ、お互いのことが分かる目印を身に付けておくことが必須でした。言ってしまえば、誰もが忠犬ハチ公像だった時代です。  ――さて、わたし史上、生まれて初めてといっても良い、異性とのツーショット。赤毛のアンのように垢抜けず、何かと晩稲だったわたしも、お洒落と言うものを頭の上からつま先まで意識し、お手本としてファッション誌を熟読しました。と言っても、ローマは一日にして成らず。一夜漬けで

          連載【短編小説】「わたしの『片腕』」最終話

          【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#17【アイドル編~なんとかしてアイドルに!~】第三話

          前回のあらすじ  第一次選考を無事通過した夏目。続く第二次選考では、385プロの敏腕プロデューサーの冬元から、新たな難題が提示される。それは「アイドルを哲学せよ!」というものだった。突如、照明が落とされ、ベタ塗りのような真っ暗な空間で、お互いの顔も名前も分からない中、第一次アイドル候補生たちは文字通り、手探りでアイドルとは何かを考え始める。 登場人物 夏目愛衣  黄昏新聞の新米記者。アニメ好き。『学校編』のエピローグで、モノリスが無断で義体を購入したため、急遽「100万

          【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#17【アイドル編~なんとかしてアイドルに!~】第三話

          連載【短編小説】「わたしの『片腕』」第三話

           先ほどお話したように、わたしの肩の付け根の傷跡については、母にいくら訊ねても、梨のつぶてでした。猿蟹合戦のように硬い柿でも投げつけたら、何か違った答えでも返ってきたのでしょうか。これでは一向に埒が明かないため、わたしはひとりで、ことの真相を確かめてみようと思い立ちました。思い立ったが吉日です。わたしは自分と同じような傷跡を持つ同士を求めて、当時、クラスの女子の間で流行り始めていた学習雑誌のペンフレンドの募集欄に、モールス信号のように伝わる人にだけ伝わることを願い、  わた

          連載【短編小説】「わたしの『片腕』」第三話

          【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#16【アイドル編~なんとかしてアイドルに!~】第二話

          登場人物 灰かぶりの猫 久しぶりに小説を書き始めた、岩手県出身の三十代。『学校編』で三島創一との問答の最中、この物語から姿を消す。 夏目愛衣  黄昏新聞の新米記者。アニメ好き。『学校編』のエピローグで、モノリスが無断で義体を購入したため、急遽「100万円」を用意しなければならなくなり、アイドルの育成補助金目当てに、385プロダクションのアイドルオーディションに参加する。 モノリス 灰かぶりの猫の自宅のAIスピーカー。知らぬ間に、猫と夏目の会話を学習してしまい、時々おかし

          【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#16【アイドル編~なんとかしてアイドルに!~】第二話

          連載【短編小説】「わたしの『片腕』」第二話

           突然、席を外してしまって申し訳ありません。  さて、わたしが川端康成さんの『片腕』という短編小説に出会った時のお話でしたね。続きをお話します。   陰翳礼讃とばかりに、三和土のある玄関は薄暗く、ウナギの寝床のように奥に長く伸びる廊下は、薄墨を刷いたかのようです。本当にこのまま、足を踏み入れてしまっても良いものでしょうか。行きはよいよい、帰りは怖いとはこのこと、振り返った時に玄関が無くなっているなどということだけは勘弁願います。    抜き足差し足で思わず、ひっ、と声を上げ

          連載【短編小説】「わたしの『片腕』」第二話

          連載【短編小説】「わたしの『片腕』」第一話

           「片腕を一晩お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。  という書き出しではじまる、川端康成さんの『片腕』というお話を、はじめて読んだ時のことは今でもよく覚えています。  まだあげ初めし前髪の、中学二年生の秋の暮れ。なにひとつ波風の立たない退屈な日常に、どっどどどどうどと、一陣の風を巻き起こしてくれるような刺激を求めて、週に一度の割合で学校の図書室に通い詰めていた頃のことでした。  木造の旧校舎二階の廊下の突き当りに、図書室はひっそりと深い森の奥のようにたたずんでいました。丸

          連載【短編小説】「わたしの『片腕』」第一話

          【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#16【アイドル編~なんとかしてアイドルに!~】第一話

          登場人物 灰かぶりの猫 久しぶりに小説を書き始めた、岩手県出身の三十代。『学校編』で三島創一との問答の最中、この物語から姿を消す。 黄昏新聞の夏目  新米記者。アニメ好き。『学校編』では、モノリスと共に創一に立ち向かう。『学校編』エピローグで、モノリスが無断で義体を購入したことにより、急遽「100万円」を用意しなければならなくなる。 モノリス 灰かぶりの猫の自宅のAIスピーカー。知らぬ間に、猫と夏目の会話を学習してしまい、時々おかしなことを口にする。『学校編』のエピロー

          【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#16【アイドル編~なんとかしてアイドルに!~】第一話

          【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#15【学校編~僕たちはどう生きるか~】エピローグ

          登場人物 灰かぶりの猫 久しぶりに小説を書き始めた、岩手県出身の三十代。三島創一との問答の最中、この物語から姿を消す。 黄昏新聞の夏目  新米記者。アニメ好き。『学校編』では、モノリスと共に創一に立ち向かう。次のシリーズでは、準主役の予定。 モノリス 灰かぶりの猫の自宅のAIスピーカー。知らぬ間に、猫と夏目の会話を学習してしまい、時々おかしなことを口にする。『学校編』では、思わぬアイデアで創一を倒し、この物語をエピローグへと導く。 三島創一 小説家。夏目の高校時代の先

          【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#15【学校編~僕たちはどう生きるか~】エピローグ

          【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#14【学校編~僕たちはどう生きるか~】第六話

          登場人物 灰かぶりの猫 久しぶりに小説を書き始めた、岩手県出身の三十代。芥川賞候補作家の三島創一の代役として、夏目の母校での講演を依頼される。 黄昏新聞の夏目  新米記者。アニメ好き。『僕の心のヤバイやつ』第2期にはまり、今はこのアニメを観るために生きている。「旅館編」を経て、すっかり猫の相棒役に。次のシリーズでは、準主役の予定。 モノリス 灰かぶりの猫の自宅のAIスピーカー。知らぬ間に、猫と夏目の会話を学習してしまい、時々おかしなことを口にする。シンギュラリティが訪れ

          【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#14【学校編~僕たちはどう生きるか~】第六話

          【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#13【学校編~僕たちはどう生きるか~】第五話

          登場人物 灰かぶりの猫 久しぶりに小説を書き始めた、岩手県出身の三十代。芥川賞候補作家の三島創一の代役として、夏目の母校での講演を依頼される。 黄昏新聞の夏目  新米記者。アニメ好き。『僕の心のヤバイやつ』第2期にはまり、今はこのアニメを観るために生きている。「旅館編」を経て、すっかり猫の相棒役に。次のシリーズでは、準主役の予定。 モノリス 灰かぶりの猫の自宅のAIスピーカー。知らぬ間に、猫と夏目の会話を学習してしまい、時々おかしなことを口にする。シンギュラリティが訪れ

          【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#13【学校編~僕たちはどう生きるか~】第五話

          連載【短編小説】「あなたの色彩は、あなたの優しさ、そのものでした」あとがき

           皆さんどうも、灰かぶりの猫です。  もうすぐ、春ですね。ちょっと気取ってみませんか。と、歌いだすにはまだ早い、岩手県内。ウェザーニュースによれば、盛岡市のソメイヨシノの開花予想は、平年より5日早い4月13日頃だそうです。  そして、3月と言えば別れの季節。1月から放送が始まり、先日最終話を迎えたアニメが『ゆびさきと恋々』です。毎話、楽しみに御覧になっていた方もいらっしゃったのではないでしょうか。今回の短編小説『あなたの色彩は、あなたの優しさ、そのものでした』は、『ゆびさ

          連載【短編小説】「あなたの色彩は、あなたの優しさ、そのものでした」あとがき

          連載【短編小説】「あなたの色彩は、あなたの優しさ、そのものでした」最終話

          登場人物 三守琥珀  わたし。二十歳の大学生。PSYさんと向き合うことで、ふたをしていた過去の記憶を思い出す。 円谷蜜柑  わたしの親友。学年は一つ上。とにかく明るい。 橘真紅   蜜柑の高校時代の美術部の先輩。現代アーティスト。 PSY 真紅さんの知人。水彩画アーティスト。視線恐怖症。ある画家が描いた肖像画から抜け出した人物。 三守太陽 わたしの五つ下の弟。わたしと共に、十年前のブラックアウトを経験。現在も行方不明。 前回のあらすじ PSYさんへの「あなたは何

          連載【短編小説】「あなたの色彩は、あなたの優しさ、そのものでした」最終話