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『逆境を生き抜くための教養』(出口治明)で逆境を”明らめた”朝

 あの出口氏が2021年に脳出血で倒れ、半身まひが残っていたとは。しかも、立命館アジア太平洋大学学長にしっかりと復帰なさっているとは。のっけから驚いた。意識が戻って半身まひや言語障害があると知った時、リハビリをしても自分ひとりで歩けるようにはならないと告げられた時、どれほどショックだったろう。と思いきや、氏は全く悲観しなかったという。その背景には氏の「知は力」「状況の変化に対して良い判断を下し、正しい行動をとるためには、まずは数字(データ、エビデンス)とファクトをしっかりと把握し、それに基づいてロジカルに考えることが大切」といった従来からの思想がある。一番やりたいのは学長に復帰して、途中になっている大きなプロジェクトを進めること。そのためには、持てる時間を、見込みの薄い歩くリハビリではなく、言語のリハビリに集中しよう。その判断に1秒。お見事!

 もちろん、私のような常人が自らの逆境に接して、どうするべきかの判断にはもっと時間がかかるだろう。けれど、大事なことは時間がかかってもいいから正しく「明らめる」こと。出口氏は、「あきらめる」は「諦める」という意味のほかに、物事を「明らかにする」という意味もあると教えてくれる。

 病を得たとき、なぜこんな病気になってしまったのか、どの行動がいけなかった、あのストレスが影響したのかと、出口のない問いを繰り返した。逆境において、人は苦しむ。しかし、今自分がどう行動すべきかの判断にたどり着かない問いは、自分を救わない。出口氏の言うように、今どういう状況なのかを数字などの客観性をもって把握し、自分が一番したいこと(私の場合、それは、まず生き延びることだった)のためにどうすべきかを知るため、なるべくエビデンスを伴う数字や事例を集め、それに基づいて判断するしかないのだ。これが、「明らめる」ということか!

 そして、逆境の時間を過ごす間に、それが過ぎ去ったときのために準備を整えておくこと。やはり、「知は力」。状況を明らかにし、ロジカルに考えることができるということが力なんだと実感した。
 以下、染みた言葉。

どんな逆境も「自業自得」なんかではない

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行動が順境を招くか逆境を招くかは、結局のところ、運と偶然に左右される

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