東雲一

東雲一(しののめ はじめ)と申します。小説投稿サイトに小説を投稿しています。ジャンルに…

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東雲一(しののめ はじめ)と申します。小説投稿サイトに小説を投稿しています。ジャンルにとらわれず、色んな作品を執筆して、投稿できたらと思っています。苦しい時、辛いとき、心の支えになるような作品を書くことが目標です。よろしくお願いいたします!

最近の記事

「クレアの初恋」第3話

 クレアの隣にいるのは、勇者一行の魔法使いマリナ。憧れにも近い人物が隣に立っている状況に、クレアは思考が整理できずにいたが、レベッカが助かる可能性があると聞いてすぐさま彼女のもとに急ぐ。  頭の一つを切断されたケルベロスは怒り狂い、耳をつんざくような強烈な叫び声を上げる。  やばい、やばい、やばい!でも、レベッカを死なせやしない。応急処置をして、少しでも生存率をあげなきゃ。それが私が今唯一できることだから……。  クレアは、恐怖する気持ちを抑えて、レベッカのことを助ける

    • 「クレアの初恋」第2話

      「何だ、街を守る魔法壁の一部が崩れている……」  街の周囲を見回りしていた守衛が、魔法壁の一部が崩壊していることに気づいた。魔法壁とは、街の外部にいる魔物たちが、入って来れないように街の周囲に張り巡らされた結界のことだ。  魔物たちの侵入を防ぐための魔法壁が崩壊している状況は、かなりの一大事だ。魔物たちが街に侵入し、人々を襲う可能性がある。  どうなってるんだ。魔法壁の劣化によるものかもしれんな。  守衛の男は、魔法壁の崩壊した部分に近づき観察した後、すぐに魔物に関す

      • 「クレアの初恋」第1話

        (あらすじ) ある日、凶暴な魔物に襲われたクレアは勇者ラフルに命を救われる。命を救われたことをきっかけに、クレアはラフルに恋心を抱き、自分の気持ちを伝えようとするのだが、勇者である彼に話しかけることができるのは限られた少数の者だけだった。クレアは立派な魔法使いになり、彼に近づくことを考えるが、魔法の才能が全くないことを知り思い悩む。そんな時、親友レベッカの助言で、上級ギルドの受付嬢を目指すことになる。クレアは受付長の厳しいノルマをこなし、信頼を勝ち取っていく。様々な困難を乗

        • 『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第30話

           カナ、カナタ、コナタの3人は瘴気を使い、それぞれ武器を創造する。カナタは剣を、コナタとカナは杖を作り出すと、感情のない表情を浮かべ、3人は一斉にユウに容赦なく襲い掛かる。  コナタが補助魔法を唱え、カナとカナタの動きは数倍俊敏になっている。彼らはユウをあらゆる角度から攻めて追い詰めていく。  流石に3人を相手にするのは、骨が折れる。  なんとか、動きを止められたらいいんだが。  ユウは、3人同時の攻撃を紙一重のところで回避し、戦略をたてようとするが、そこに魔王の憎ら

        「クレアの初恋」第3話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第29話

           魔王から放たれる瘴気が、どんどん勢いを増していき、カナタを守るユウを追い詰めていく。ユウに宿っていたマゴは、長くは使えない。瘴気が威力を増す一方、ユウのマゴは輝きを失っていく。  カナタは、意識を倒れているカナとコナタの方を見つめた。二人ともすでに魔王に、魂を奪われ抜けがらのようになっている。  ただ、カナタは、カナとコナタの身体に目に見えない何かがあることにふと気づく。マナの気配を感じることに長けた彼だからそのことに気づくことができた。 「なんだ……」  カナタは

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第29話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第28話

          「お前は、ユウ。始末したはずだが、まだ生きていたか」  魔王は、塔の上に立つユウの姿を見て、目をギラつかせる。 「俺には、守るべきものがあるんでな。まだくたばる訳には行かないんだよ」  ユウは、腰の剣を右手で引き抜き、その切っ先をさっと魔王の方に向ける。 「守るべきもの。それはいい。お前から、その守るべきものを奪って絶望する姿を眺められる」 「魔王、お前、どんだけ性格悪いんだよ。まあ、いい。俺は、俺のやりたいようにやらせてもらう。要は、勝てばいいんだろう、この戦いに

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第28話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第27話

           再び天は瘴気で真っ黒に染め上がり、村を漆黒に染まっていく。暗闇に包まれた村を一筋の光が弾丸の如く通過する。凄まじい速度で進むそれはある男の方にまで迷いなく直進していた。その男の名はクラネ。魔王の力を手に入れ、世界を変革することを目論む者。 「こんなちっぽけな少年一人に何ができるというのだ。何もできやしない。それを十分に分からせた上であの世に送ってやろう」  クラネは、瘴気で作り出した禍々しい大剣を両手でぎゅっと握りしめ、弾丸の如く迫る対象をギロリと睨みつける。  カナ

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第27話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第26話

          「私の喉元に切っ先を添えるとは。なかなかやる」  クラネはそう言うと、身体をドロドロと液状化させ自らの影に沈んでいく。  逃げられる。  カナタは、持っている剣をシュッと咄嗟に横に振るが、わずかにクラネが影に溶け込むタイミングの方が早かった。  クラネは影に溶け込み、地面の上を移動していき、カナタたちから少し離れた場所で止まる。そこから、影がグチュグチュと盛り上がりクラネが、姿を現す。どうやら、彼は影に溶け込み、瞬時に移動することができるようだ。 「くそ、逃げられた

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第26話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第25話

           イチノ村の人々は、今までに感じたこともない地響きと、離れていても漂う禍々しい気配に建物の窓から、顔を出した。 「なんだ、あれは……この世の終焉を見ているようだ」 「大丈夫だ、我々には、魔物討伐部隊の勇者たちがいる。彼らなら、この異常事態をなんとかしてくれるはずだ」 「その魔物討伐部隊なんだが、すでに全滅しているらしいぞ」 「何だと!?」 「討伐隊員たちは全員、すでに村に侵入してきたドラゴンの群れに襲われたのか魂を抜けたように地面に倒れていたようだ」 「そんな……

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第25話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第24話

           私は人々の笑顔を見るのが好きだった。  誰かの笑顔を見るだけで、自分も嬉しい気分になった。  もっと、誰かのために、何かできないかいつも考えていた時があった。  あの事件が、起こるまでは……。  クラネは、ごく普通の家庭に浮かべた。母親と父親とクラネの三人で、暮らしていた。 「クラネ、勉強熱心ね」  家の中で、一人黙々と机の上で手を動かし勉強している少年クラネに、彼の母親はそう言った。  クラネは、目をキラキラと輝かせながら言った。 「うん、たくさん勉強をし

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第24話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第23話

           コナタは、クラネの話に困惑していた。母親の読んでもらった絵本のタイトルは『小さな勇者』。異世界に行った二人の子供が世界を救う話だった。  だが、コナタは話の結末を覚えていなかった。就寝時に、母親に読んでもらっていたから、物語を聞き終わる前に、いつも寝落ちしてしまっていた。いや、もしかしたらその悲しい結末から自ずと目を背けたかったのかもしれない。  母親が絵本を聞かせてくれた時、妙に絵本の世界に没頭できた。まるで、絵本の中の勇者そのものになれたような感覚にさえなった。

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第23話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第22話

           ここはどこ……。  カナタとコナタが異世界で躍動する中、ある病院のベッドで目を覚ました女性はカナ。カナは、カナタとコナタの母親だ。彼らを魔物から身を守った時、呪いをかけられてしまい眠らされていた。カナに呪いをかけたネツキが、クラネに消滅させられたことで、彼女にかけられた呪いも幸運なことに解けていた。  カナタ、コナタ。あの子たちは大丈夫かしら。嫌な予感がする。  カナは、息子たちのことが瞬時に頭をよぎる。自分が眠りについている間に、カナタとコナタが大変なことが起きてい

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第22話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第21話

           曇り空から顔を出していた月は再び雲に覆い隠され、広場にいる二人を影がそっと包む。  コナタはカナタに切りつけられてできた傷口に視線を向け確認する。右肩のあたりから血は流れているが傷は浅い。幸いにも致命傷は免れたようだ。  カナタは、コナタの問いかけに答えることなく、沈黙を貫いている。コナタが話しかけても、聞く耳持たずの状態だ。まるで魂の抜けてしまったかのようなカナタにコナタは違和感を覚えずにはいられなかった。    変だ。いつものお兄ちゃんじゃない。なんとか正気を戻さ

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第21話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第20話

           遠く離れた場所にいたドラゴンの群れは、コナタのところまで徐々に迫って来ていた。ドラゴンの口から放たれた火球が村の建物を次々と破壊し、激しく燃え上がる。その度に真っ黒な曇天の空は不気味に赤く照らされる。  ハァハァと息を切らしながら、コナタはただ前へ前へとがむしゃらにレンガ造りの建物の間を駆けていた。  コナタ……。  名前を呼ぶカナタの顔がふと脳裏に過り、胸がぎゅっと締め付けられるような気持ちに襲われ歯を強く噛みしめる。  お兄ちゃん。  コナタは地面に躓き力なく

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第20話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第19話

           クラネは仲間入るように勧めてきたが、断れば何をされるか分からない。断るという選択肢がそもそもあるのだろうか。この危険な男が、その選択肢を用意してくれているようにはカナタたちは思えなかった。  カナタたちは、緊張で口内で溢れ出た唾液を思わずゴクリと飲み込む。  二人は選択肢のミス、受け答えの良し悪しで、生死を分ける瀬戸際に立たされている。そう思わせるほどに、男と今のカナタたちの間には、実力の差という分厚い壁が存在していた。  カナタたちは、クラネの言葉にどう返答すべきか

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第19話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第18話

           この日、イチノ村の結界が崩壊した。数十年前にも、一度、結界が崩壊し魔物たちが侵入してきたことがあった。とはいえ、結界がすべて崩壊した訳ではなく、一部結界が崩壊し比較的弱い魔物たちが侵入した。弱い魔物たちの侵入ではあったが、無防備な村人たちに魔物たちが襲いかかり多くの被害が出た。  今回は、その時の規模ではない。イチノ村の結界が完全に崩壊した。弱い魔物だけでなく、勇者でも手に負えないようなとてつもない魔物たちが侵入してくる可能性がある。  そうなれば、村は壊滅的な被害がも

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第18話