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【週刊消費者情報】         福島の風評被害に思う  其の二

『消費者情報』465号(2015年10月号)特集は「風評被害を吹き飛ばせ!」
 早8年の歳月が流れました――。2015年夏、福島県はまだまだ東日本大震災の爪痕が生々しく、とりわけ東京電力福島第一原発事故のダメージは・・・いまも相当なものですが・・・厳しい様相を呈していました。
 浜通りの国道6号線は復旧事業に伴うトラックや重機などが多数往来し、避難指示区域には延々とアルミゲートが設置されていました。
 原発事故による重苦しいムードは、当然ながら風評被害にも及んでいたと思われます。

「ふくしまの今を語る人」に込められた思い
 風評被害対策の一環としてスタートした「ふくしまの今を語る人」(事業実施者:福島県消費生活センター、共催:消費者庁)は現在も続いています。8年前に発行した『消費者情報』465号の巻頭インタビューは、その中のお一人である渡邊とみ子さんにご協力いただきました。まず、本誌に掲載した渡邊さんの詩を紹介しましょう。
 
 あきらめないことにしたの
            渡邊とみ子
 沢山悔しい思いをしたよね
 沢山、沢山泣いたよ
 でも、生きている
 やっぱり止まっては駄目だよ
 どんなに小さな一歩でも前へ進んだら
 ほらね。実ってくれたんだもの
 植物は、こんな状況の中でも
 頑張って生きているんだもの
 だから私は
 あきらめないことにしたの

 渡邊とみ子さんは福島県の飯舘村で農業と加工食品の製造を営んでいました。しかし、東電の原発事故によって家も仕事も奪われてしまい、避難生活を余儀なくされます。
 ここからは、インタビュー記事(抜粋)を紹介することにします。

 故郷を追われるような経験は繰り返してはいけない
Q―風評対策でもいろいろ取り組まれていますね。
A―首都圏など、いろんなイベントに出向き福島産の安全をPRしたり、福   島県の風評対策事業「ふくしまの今を語る人」では“語り部”として全国で講演をしたりしています。また、福島に視察に来た人たちに食の安全対策についてお話ししています。
 (中略)放射能検査では、自主基準を設け国の基準値よりも厳しくしています。私たちは原発の被害者だけれど、食品の販売者としては“加害者”になる可能性もあるわけですから、徹底した検査をしています。(後略)

Q―語り部として何を一番伝えたいとお考えですか。
A―私が原発事故に見舞われてなお、がんばってこられたのは、飯舘村を発信する特産品づくりという大きな夢があったからです。蒔かぬ種は生えぬ・・・だからあきらめない、ということが一つ。もう一つは、避難生活を強いられている人たちの暮らしぶりや思い、そして震災にどう向き合って生きているのかをしっかり語り継いでいくことです。ふるさとを追われるような、こんな辛い経験は二度と繰り返してはいけません。今も10万人の避難者が帰れないままです。
 私のふるさと飯舘村は、なだらかな山の麓に牛が放牧され、四季が織りなす農村風景がとても美しいところでした。そして、豊かな食文化と地域の人たちの絆が息づいていました。
                             〈つづく〉
                『消費者情報』Web版編集室 原田修身


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